2020年1月号
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地域特集 福島県

屋内工場システムでイチゴを通年供給 福島の新しい農業の形

湯川 敦之(プランツラボラトリー 代表取締役)

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シンプルで省エネ型の屋内工場システム「PUTFARM」を開発・提供するベンチャーが、福島県浜通りで挑戦しているのが、年間を通したイチゴの栽培だ。夏の暑さにも降雪にも耐える施設を設置し、環境にやさしく採算のあう、新型農業を目指す。

2011年3月の東日本大震災で起きた、福島第一原発事故。地震による直接的な被害に加え、風評被害もあり、福島県の農業は大きなダメージを受けた。そこで、周囲と切り離した環境で作物を育てることができる屋内型農場が注目を浴びるようになった。害虫や病気のリスクも抑えられ、無農薬栽培も可能になり、消費者へアピールできるというメリットもある。

プランツラボラトリーは、東京大学大学院農学生命科学研究科の施設園芸の研究者、河鰭実之教授と、省エネ型で安く設置できる屋内農場「PUTFARM」を共同開発した企業。PUTFARMを用いて、福島県でイチゴとキノコ類の栽培に着手している。その背景を聞いた。

PUTFARMの構造設計は農業用ビニールハウスと同じ。耐強風・耐降雪のバリエーションがある

遮熱材を使った「ハウス」

壁に囲まれた「工場」を建築し、内部にLEDライトを設置、農作業を自動化して野菜を育てるタイプの植物工場は、多額の初期投資が必要で、ランニングコストも高い。PUTFARMが目指したのは、なるべく低価格で、普通の農家でも農地に設置できるタイプの施設だ。農業用のパイプ式ハウスを特殊な遮熱材で遮蔽した構造をとる。この遮熱材は、外部の輻射熱を97~98%反射する。外部からの熱を遮断し、内部の温度管理を容易にするとともに、独自開発した湿度管理法で内部環境をコントロールできるようにしている。内部に棚を設置し、培地を使って作物を育てれば植物工場として使える。作物の保存用倉庫や養鶏場などとして使うことも可能だ。

地球温暖化で強烈化している台風や、降雪などにも対応するため、PUTFARMにはバリエーションも持たせている。沖縄県名護市で実証実験をしている建屋は、特殊な形状で風をやり過ごすため、計算上は風速80メートルにも耐えられる。福島県の施設は、耐降雪型。屋根の上に積もった雪が自然に滑り落ちる設計になっており、1日40センチメートルほどの降雪に耐えることを想定している。

2014年に創業したプランツラボラトリーでは、まずはPUTFARMで葉菜類を無農薬栽培する技術開発を実施し、既に実用化。栽培したレタスや水菜などは、ブランド野菜として飲食店へ販売中だ。

一方、福島とのかかわりは、創業間もない時期に始まっていた。同社は2017年10月、「耐候型屋内農場における大型イチゴ生産の自動化」をテーマに、「福島県地域復興実用化開発等促進事業」の補助金を獲得した。湯川氏は、「以前から福島のイチゴ農家と取引があり、仲が良かったことがきっかけ」と振り返る。この助成事業は、福島イノベーション・コースト構想の一環。福島県の東側の15市町村において、同構想の重点分野に関係する実用化開発を助成している。

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