2020年1月号

地域特集 福島県

福島県知事が語る ロボット産業に革命、復興・創生へ挑戦を進化

内堀 雅雄(福島県知事)

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2011年に震災と原子力災害に見舞われ、今年10月には台風による甚大な被害を受けた福島県。「未曽有の複合災害からの復興」や「急激な人口減少への対応」という課題を克服するために、内堀知事は産業振興から交流人口の拡大まで、様々な挑戦を進化させ続けている。

内堀 雅雄(福島県知事)

ロボット産業の振興へ
新たな研究開発拠点を整備

――ロボット関連産業の集積を目指した取組や再生可能エネルギーの推進など、産業振興策についてお聞かせください。

内堀 東日本大震災と原子力災害により甚大な被害を受けた本県産業の復興を図るためには、ロボットや再生可能エネルギーなど、新たな時代をリードする成長産業の育成・集積を進め、雇用を創出し、経済を力強く再生していくことが重要です。

そのため、福島県では、陸・海・空のフィールドロボットを主な対象として、実際の使用環境を再現しながら研究開発や実証試験を行うことができる「福島ロボットテストフィールド」を南相馬市と浪江町に整備しています。

「福島ロボットテストフィールド」では、陸・海・空のフィールドロボットについて、実際の使用環境を再現しながら研究開発や実証試験を行うことができる

世界に類を見ない研究開発拠点として、来年春の全面開所を目指していますが、既に昨年7月の一部開所以降、研究者など約1万人が来訪し、90件以上の実証試験が行われています。地元企業が技術革新の一翼を担い、迅速な部材の供給や試作品の開発など、様々なニーズに応えながらビジネスにつなげていくことができるよう、研究開発への支援や産学官ネットワークの構築、マッチングなど、関連産業の育成・集積に積極的に取り組んでいるところです。

来年8月には、ワールドロボットサミットの一部競技が、この施設を会場に開催される予定ですので、「ロボット産業革命の地ふくしま」を世界に向けて広く発信していきたいと考えています。

また、再生可能エネルギー分野では、研究開発から事業化までを一体的・総合的に支援する「エネルギー・エージェンシーふくしま」を始め、「産総研福島再生可能エネルギー研究所」などの関係機関と連携しながら、世界に通用する「メードイン福島」の新たな技術や製品、ビジネスモデルが次々と生み出される環境づくりを進めています。

さらに、県内企業の海外展開や事業拡大を図るため、今年10月には、再生可能エネルギーの先進地であるドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州とハンブルク州及びスペイン・バスク州を訪問し、各州と再生可能エネルギー分野における連携覚書を締結しました。引き続き、「再生可能エネルギー先駆けの地」の実現に向け、様々な取組を進めていきます。

観光分野の復興は着実に進展

――インバウンド増加に向けた施策など、観光振興の取り組みについて、お聞かせください。

内堀 震災と原発事故から8年半が経過する中、観光客の入り込み数がほぼ震災前の水準まで回復し、震災直後に大きく落ち込んだ外国人宿泊者数も昨年、過去最多となる14万人泊となるなど、観光分野における復興が着実に進んでいます。

しかし、全国的な外国人観光客の増加に比べるとまだまだです。更にこの数字を伸ばしていくことができるよう、「絶景」や「花」、「雪」をテーマに、台湾やタイ、オーストラリアなどにターゲットを絞ったプロモーションを展開しており、その結果、本年1月から7月の外国人延べ宿泊者数は、対前年比の伸び率が全国3位となりました。

また、東京都を起点とし、世界遺産「日光」のある栃木県、花の名所を持つ茨城県、そして福島県を結んだ広域観光周遊ルートを「ダイヤモンドルート」と名付け、連携して誘客に取り組んでいます。例えば、会津は、サムライの精神と文化を体感できるコンテンツが充実しています。会津と日光をつなげることにより、それぞれの地域がより魅力的なものになると考えています。

福島県には、猪苗代湖や屏風岩などの自然資源がある

鶴ヶ城や武家屋敷がある会津は、サムライの精神と文化を体感できるコンテンツが充実している

さらに、「食」による誘客にも取り組んでいます。例えば、欧米を中心にラーメンの人気が高まっていますが、福島県には、全国に名を馳せる「喜多方ラーメン」「白河ラーメン」があります。そのブランド力をいかし、福島を訪れなければ体験できない食の体験コンテンツの開発に、地域と連携して取り組んでいるところです。

「喜多方ラーメン」「白河ラーメン」は全国的な知名度を誇り、食の体験コンテンツの開発も進められている

教育旅行については、福島ならではのコンテンツとして「ホープツーリズム」があります。これは、復興に向けて歩む福島のありのままの姿(光と影)を見ていただき、各分野でがんばっておられる方々との対話を通して、福島で起きたことを「自分の事」として捉え、今後にどういかしていくかを考える「学びの旅」です。今、首都圏の高校を中心に、実施される学校数が増えており、参加者からは、「福島復興の傍観者ではなく、関係者になりたい」といった感想も頂いています。

東京オリパラを契機に
県の現状や魅力を発信

――東京オリンピック・パラリンピックを契機とした振興策について、お聞かせください。

内堀 福島県は、オリンピック聖火リレーの出発地となるとともに、野球・ソフトボール競技が開催されるなど、復興五輪において重要な役割を担っています。また、2020年は、震災と原子力災害から10年目の節目の年でもあり、東京2020大会を通して、これまでの御支援に対する感謝の思い、そして、福島の復興が着実に進んでいる姿と、依然として様々な課題を抱えている姿の両面を発信することが重要だと考えています。

県では、多くの県民の皆さんに関わっていただきながら、風評の払拭、交流人口の拡大による地域活性化など、復興の加速化につなげるため、様々な取組を実施し、福島の現状や魅力を発信できるよう準備を進めているところです。

風評の払拭については、東京2020大会が食材や花、木材等を始めとする県産農林水産物の品質の高さや浪江町で製造された「再生可能エネルギー由来水素」など「メードイン福島」の技術力を国内外に広く発信する絶好の機会になると考えています。

福島県では、県産農産物の安全・安心を確保するため、GAP認証取得日本一を目指す「ふくしま。GAPチャレンジ宣言」を行い、認証取得件数は現在210件を超え、生産者の皆さんだけでなく、高校生による認証取得も進み、GAP食材を提供する農業高校と市町村との連携など、新しい「共働」も生まれています。

交流人口の拡大については、様々な競技の代表合宿を誘致し、トップアスリートと地域の皆さんとの交流や、ホストタウン制度を活用した市町村と参加国との国際交流を支援しています。

最近の例では、楢葉町・広野町・川俣町が、アルゼンチンの復興「ありがとう」ホストタウンに決定しました。楢葉町・広野町にあるJヴィレッジを拠点とした代表選手との交流や、40年以上続く川俣町とアルゼンチン・コスキン市との交流が一層深まることが期待されます。

こうした連携や交流の取組を2020年以降もレガシーとして継承し、震災からの復興につなげていきたいと考えています。

「福島ならでは」の地方創生

――「ふくしま創生総合戦略」が最終年度を迎えている中で、現時点までの人口減少問題への対応の成果や、2020年度からの次期戦略の方向性について、お聞かせください。

内堀 福島県人口ビジョンでは、2040年に総人口160万人の確保を目指しており、本年7月現在の推計では、ビジョンに掲げた人口目標を上回っています。また、ビジョンに基づく戦略に掲げた11の成果目標のうち、「安定的な雇用者数」や「商業・サービス業の総生産額」は目標を上回って推移しています。一方で、「人口の社会増」や「合計特殊出生率」については、目標に達していません。

次期戦略においては、複合災害からの復興・再生、そして、急激な人口減少への対応という難しい課題を克服するため、強い危機意識を持ちながら、構造的な人口問題に果敢に挑戦し、本県が持つ可能性、魅力、強みをいかした、「福島ならでは」の地方創生の取組を積極的に展開していきたいと考えています。

特に、ライフステージに応じた結婚・出産・子育てへの切れ目のない支援や、高齢者の健康長寿を目指す取組などの自然増につながる対策と、新たな成長産業の育成や、魅力・働きがいのある雇用の場づくり、移住に向けた受入側の体制整備等の社会増につながる対策の両面から取り組んでいきます。

また、地方創生を推進する県の姿勢としては、市町村に丁寧に寄り添いながら、県民の皆さんを始め、企業や大学、NPOなどの多様な主体と連携していくことが重要であると考えています。

県内の平田村には、芝桜が一面に咲き誇る人気のスポットがありますが、これに加えて、昨今では、世界中のアジサイを集める取組を進めており、昨年「展示されたアジサイ372品種」がギネス世界記録に認定され、来訪者も増加しています。アジサイは小さな「花びら」が集まり、きれいな一つの花になります。県内の59市町村が、それぞれ創意工夫を凝らした取組を進める中、県としては、それらの取組をしっかりと支援し、地方創生の大きな花が開くよう取り組んでいきます。

平田村には、芝桜が一面に咲き誇る人気のスポットがある

危機を希望に変えるため、
様々な挑戦を進化

――復興・創生に向けた県の将来像や中長期のビジョンについて、お聞かせください。

内堀 現在、令和3年(2021年)4月をスタートとする新たな総合計画の策定を進めています。計画の策定に当たり、3つの思いがあります。

1つ目は「危機意識」です。震災と原発事故から8年半が経過しましたが、今もなお多くの方々が避難生活を続けておられるほか、避難指示が解除された地域における住民の帰還もこれからという状況であり、避難指示が解除されず古里に帰れない方々もたくさんおられます。加えて、こうした未曽有の複合災害からの復興に取り組む中、今年10月に発生した台風19号により、本県は再び甚大な被害を受けました。

こうした重い課題にどのように取り組んでいくのか、その原点となるのが「危機意識」だと思っています。いまだ有事であるとの認識のもと、常に緊張感を持って、これら課題に取り組んでいきたいと思います。

2つ目は「希望」です。本県の復興・創生に向けて、県民一人一人が前を向いてがんばっています。我々の努力は必ず形になる、そうした「希望」を胸において、様々な取組を更に進めていく計画にしたいと考えています。

3つ目は「挑戦」です。県内各地域で、大きなプロジェクトへの「挑戦」や、身の回りの地域課題への「挑戦」など、様々な「挑戦」が続けられています。こうした「挑戦」をより進化させていくことで、福島の未来を切り拓いていけると確信しています。

本県の復興・創生には長い期間を要します。引き続き、国が前面に立ち、福島の復興に最後まで責任を果たすよう求めていくとともに、ポスト復興・創生期間、さらには、その先の本県の将来を見据えながら、新たな総合計画を策定していく必要があります。

また、新たな総合計画が、県民の皆さんにとって身近な計画となるよう、県民参加型で作り上げることとしています。県民の皆さん、そして本県に思いを寄せてくださる全ての皆さんと「目指す将来の姿」を共有し、連携・共働を一層深めながら復興・創生の取組を進めていきたいと考えています。

危機を希望に変えるため、様々な挑戦を進化させながら、「未曽有の複合災害からの復興」と「急激な人口減少への対応」という前例のない課題を克服し、県民一人一人が豊かさや幸せを実感できる持続可能な福島県づくりを進めていきます。

 

内堀 雅雄(うちぼり・まさお)
福島県知事

 

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