観光消費を拡大する団体集客 企業の組織づくりに貢献する旅行へ

地域資源を「チームビルディング・ツーリズム」のメニューに活かす、この新規事業を新たに立ち上げた電通アドギア。プロジェクトを統括する木村氏が自治体やDMOなどが活用できる「団体集客のメソッド」を披露した。

B to Bインバウンド対応で
消費額向上と安定顧客を実現

「チームビルディング・ツーリズム」を実施する企業が増えている。職場から離れた場所で社員が同じ「体験」を共有することで、チームの結束力が高まり、風通しのよい組織になるなどの効果が期待できる。木村氏は「さまざまな文化・言葉・バックボーンを持つ人たちが同じベクトルに向かって仕事をする場面が増え、チームビルディングの必要性が一層高まっています」と話す。

チームビルディング・ツーリズム 地域に人を呼び込むプラン策定のポイント

 

B to Bインバウンドの拡大が地域にもたらすメリットは大きい。「ツアーに掛かる費用は企業が負担するため、ある程度の参加人数が期待できます。一方、社員はツアー代が浮いた分、お土産やオプショナルツアーに自分のお金を使うことが多くなる。つまり、2つのお財布による消費額向上が期待できるのです」。ツアー実施後に効果が得られれば、評価が社内に広がり会社単位でのリピーター獲得も期待できる。地域の資源を活かすことで、特別な観光地でなくても誘致できる汎用性の高さも魅力だ。

次いで、木村氏は「団体集客のメソッド」を解説。ポイントは「地域資源の棚卸」と「提供する体験の開発」にある。地域資源を棚卸しし、学びの視点で体験に再編集する。それを研修の目的に合わせてマップ化すると、地域資源の活かし方が見えてくると述べた。

電通アドギア 未来デザイン室 チーフ・プロモーション・ディレクター 木村 貴光 氏

このメソッドから生まれたのが福岡市の「お寺で和太鼓体験」(3泊4日)だ。メインの和太鼓体験に加え、産品を活かした明太子工場見学や居酒屋ディナーなど多彩なメニューで構成される。試作版を体験した中国企業からは高い評価が得られたという。

最後に、木村氏は「弊社には企画・販売・実施までの一気通貫ネットワークがありますので、ぜひご活用いただきたいと思います」と締め括った。

「コト消費」拡大のカギは
知的好奇心、共感、関係性

トークセッションでは、B to Bインバウンドの可能性と課題について3名の識者が意見を交わした。日本には各地にすぐれた伝統工芸品があるが、訪日外国人には敷居が高く、消費が喚起されにくいという課題がある。これについて口火を切ったのは長谷氏だ。

「事業者からは、博多人形の展示会を見に来られる方は多いのになかなか売れない、との声が上がっています。インバウンドの視点で価格を見直すことで、団体集客の強みを活かせるのではないでしょうか」

消費額を上げるには長期滞在を促す施策も欠かせない。高橋氏は「農家民泊は1泊2日が基本ですが、体験プログラムを追加すると2泊3日に延びることもあり、地域経済への波及効果が期待できます」と述べた。

これを受けて、木村氏は「国や地域によってもニーズが異なるため、ニーズを細かくヒアリングし、豊富なメニューでオーダーメイドのご提案ができるかが課題です」と語った。

インバウンドの訪日目的が「モノからコトへ」と移行する中、地域資源を魅力あるコンテンツに価値変換して届けることが消費額向上や安定顧客の獲得につながる。それでは、「コト消費」を拡大するためのキーファクターとは何なのか。

その解は「知的好奇心と共感」だと高橋氏は示唆する。味噌工場見学をアレンジした際に、70代の会長が製造工程を見せながら味噌づくりのこだわりや企業理念を語ると、参加者がこぞって味噌を買う光景を目の当たりした、と述べた上で「作り手の思いが感じられ、価格に見合った良い商品だと腑に落ちれば、納得して購入されるのではないでしょうか」と言及。木村氏もこれにうなずき「知識と共感に体験が合わさると"自分ごと化"されます。和太鼓などのフィジカルなものに、知的好奇心を煽るようなメニューを組み合わせると新たな刺激になります」と続けた。

一方、長谷氏が出した解は「関係性」だ。「インストラクターとの間にある種の師弟関係が生まれ、その結果、購入に繋がり、リピーターになる方を大勢見てきました」と話し、見学や体験の中で生まれる結びつきの強さを伝えた。

インバウンド対応には語学力が必須。そんな認識を持つ人は多いが、必ずしもそうではないことを長谷氏はこんなエピソードを交えて報告した。

「弊社が運営するレストランの料理長は英語を話せないのですが、寿司握り体験を開くと毎回お客様が爆笑して大賑わいなのです。翌日も、九州一周の最終日にお土産を持って再訪されるということが頻繁に起こっています」

高橋氏も「受入農家の最高齢は85歳のご夫婦。語学力なんて気にせず、みなさん交流を生きがいにされています」と続けると、長谷氏も「インバウンド対応が上手な方は、意外にも高齢の女性が多いのです。秘訣を尋ねたら『小さな子どもを育てるよりも、海外の人と話すほうがずっとコミュニケーションが取れるのよ』と微笑む姿が印象的でした」とコメントした。そこでしか得られない体験を共有するとノンバーバル(非言語)コミュニケーションでも関係が構築できる。電通アドギアのチームビルディング・ツーリズムに関する新サービスにも期待が高まる。

地方創生観光編に登壇したDMO、企業、それぞれの立場からBtoBインバウンドについての議論が繰り広げられた

 

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