環境省が主導、「チーム新・湯治」発足 温泉保養をアップデート

環境省は「『新・湯治推進プラン』実現に向けたロードマップ」を策定し、温泉地を応援するネットワークづくりを展開。温泉を守るためには、施設や文化などのひとの営みと自然とを共存させなければならない。自然や文化、食などの地域資源を楽しみ、心身をリフレッシュできる温泉地をアピールし、活性化をはかる。

青森県の酸ヶ湯温泉は国民保養温泉地の指定第1号

自然や歴史、文化、食など
温泉地の魅力でリフレッシュ

日本には古くから温泉地に長期滞在し、入浴して病気を治す「湯治」がある。また、温泉地には温泉だけでなく、多様な自然や歴史・文化、食など地域資源が豊富で、魅力ある地域が多い。温泉法を所管する環境省は、このような温泉地の魅力を再認識して活性化するため、「新・湯治」を推進している。

「温泉法は温泉の掘削に許可を出すなどの規制法で、環境省が所管しています。しかし、観光立国や地方創生の流れの中、環境省は規制するだけでなく、温泉地の振興にも貢献できるのではないかということで、2015年に温泉地保護利用推進室が設置されました」。

山本麻衣 環境省自然環境局自然環境整備課温泉地保護利用推進室 室長

環境省自然環境局自然環境整備課温泉地保護利用推進室長の山本麻衣氏は、温泉地の活性化に乗り出した経緯をこう説明する。2017年にはこのテーマに関する有識者会議を設置し、議論の結果、提言がなされた。提言では、温泉地の課題を踏まえ、その役割を見直していくことや、新しい温泉地のあり方、環境省や関係機関に求められることなどを「新・湯治推進プラン」としてまとめた。

プランの柱は、①楽しく、元気になるプログラムの提供、②温泉地の環境づくり、③「新・湯治」の効果の把握と普及や全国展開、という3つだ。「特に、昔からある湯治をより広く捉え、温泉の力だけでなく周辺の自然環境や文化も楽しめる場として温泉地を再認識すべきといった内容です」と山本氏は言う。

この提言を受けて環境省は翌年、「『新・湯治推進プラン』実現に向けたロードマップ」(2018~2022年度)を作成した。そこでは、①「チーム新・湯治」の活動を展開、②全国「新・湯治」効果測定調査プロジェクトの実施、③温泉熱の有効活用促進、④国民保養温泉地の活用方法検討、⑤インバウンド対策の推進、が5つの柱となっている。

順を追って説明すると、まず「チーム新・湯治」は温泉地を中心とした自治体や団体、企業などによるネットワークづくりを目指す取り組みだ。ネットワークを通じ、温泉地で様々な連携が生まれ、新しい取り組みにつながることに期待している。

次の全国「新・湯治」効果測定調査プロジェクトは、温泉地での滞在によるリフレッシュ効果などを把握するため、全国で調査を実施、その結果をPRなどに活用していくものだ。昨年度は20の温泉地で利用者に対する調査を行ったところ、温泉の利用によって、「より健康になった」と感じている人が全体の8割に達するなどの結果が得られた。

温泉熱の有効活用は地球温暖化対策や地域経済の安定に重要だが、これまで十分に活用されてこなかった。このため、今後はその普及に向けた対策を推進していく。

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