2019年11月号
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ヘルスケアの新産業

メンタルヘルス対策が生むチャンス 誰もが能力を発揮する職場を

白波瀬 丈一郎(慶應義塾大学 ストレス研究センター 副センター長)

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メンタルヘルス不調を抱えながら働く人が増え、従業員の精神的な健康の維持が、企業課題となった。10年にわたり、休職者の復職支援を続けてきた慶大ストレス研究センターの白波瀬氏は、メンタルケアを経営課題と認識し、企業の組織として取り組むことが重要と考えている。

白波瀬 丈一郎(慶應義塾大学ストレス研究センター副センター長 同医学部精神神経科特任准教授)

働く人のメンタルヘルスへの関心が高まったのは、2000年代に、心の健康に問題を抱えて休職する従業員が増加したことに端を発する。精神障害による労災認定件数は2006年ごろから増え始め、2017年度にはついに500件を超えた。働き方改革が始まり、少子化による人手不足が続く中、従業員のメンタルを良好な状態に保つことは企業にとって大きな経営課題だ。

慶應義塾大学医学部精神神経科では、2009年にKEAP(Keio Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)事業を開始。うつ病で休職した社員の復職支援や、メンタルヘルス対策プログラムを研究してきた。同大学ストレス研究センター副センター長の白波瀬丈一郎氏に、職場のメンタルヘルス対策における課題や、専門家から見た新しいサービスの可能性を聞いた。

福利厚生から経営課題へ

KEAPでは、大手企業と受託研究契約を締結し、うつ病などの精神障害の予防から、すでに発症・休職している人の職場復帰支援までの包括的な対策を提供している。精神科医と臨床心理士がチームを組み、契約企業の従業員をサポートしてきた。

「KEAPにおいて復職支援を10年にわたり提供して感じているのは、メンタルヘルス支援を経営の枠組みで考えることの重要性です」と白波瀬氏は指摘する。

従業員のメンタルヘルスの不調は、企業の生産性を引き下げる。多額の採用費用や教育費用をかけ、様々なノウハウを持つようになった人が実力を100%発揮できないのは企業にとって大損害だ。またメンタルヘルス不調者の周囲の人も、サポートや心理的な配慮で仕事に集中することができなくなる。しかし、メンタルヘルス対策は企業の中では「福利厚生」の枠組みで語られるケースが主流だという。

「メンタルヘルスの問題を、労働生産性の話として捉えられるよう、何らかの形で可視化すること。これが今後、実現すべき課題と言えます」と白波瀬氏は話す。

また、職場のメンタルヘルスの問題を解決するためには、企業側のコミットメントが不可欠であると同氏はいう。医療の専門家に丸投げするのではなく、企業側からも参加してチームで対応することで、よい結果が出せる。

「メンタルヘルスの問題をリスクとしてとらえるのではなく、人材育成の一環と見てほしい。メンタルヘルス不調者のキャリアを維持するだけでなく、その上司や人事担当者にとっても成長のきっかけになります。例えば、1人のメンタルヘルス不調者の職場復帰を成功させられれば、人事のプロフェッショナルとして大きな経験になるでしょう」と白波瀬氏は指摘する。

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