ウェルビーイング向上に勝機 未病対策から生まれる新ビジネス
ひとと社会の状態を良好に保つために始まった「未病」段階からのアプローチ。身体と精神の状態と、社会的なつながりを満たすためには、様々な事業者のコラボが必要だ。「健康経営」の考え方を拡大すれば、社会の健康意識の向上に有効かもしれない。
少子高齢社会を迎えた日本では、ヘルスケア産業の育成は継続的な重要課題だ。そのような状況下、ここ数年で注目されるようになった新分野に、「未病」がある。未病は、健康と病気の間の状態を指す言葉で、多様な人々がターゲットとなる。ヘルスケア・ビジネスナレッジ(東京都中央区)代表取締役社長で、事業構想大学院大学客員教授を務める西根英一氏に、この分野を対象にした新しいビジネス展開の可能性について話を聞いた。
未病対策からウェルビーイングへ
「『未病』は、病気でも健康でもない微妙な状態。治療が必要な『患者』ではないが、全く健康というわけでもない様々な状態の人がここに含まれます」と西根氏は話す。
図1 ヘルスケアビジネスの最大のマーケット「未病産業」
未病が注目されているのは、高齢化による医療費の増大のみが理由ではない。もちろん、国内の医療費は増大の一途をたどっており、2025年には54兆円に達すると見られている。これは重要な問題だが、未病の段階でのケアを充実させることには、単なるコスト削減とは異なる社会的な意義がある。それはウェルビーイングの向上だ。様々な意味で不調を抱えた人を減らすことで、活力のある社会を実現していく。
ウェルビーイング向上のための方策の1つが、ヘルスケア産業による産業振興だ。未病の段階の人をターゲットにしたビジネスは幅が広いため、大企業だけでなく、地域の中堅企業でも担い手になれる。経済産業省の支援事業である「健康寿命延伸産業創出推進事業」では、介護予防や健康経営の高度化、ICTを用いた健康管理システムなど、それぞれの地域で必要とされる様々な事業に補助金を出している。
もう1つが、未病対策のためのヘルスプロモーション。日本においては国民健康づくり運動である「健康日本21」のもとに、疾病予防や、運動の習慣化、禁煙などの啓発の取組が進められてきた。法に準拠し、各自治体は、住民の健康の増進の推進に関する施策についての基本的な計画として、「健康増進計画」を定めている。
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