2019年10月号

地域特集 新潟県

新潟県知事が語る 挑戦する人、企業が生まれる県に

花角 英世(新潟県知事)

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成長産業の創出・育成や、起業・創業の推進に力を注ぐとともに、交流人口の拡大に向けて、県民自身が地域の魅力に気づき、誇りを持って外に伝えていくような意識の浸透を図る。新潟県の活力と賑わいづくりに邁進する花角英世知事に、政策の方向性を聞いた。

花角 英世(新潟県知事)

多様な産業集積と技術を活かす

――産業振興に向けて、どういった取り組みに力を入れていますか。

花角 新潟県は国内の石油生産量の約7割、天然ガス生産量の約8割を産出しており、日本一のエネルギー県です。もともと新潟県では明治の初めから石油生産が始まり、関連産業として石油掘削に使われる機械金属産業も発展しました。そのため、エネルギー産出地である長岡や柏崎には機械金属産業が集積しています。

また、新潟県には、刃物・金物や洋食器の生産が盛んな燕三条もあります。燕三条には江戸時代から続く金属加工業の伝統・蓄積があり、今も地域に根付く多くの中小企業が存在しています。

現在、新潟県が力を入れている産業政策の1つは、そうした既存産業の活性化です。県内にある多様な産業集積と優れた技術を活かして、より付加価値の高い製品を生み出せる企業の育成や、隣接分野となる成長産業への進出を加速させるために、人材育成や産学連携の支援を行っています。

例えば、日本で技術科学大学があるのは長岡と豊橋だけですが、長岡技術科学大学からは高度人材やベンチャーが輩出され、同大学は企業の有力な連携先にもなっています。また、燕三条の地場産業の1社1社は小規模な事業者ですから、県が後押しして企業同士の連携を促進させています。

こうした既存産業の活性化とともに、産業政策のもう1つの柱が成長産業の創出・育成です。航空機、健康医療、水素関連、洋上風力をはじめとした再生可能エネルギーなど、将来性が見込める産業分野への県内企業の参入を支援しているほか、AIやIoT、ビッグデータなどの活用を促進するための施策にも取り組んでいます。

航空機産業に関しては、新潟市も力を入れています。新潟市は航空機産業のクラスター形成を目指して「NIIGATA SKY PROJECT」を推進しており、高度な技術を有する中小企業が一体となって共同受注・共同生産する仕組みづくりを行っています。県としても、人材育成の支援などでそうした取り組みを後押ししています。

起業にチャレンジする人を応援

――起業・創業の推進については、どういった取り組みを行っていますか。

花角 新潟県の開業率は低迷しており、全国的に見ても最下位クラスです。東京商工リサーチの調査によると、開業した企業よりも休廃業・解散した企業のほうが多い都道府県は5つあるのですが、そのうちの1つが新潟県です。だからこそ、こうした状況を変えるためにも起業・創業を推進しなければなりません。

現在、官民一体となって意欲ある人たちが起業にチャレンジしやすい環境づくりに取り組んでおり、民間がスタートアップ拠点を設置することに対して助成を行っています。そのスタートアップ拠点は、起業・創業に何かしらの関心を持つ起業予備軍の人たちが気軽に立ち寄り、刺激やヒントを得られる場となります。

また、すでに起業・創業に挑戦している人にとっては、メンターとなる先輩の話を聞くことができたり、経営や財務、法律などの専門家のサポートを受けられる場となります。多様な支援者が連携するネットワークを構築し、きめ細やかで総合的なサポートを提供しつつ、時には起業希望者に伴走しながら一緒に事業計画をつくります。

また、創業関連情報や成功事例の発信にも力を入れます。例えば、スマホアプリ等を手掛けるフラー社のCEOは長岡工業高等専門学校の出身で、本社は千葉県柏市に置いていますが、新潟にも拠点があり、事業を成長させています。

ほかにも、新潟市のワイナリー「カーブドッチ」はワインを自家醸造するだけでなく、周辺にレストランやスパ、ホテル、ウェディング施設をつくって、今では多くの人が訪れる新しいリゾート事業を実現させており、さらには東京ミッドタウン日比谷にも飲食店をオープンしています。こうした先輩起業家の活躍があることで、後に続く人も出てきやすくなります。

ただし、ゼロから新たな事業を生み出すのは、大変なエネルギーと覚悟が求められます。昨今、後継者難で廃業する中小企業は全国的に増えていますが、意欲ある外部人材が企業を承継して、第2の創業を目指すことも選択肢の1つだと思います。公益財団法人にいがた産業創造機構の「新潟県事業引継ぎ支援センター」では、事業承継計画の策定支援、譲受企業とのマッチング支援を提供しています。

こうした数々の施策により、起業・創業への機運を醸成するとともに、起業予備軍や起業希望者、事業承継者などのチャレンジする人を応援する環境を整備し、活力のある新潟県を実現していきます。

県民が地域の魅力に気づき、
誇りを持って外に伝えていく

――魅力ある観光地づくりや、インバウンドを含めた観光客誘致の推進については、どのように取り組んでいますか。

花角 新潟県には自然や温泉、多様な食文化、日本遺産等の歴史・文化など、数多くの観光資源があります。「うまさぎっしり新潟」というキャッチコピーの下、これまでは県の魅力を満遍なく発信してきました。しかし一方で、あれもこれもと訴求しようとして、尖った魅力を打ち出せていないことが課題でした。

今後は、対象を絞り込んでプロモーションを展開していきます。1つは「雪」。雪がもたらす恵みは、新潟県の重要な地域資源であり、それはインバウンドの誘客にもつながります。

「雪」は重要な観光資源であり、新潟県はスノーリゾートとしての魅力を訴求し、国内外で新たなニーズを掘り起こしていく

特に2022年の冬季オリンピック開催が決まっている中国は、ウインタースポーツの競技人口を3億人に増やすことを国の目標として掲げています。今後数年でウインタースポーツを楽しむ人口は一挙に拡大しますが、中国のスキー場は雪ではなく氷のところも多いため、新潟県をはじめとした日本のスキー場は雪質が良く、中国からのインバウンドが期待できます。

さらに、スキーやスノーボードなどのアクティビティはもちろん、ゲレンデでの雪遊びや雪上イベントなどを用意し、家族連れも楽しめるスノーリゾートとして訴求して、国内外で新たなニーズを掘り起こしていきます。

「雪」のほか、「食」に絞り込んだプロモーションにも力を入れます。食の豊かさも雪の恵みの1つであり、雪解け水が美味しいお米や日本酒、農作物を生み出しています。今年10月~12月に「新潟県・庄内エリア デスティネーションキャンペーン」が開催され、そこでは新潟県と庄内エリアの豊かな食文化を発信します。

「食」の豊かさも新潟県の強み。今年10月~12月の「新潟県・庄内エリア デスティネーションキャンペーン」では、「食」に絞り込んだプロモーションに力を注ぐ

また、今年9月~11月には、新潟県で国内最大の文化の祭典「国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭」が開催されます。新潟県には多様な文化があります。例えば佐渡は、世阿弥など流刑された文人の影響により京の貴族文化がもたらされ、また、金銀山の開発によって鉱山都市として発展するなど、類のない独特の歴史を歩んで数多くの文化財があります。

今年9月~11月の「国民文化祭」は、新潟県の多様な文化に触れる機会となる(写真は佐渡の能舞台)

佐渡だけでなく県内の各エリアにも特色がありますから、多くの人に文化祭に訪れていただいて、新潟県の文化の多様性と、そうした文化を創造してきた先人のマンパワーを感じていただきたいと思います。

私は、県外から人を呼び込むためには、受け入れる側の意識も大切な要素だと考えています。どちらかと言うと、新潟県民は奥ゆかしいというか、謙遜する人が多いのですが、自分たちの地域に誇りを持ってもっと自慢しようという意識改革が必要だと考えています。

そこで、県民自身が自分たちの足元を見つめ直し、地域の魅力に気づき、自信を持って自慢していくという意識を浸透させるために、今年、「新潟の魅力を考える懇談会」(座長:岩佐十良・自遊人代表取締役)を立ち上げました。県民の熱量は外にも伝わります。県民が自分たちの地域の魅力に気づき、誇りを持って外に伝えていくようにならないと、地域の持続的な発展につながらないと考えています。

県外の新潟ファンを増やす

――新潟県の人口減少問題への対応について、お聞かせください。

花角 新潟県の人口は約222.5万人(「新潟県推計人口」2019年7月1日現在)、前年同月比で約2万2000人減少しています。全国的に見ても急速なペースであり、人口減少は深刻で重要な課題です。新潟県は首都圏から近いがゆえに若年層が流出しやすい傾向にありますが、それは逆に言うと、帰って来やすいとも言えます。

人口減少に歯止めをかけるための特効薬はなく、地道な取り組みを続けなければなりません。安心して子どもを生み育てられる環境の整備はもちろん、若年層が県外に出なくても自己実現できる環境をつくることが大切だと考えています。新潟県は今、魅力ある雇用の場の創出や県内大学等の魅力向上のほか、U・Iターン関心者の掘り起こし、受け入れ体制の充実を図っています。

ICTの発展によって場所を問わずに仕事がしやすくなり、新潟県に住みながら時々は東京に出ていくような働き方も可能になりました。県外居住者にとっては、いきなり新潟県に移住するのは難しくても、まずは週末や一定期間だけ新潟県に滞在するようなことも考えられるでしょう。

また、これからの地方創生においては、関係人口づくりも重要です。東京にある県のアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」では、新潟県の旬の情報を届けるためのイベント「新潟プレミアサロン」を定期的に開催しています。

首都圏には新潟県にゆかりを持つ方がたくさんいます。新潟県出身者や親類が新潟県にいる方のほか、新潟県には大企業の支社・支店が数多くありますから、数年間住んだ経験があって愛着を持っている方もいます。「新潟プレミアサロン」は、そのような方々のうち、メディア関係者や文筆業の方、クリエイターの方など、情報発信力のある方々に参加していただいて、そこで得た新潟県の旬の情報をメディアやSNS等を通じ、周囲の人たちに発信してもらうことを期待しています。こうした取り組みを積み重ねて、県外の新潟ファンを増やし、関係人口づくりにもつなげたいと考えています。

2024年度までの新潟県総合計画では、将来像の1つとして「地域経済が元気で活力ある新潟」を掲げています。その実現のためには、挑戦する人や企業が生まれ、集まる環境の整備や多様な雇用の場の確保と働きやすい環境づくり、交流人口の拡大を図らなければなりません。これからも新潟県の活力と賑わいづくりに力を注いでいきます。

 

花角 英世(はなずみ・ひでよ)
新潟県知事

 

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