2019年9月号
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地方創生、第2幕へ

内発的発展を担う人を育てる 事業構想大で学ぶ地方の活性化

重藤 さわ子(事業構想大学院大学 准教授)

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事業構想大学院大学には、自らの地元を持続的に発展させることを目標に入学する学生も多い。2期目を迎えるまち・ひと・しごと創生戦略では、低炭素社会やSDGs目標達成が重要になる。再生可能エネルギーや循環型経済などを軸に、人々と共に地域をつくる人材を育成していく。

事業構想大学院大学で「地域活性と事業構想」という授業を担当して、2年目に入った。本学は、卓越した発想及びその発想を実現する構想力を持ち、かつ事業を継続的に進化させ日本社会の一翼を担う志を持ち実行できる人材の育成を目的としている。求める人材像の一つとして、「地域活性化を志す者」を掲げていることもあり、全体的に院生の地域活性化への関心が高い。

「地域活性と事業構想」の授業を受講する学生も、地方出身者や、そうでなくとも、日常的に業務を通じ、地域との付き合いがある者など、何らかのかたちで地方と縁がある者がほとんどである。したがって、地方への愛着が高い一方で、地方との付き合い方や地域活性化のアプローチについて、いろんな疑問や悩みも抱えているようで、非常に興味深い。

持続可能な地方創生に必要な
「内発的発展」

ある院生からは、「地方でワイナリーがたくさんできて、ワインを生産しているが、なぜあのクオリティーで作り売ることができるのか。ワインを扱うプロの視点ではありえない。」という質問があった。また、別の院生は、「ある地域で食を通じた地域活性化事業に関与しているが、我々のような民間企業が関与しているうちは良いが、そのあと、誰がどう事業を継続していくのか。プロに任せなければできないこともあるが、プロと仕事をしつつ、自分たちでもできる力を磨いていかなければ、本当の意味での地域活性化にならないのではないか。」と悩みを打ち明けてくれた。

かつて主流であったのは、大企業や公共事業の誘致に、地域の運命を預けるような「外来型開発」(宮本, 2010,p54)。これに対し、「地域の企業・労働組合・協同組合・NPO・住民組織などの団体や個人が自発的な学習により計画をたて、自主的な技術開発をもとにして、地域の環境を保全しつつ資源を合理的に利用し、その文化に根ざした経済発展をしながら、地方自治体の手で住民福祉を向上させていくような地域開発」(宮本, 2007, p316)、いわゆる「内発的発展」の重要性が認識されるようになって久しい。地方創生においても、地方公共団体が自主性・主体性を最大限発揮して、「内発的に」取り組むことが求められた。

これまで内発的発展の精神でまちづくりに取り組んできた地域では、「地方創生」の後ろ盾を得て、ますます創意工夫をもってより良いまちづくりに取り組み、その地域の存在感を確実に高めている。

一方で、上述の「外来型開発」頼みほどではないが、いまだに町の重要な活性化やプロモーション企画を都市部の事業者に丸投げしたり、箱モノや交付金ありきの活性化事業が先行する事例は後をたたない。果たしてそれでよいのだろうか、とお節介ながら心配してしまうケースも散見される。私自身、研究フィールドとして通い続けている長野県のある町で、駅前に地方創生推進交付金で箱モノを作る計画が浮上した際に、「箱モノ1つつくって駅前が活性化するとは思えない」と町の人々自身がそのアプローチ自体に異を唱え始める現場を目の当たりにした。

「内発的発展」の議論で誤解をしていただきたくないのが、「外来の資本や技術をまったく拒否するものでない」(宮本、2007、p317)、ということである。地域外の人々や事業者との連携、域外資本の受け入れは、地域づくりに大きな可能性を与えてくれる。ただしそれは、その地域自身が、自分たちの未来を真剣に考え、地域固有の文化や歴史、資源を活かしながら、どのようにしたいか(ありたい姿)、どのようにすべきか(あるべき姿)、をしっかり考え、地域主体で自主的な決定と努力が行える、という前提においてである。

とはいえ、2014年に日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」の衝撃は大きかった。消滅可能性を突き付けられ、もうこの地域には未来はない、と思考停止に陥ってしまった地域も少なくないだろう。そのような地域が、その地域の存続に、どのような意義を見出し、どのように未来を描きえるのか。

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