徳島県神山町に新しい高専を設立 まち全体が学びのキャンパス

多くの企業のサテライトオフィスを誘致し、地方創生の成功例として知られる徳島県の神山町。そんな神山町でまた大きな動きが起ころうとしている。「神山まるごと高専」。そう、山に囲まれたこの地に、高等専門学校を設立する計画が始まっているのだ。

大南 信也 NPO法人グリーンバレー理事

2019年6月に発表された「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」。今回とりわけ重視されているトピックに、地方における若年の人材育成の強化がある。

国に先んじて動き出したのが、徳島県神山町だ。神山町といえば、多くのIT企業が古民家を活用してサテライトオフィスを開設していることで有名だが、その他にもアーティストやデザイナー、映像クリエイター、料理人、クラフトビール醸造家など様々な業種の人たちが次々に移住し、今では多種多様な人が暮らす活気ある町になった。そんな神山町で、ITやAI、デザイン・アートなどを学べる高等専門学校「神山まるごと高専」を2023年に開校する計画が立ち上がっている。計画を進めるのは、2010年から神山町にサテライトオフィスを開設しているSansanの寺田親弘社長を始めとする、神山まるごと高専設立準備委員会のメンバーだ。今回は委員会の代表を務める大南信也氏に話を伺った。

神山まるごと高専の設立準備の打合せ。開学すれば日本で4校目の私立高専となる。建物の新築はせず、既存の町の中学校の建屋をリノベーションする考えだ

神山町全体が
生徒のための学びのキャンパス

そもそも、神山まるごと高専の「まるごと」とはどういう意味なのか。大南氏はこう話す。「神山町には日本全国どころか世界中から集まってきた、たくさんのクリエイターがいます。最先端のITやAIなど、普通の学校では学べない特殊なスキルを持った人たちばかり。つまり、これから社会に出る学生たちにとってこんなに贅沢な学びの場はないわけです。

みんな町中にいる講師として、ともに高専を作りたいと思います。もちろん、校舎は作りますが、校舎と町の間には境界がありません。町のサテライトオフィスにいる現役クリエイターが学校まできて講義をしてくれることもあれば、学生自らオフィスに足を運んで何かを吸収することもできる。だから、『神山まるごと高専』なんです」。目指しているのは、学生に学ぶ姿勢さえあれば町中のどこでも学ぶことができる仕組み。まさに町全体がキャンパスとなる、これまでにない形だ。

未来を切り拓ける
野武士型パイオニアを育成

神山まるごと高専の教育方針を「野武士型パイオニアを育てること」だと大南氏は言う。「現代社会では、ITやAIの発達によって仕事の形が大きく変わってきました。その流れは今後さらに加速し、今までにあった多くの職業はAIに置き換えられ、無くなってしまうはずです。かつては、新卒でどこかの会社に入社し、そのまま定年まで勤め上げる、というレールの敷かれた上を歩くような人生が当たり前でしたが、これからの子どもたちはそうはいかない。

無くなってしまう職業があるぶん、自分たちで新しい仕事を作っていかなければいけません。新たな仕事を生み出し、社会に変化をもたらすことのできる人を『野武士型パイオニア』と私たちは呼んでいるのですが、神山まるごと高専が育てたいのはまさにそのような人材です」。

そういった能力を身につけるためには、常に新しいものを生み出し続けているクリエイターが集う神山町は抜群の環境であると言える。この環境に身を置けば、在学中に起業する学生も多々出てくるかもしれない。

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