地域の移動手段に新たな展開を 企画力で公共交通を持続可能に

公共交通ネットワークの発展は地域経済活性化の要。各種交通事業のオペレーションの改善や、テクノロジーの活用を通じて注目を集めてきた、みちのりHDの代表取締役グループCEO・松本順氏が語る、地域で企業や自治体が取り組むべき対策とは。

松本 順 みちのりHD 代表取締役グループCEO

高齢化が進む一方で、観光客や2拠点居住者など関係人口を増やしたい地方では、地域の公共交通の重要性が再認識されている。同時に、乗客数の減少で路線が廃止になったり、運転者が確保できないなどの深刻な課題もある。

みちのりホールディングス(みちのりHD、東京都千代田区)は、福島交通、関東自動車、湘南モノレールなど東北や関東で6つの公共交通会社をグループとしている。2009年の設立以降、赤字を抱える地方の公共交通会社を次々に買収し、路線再編や合理化を進めてきた。同社代表取締役グループCEOの松本順氏に、将来にわたって事業を継続できる公共交通の在り方を聞いた。

生産性向上で待遇を改善、
人手不足にも対応

「公共交通に関して地方自治体がまず考えるべきことは、ネットワークの持続性の確保です。地域住民だけではなく、観光客など来訪者にとっても利便性の高い交通手段にすることがでできれば、生産性は向上します。生産性が高まれば、公共交通は持続可能になります」。

松本氏は、地域交通サービスにおける課題についてこう指摘する。一方、地方では現在、人手不足が最大の課題となっている。松本氏によれば、その解決に向けては、まずミスマッチの解消が必要となる。

全国的に、事務職の求人への人気は高く、現場で体を動かす仕事には人が集まらない傾向がある。実際に人手が不足しているのは現場での仕事であるため、ミスマッチが生じている。

「人材不足に対し、みちのりHDでは女性の運転手(や整備士)を増やすなど、様々な努力をしていますが、地域のすべての事業者が努力しているわけではないと感じます。また、労働力確保に向けては待遇の向上も必要で、そのためには仕事の生産性を高めることが重要です。そこは、経営者の力量が問われるところです」。

みちのりHDグループ各社では女性社員の積極採用を進めている。茨城交通では専用の採用窓口を開設した

国レベルでも2019年4月には、このようなミスマッチ解消を目指し、大きな制度改革を伴う外国人材の受け入れが始まっている。今後は、海外からの労働者を迎え入れる国・自治体、社会が真の意味で異文化を許容する準備も重要になると、松本氏は指摘する。

注目集める官民連携
相手企業を見極める目が必要

地域の経済力向上に向けて、自治体は地元の大学やNPO、企業、金融機関をはじめとするあらゆる組織と協力し、それぞれの力をうまく引き出すことが求められるようになっている。このような連携の成功のためには、何が求められるのか。

「共に働く事業者を選ぶ際には、将来につながる活動が可能な組織を見極める必要があります。これはそれほど難しいことではありません。現在、各県庁には地方の優秀な人材が集積していますので、目利きは可能です」。

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