まち・ひと・しごと創生会議座長が語る 5年後に輝く未来の地方

2020年度から第2期に突入する、まち・ひと・しごと創生。第1期の成果は、地方の雇用状況の改善という形で現れたが、第2期に向け残された課題も多い。第2期の自治体総合戦略では、SDGsや外国人材の受け入れなど、社会の変化に合わせる必要も。

増田 寛也(野村総合研究所 顧問 東京大学公共政策大学院 客員教授)

2019年6月21日、まち・ひと・しごと創生基本方針2019が閣議決定された。2020年度から始まる第2期の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のベースとなるものだ。まち・ひと・しごと創生会議で座長を務めた、野村総合研究所顧問の増田寛也氏に、2015~2019年までが相当する第1期のこれまでの成果と、第2期への展望を聞いた。

経済の活性化で「しごと」に成果

第1期の政府の総合戦略は、2014年末に閣議決定された。日本の人口の現状、特に地方の人口減にフォーカスし、以後5カ年の目標や施策の基本方向を示したものだ。これに基づき、全国の自治体はそれぞれの総合戦略を作成した。「各自治体で、将来について考えて戦略を作ったことが、第1期のまずは大きな成果」と増田氏はいう。

また、第1期で重視されていた雇用対策は成功し、有効求人倍率は全都道府県で史上初めて1倍を超えた。法人事業税、法人住民税の納付増により、地方税収は2017年度、2018年度と増加を続けている。

このような、地方の雇用情勢や税収の改善には、第1期戦略の貢献がある。若者が就職してもよいと考える、長期的に安定した職場が地方に生まれ、女性や高齢者でも働きやすい環境が整ったことで、就業率がアップした。ただし増田氏は、「若い女性がキャリアを生かせる場はまだ地方には少ない。女性が企業の幹部職に就任できる土壌づくりや、女性の起業を支援する仕組みが求められています」と語った。

一方で、全国的な地方創生の施策から生まれた課題もある。もともと、まち・ひと・しごと創生戦略は、地方の人口減に対する危機感がベースになっている。自治体の住民を増やすことが過度に重視され、短期的な視点かつ狭い範囲で、住民の奪い合いが生じたケースがあった。人口の自然増は現実的には難しいという背景もあり、自治体ごとの子育て支援の積み増しや移住者に対する様々な支援の提供などで、社会増の争奪戦が生じたのだ。

「狭い地域での住民の奪い合いは県単位で見ると意味がなく、持続可能性も低いのです。地域の魅力を地道に作っていく方が大切です」と増田氏は分析する。

さらに、1000億円規模の地方創生交付金が予算として担保されたことで、官がイニシアチブを取った地方創生の取り組みが前面に出てしまった。「企業やNPOなどが率先して様々な活動をして、地域を活性化するのが本来の姿。第2期は官や補助金頼みではなく、地域の中で活動が回るようにしなければなりません」と増田氏は言う。

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