2019年9月号
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健康ビッグデータ活用のイノベーション

短命県の健康増進 超多項目ビッグデータが拓くヘルスケアの未来

村下 公一(弘前大学 教授)

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2005年から集積した健康ビッグデータを活用し、未来型ヘルスケアサービスモデルの構築に挑戦。その取り組みは、『第1回日本オープンイノベーション大賞』で、最高賞の内閣総理大臣賞を受賞。Society5.0時代に弘前大学COIが創造する、健康ビッグデータと最新科学がもたらす“寿命革命”とは。

村下 公一(弘前大学 教授)

◆超多項目健康ビッグデータ

10年後のあるべき社会や暮らしの実現に向け、今取組むべき革新的な課題に対し、産学連携で研究・実用化を目指す、『革新的イノベーション創出プログラムCOI STREAM』。文部科学省・科学技術振興機構(JST)が実施する研究開発支援事業で、弘前大学は、2013年にCOI全国12拠点の1つとして採択された。

近年、ビッグデータやAIが時代のキーワードとなっているが、健康医療分野で現在、世界で使われているデータのほとんどは、病気になった人の医療データ。検診や人間ドッグなど、いわゆる健康な人のデータは、極めて限られた項目(20~30項目)しかないのが実情だ。

「弘前大学COIの取組みがなぜ注目されるのかと言うと、健常人の2000項目という、世界的にも類を見ない超多項目健康ビッグデータを持っているからです」と、弘前大学教授でCOI拠点の副拠点長である村下公一氏。

超高齢者社会を前に、日本では医療費が膨大化し、病気になった人をいかに治すかといった視点のこれまでの医療から、病気にならない人をどれだけ増やすかに重点を置いた予防医療へのシフトが始まっている。2019年3月20日の未来投資会議で政府は、病気予防に積極的に取組む保険者への財政支援を拡充する方針を示している。

「予防を考える時には、病気になっていない人たちの変化を見るデータが重要になります。そうしたデータを弘前大学は15年間取り続けてきたのです」(村下氏)。

強固な産学官民連携体制を構築

急速に高齢化の進む日本。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、75歳以上は5人に1人、認知症の人口は約730万人に及ぶことも予測され、高齢者における健康増進、医療費削減は喫緊の社会課題だ。

弘前大学のある青森県は、高齢化に加え、40歳以上の加齢性疾患、生活習慣病の罹患率・死亡率の高い、短命県と言われている。

弘前大学では、「短命県」の汚名返上を掲げ、2005年から弘前市の岩木地区の住民を対象に大規模住民健康調査『岩木健診』を毎年行なってきた。岩木健診には毎年1000人前後の住民が参加、同地区の小中学生も含め、延べ約2万人以上の住民の健康情報が集積されている。

弘前大学COIでは、このビッグデータを活用し、認知症や生活習慣病など、病気の予兆発見や予防法を開発する研究とビジネス化に取り組む。3つのフェーズから成る最長9年のプロジェクトで、現在はビッグデータを蓄積し、予測データを作り、それを社会に実装するフェーズまで来ている。

「大学は本来、データを集めて論文化し、発表すれば終わってしまう。しかし、それでは世の中は変わりません。我々は、社会全体を巻き込み、研究成果が社会に還元される仕組みまでを構築しています。地域、学校、職域、全てのステークホルダーを巻き込んだ取り組みをしています」(村下氏)。

拠点には、花王、ライオン、エーザイ、サントリー、ベネッセなど有力企業が40社以上参画。九州大学医学部、京都府立医科大学などの大学も含め、全体で約60の団体が関わる。青森県、弘前市とも一体となり、強固な産学官民連携体制を構築している。

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