2019年8月号
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デジタル時代の経営者

ユニクロ・柳井会長に見る デジタル変革は経営者の使命

一條 和生(事業構想大学院大学 特別招聘教授)

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企業の全てをデジタル化する決断はトップが下すべきもの。ユニクロでは、様々な場で得られる情報を生かすための変革が進む。物流拠点の最上階に設けたオフィスでは、新しいSPAの文化が生まれようとしている。

柳井 正 ファーストリテイリング 会長兼CEO

デジタル変革は「CEOアジェンダ」

企業のトップ(社長、CEO)の使命とは、会社の抱える重要な経営課題(いわゆるアジェンダ)を明確にして、優先順位の高いものから解決していくことである。解決にあたっては、それにふさわしい人物を選び、リーダーシップの発揮を促す。もちろん、経営課題の中には、企業のトップ自身が解決のリーダーシップを発揮しないといけないものもある。それこそ、いわゆる「CEOアジェンダ」である。それは会社の未来を決する最重要経営課題と言ってもいいだろう。

自社がデジタル時代に競争優位を発揮できるよう、変革(DX= Digital Transformation)をリードすることは、まさに「CEOアジェンダ」なのである。なぜならば、デジタル時代に競争優位を発揮するためには、ビジネスモデル、ビジネスプロセスを新しくするだけではなく、会社の様々な要素を変革しなければいけないからである。新しい人材を採らないといけないし、彼らが大活躍できるように人事制度も変更しないといけない。カルチャーも変えることが必要である。部門間の壁も壊さないといけない。組織構造も改革が必要である。このような多方面に渡る大変革をリードできるのは、CEOしかいない。だからこそ、デジタル変革は「CEOアジェンダ」なのである。

過去にも社会的に大きな関心を集めたIT関係の出来事はあった。ウインドウズ95、インターネット、2000年問題などである。確かにこうしたトピックは社会を賑わしたし、企業も重要問題として取り組んだ。しかし、その先頭に立っていたのは社内のIT担当役員だった。社長がこれらのIT問題で陣頭指揮を取ることはなかったと言っても過言ではない。しかし、デジタル変革はIT担当には任せられない。これに成功しなければ自社に未来はない、という決死の覚悟で社長自身が先取り組まないといけない。

製造小売業から情報製造小売業へ

ユニクロブランドで知られるファーストリテイリングの柳井正会長兼CEOは、デジタル・トランスフォーメーションの推進をまさに自らの「CEOアジェンダ」と定め、その実践をリードしている。目指すのは、ユニクロを「製造小売業」から「情報製造小売業」(Digital Consumer Retail Comapnuy)に大変革することだ。

製造小売業とは、衣服をデザイン、製造すると同時に自社店舗で販売するいわゆるSPAと言われる業態で、従来の卸業態に代わって、今や世界のファッション業界の主流だ。ZARAのブランドをもつ世界ナンバーワン企業がスペインのINDITEX、世界ナンバー2がスウェーデンのH&M、そして世界ナンバー3が日本のファーストリテイリングだ。しかし彼らとしてもその地位に安泰としてはいられない。ファッションの世界でもアマゾンの破壊力は強く、アメリカのSPAの代表であるGAPが多数の店舗閉鎖を行わざるを得なかったのも、アマゾンの攻勢にあったからだった。

ユニクロが目指す情報製造小売業とは、情報を商品化するデジタル時代の新しい業態である。新業態で具体的に実現しようとしているのは、「作ったものを売るのではなく、消費者が求めるものを作る」こと。「週単位で行っている企画・生産の流れが1日単位へと進化し、究極的にはリアルタイムになる」という(『日経ビジネス』、2017年3月23日号)。

しかしその実現は容易ではない。なぜならば、個客を起点にユニクロの全事業、全職能が繋がらないと、様々な場(店舗、ネットといった個客接点、デザイン、調達、製造、流通といった様々な機能)で得られる情報を生かした商品化はできないからである。製造小売業時代のユニクロでは、これらの事業、機能の繋がりは部分的だった。

物流拠点がデジタル時代の本社に

コンサルティング会社マッキンゼーの調査によれば、事業部や機能間の厚い壁(いわゆるサイロ)、リスク回避、顧客を多面的な観点から捉えないカルチャーが組織に存在すれば、デジタル変革の推進にとって致命的だという(「マッキンゼー・デジタル・サーベイ」、2016年)。今、ユニクロでは、全社員がリアルタイムにダイレクトに繋がり、同時に連動して行く新しい働き方を確立するために、大革命が行われている。2017年1月から、ユニクロの社員が東京ミッドタウンにある東京本社から、お台場にある有明本部にどんどんと移ってきているのである。

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