佐賀県、湯豆腐イベントに1万人動員、ニッチ素材をスターへ演出

地域の素材を旗艦商品に押し上げ、活性化につなげる試みが集客力を上げている。フードフェスタで「ニッチな素材をスターに押し上げた」佐賀県と、同県の地域資源をプロデュースした株式会社タノシナルの連携事例から、そのノウハウを学ぶ。

佐賀県の地方創生プロジェクト「サガプライズ!」は、ロバート秋山のクリエイターズ・ファイルやアニメ銀魂など県内外の人や企業と取組むコラボで話題を集めてきた。タノシナル(東京都)は、テレビ番組スタッフが集結して2012年創業、動画制作からイベントの会場運営まで自治体や企業のPRを行っている。2018年度は「嬉野温泉presentsとろとろ温泉湯どうふガーデン」というプロジェクトで佐賀県と協働している。

今回、フードフェスタの連携事例を紹介するにあたり「ニッチな素材をスターにするポイント」を4つに集約した。

ニッチな素材をスターにする4つのPOINT

知られていないことは最大の武器

伊藤 宏冶 タノシナル コンテンツ事業部マネージャー

タノシナルは「品川やきいもテラス2019」で約6万人を動員したやきいもブームの火付け役。コンテンツ事業部の伊藤氏は「通常フードフェスタは、肉・丼など人気食材を主役に据えますが、僕らは"知られていないことが最大の武器になる"と考えているので、佐賀県の嬉野温泉湯どうふを見つけた時、これは話題になると思いました」。嬉野の温泉水でつくった湯豆腐は、よくある湯豆腐とは全くの別物だ。アルカリ泉がタンパク質を分解するため、豆腐がとろとろに溶け、温泉水も豆乳のように白濁するのだ(写真1)。

写真1 嬉野温泉湯どうふ

しかし、広く知られていなかった。

佐賀県広報広聴課の吉武幸司氏もはじめは、「嬉野温泉湯どうふは日本三大美肌の湯として知られる嬉野温泉の名物なのですが、佐賀県民にとってありふれた存在なので、主役になれるとは思っていませんでした」と当時の戸惑いを振り返った。

吉武 幸司 佐賀県 政策部 広報広聴課サガプライズ! プロジェクトリーダー

あえて地名を前面に出さない

「地名を出すことよりも、まずは話題になることが大事。その上で、地元への興味を誘導すればいいと思います」(伊藤氏)。イベントのロゴを制作する際も、嬉野温泉の地名は小さく配し、「とろとろ温泉湯どうふガーデン」のイベント名を大きく愛らしく描くことで、見る人の興味をひくデザインに(写真2)。「最終的に多くの人が、ハッシュタグなどを添えて"佐賀"や"嬉野(温泉)"といった地名を情報発信してくれれば良いわけで、PR段階ではその母数をできるだけ大きくすることが肝心です。佐賀県さんが意図を理解して了承してくれたことが大きいですね」(伊藤氏)。</p

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写真2 イベント公式ロゴは見る人の興味を第一優先に考えて、地名を敢えて小さくした

スターへの道は先に作っておく

「ニッチな素材をスターにするには、事前の話題づくりの戦略が重要です」(伊藤氏)。今回は参加申込みを前売り制にし、チケット代わりの"湯桶"と手ぬぐいを送り届ける作戦を考えた。開催前からSNSなどで画像情報が拡散される導線を仕込んだのだ。(写真3)

「主催側としても、来場者数の見込みがリアルタイムで掴めて安心でしたし、食材の供給量調整や当日の混雑を緩和する準備もスムーズにできました」(吉武氏)。さらにタノシナルの強みである情報バラエティ番組の制作ノウハウを活かし、「嬉野温泉湯どうふとろとろのひみつ」というPR動画を作成。水道水と温泉水で湯豆腐づくりを比較して、とろとろに溶け出す嬉野温泉湯どうふの不思議さをアピール、SNSでの拡散に成功したのだ。

定番展開を必ず入れる

変則的な戦略は重要だが、安心感を持ってもらうため、定番のアプローチを必ず入れるという。今回も会場では、定番の「食べ比べ」を実施。5種類の嬉野温泉湯どうふに1万人が来場したのだ。「ニッチな素材は地元の人からすると前面に出しづらいと感じることが多いと思いますが、視点を変えることで、注目商材になる可能性を秘めています。私たちも本プロモーションに取り組むなかで、学びや気づきを深めながら、事業を構築していけたと感じています」(伊藤氏)。

フードフェスタ初挑戦にして4日間で1万人を集めた佐賀県。事後の発信から、参加者の高い満足度と不参加者への興味喚起に手応えを感じたという。「前例のないイベントのため、開催へ漕ぎ着けるには苦労も多かったですが、『またやってほしい』など、好意的な反響を多くいただきました。どの地域にも一見ありふれた食材はあると思います。「これは話題になるかも」と気づくために、外部の知見を借りることも大切だと思います」(吉武氏)。

写真3 「嬉野温泉presentsとろとろ温泉湯どうふガーデン」チケット代わりの湯桶で食べる様子

 

お問い合わせ



株式会社タノシナル
コンテンツ事業部
MAIL:info@tanoshinal.com
URL:https://tanoshinal.com
TEL:03-6457-0823

 

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