e-Sportsが関係人口拡大の起爆剤 自治体の「稼ぐ力」強化へ

昨今、多くの自治体から高い注目を集めるe-Sports。さまざまなICTを活用した地域課題解決の経験を持つNTT東日本から地域における今後のe-Sportsの可能性とICT活用の構想を聞いた。

ICTが広げる「攻め」と「守り」

東日本電信電話(以下、NTT東日本)は、東日本エリアに6事業部29支店を配置し、地域の一員として地域の社会課題解決に取り組んでいる。境氏は自治体を含む法人営業に長年携わってきたエキスパートであり、所属するBBXマーケティング部は2年前に新設された部署だ。数々の自治体と触れ合う中で、OCR・RPAやセンシング技術、またそれらの先進技術と一次産業との掛け合わせによる新事業創出など、多岐にわたるニーズに向き合ってきた。地域住民の方々に喜んでいただくサービスとは何かを、自治体と共に模索する日々だ。

「移住やインバウンド対応といった『攻め』と、防災計画や高齢者の見守りといった『守り』は、ICTを原動力として活用できる施策の両輪です。その両輪を回しつつ、当部のミッションである『企業や多様なパートナーを繋ぎ、世の中にないようなワクワクするサービスを提供する』を体現しているのがe-Sportsを通じた地域活性化推進です」 と境氏は語る。

境 麻千子 東日本電信電話 理事、ビジネスイノベーション本部 BBXマーケティング部長(講演当時)

e-Sportsの活用で
関係人口拡大の起爆剤に

近年、海外で大きな盛り上がりを見せているe-Sports。ICTは従来のコンピュータゲームを遠隔地の参加者や観覧者同士で楽しむエンターテイメントへと変え、リアルイベントとして競技大会を楽しむ人は増えている。開催地を整備し誘客を促すことで、e-Sportsは関係人口を拡大する可能性も秘めている。

日本でもニーズの高まりは見られている。今年の茨城国体では競技に採用されることが決まっていることもあり、自治体の皆様の関心は高く、オリンピック、町おこしや若者誘致などでの活用を狙い、特定のe-Sportsエバンジェリストに問い合わせが殺到しているのが現状だ。関心の高い理由は、試合場にいなくても観覧者が楽しめる点と、リアルイベントとしてもeスポーツ大会を楽しむ人が増えている点だ。ゲームの観戦ツアーそのものに価値があるため、地域の物販による物販収益が見込まれるほか、オンラインでは色々な地域を回線で繋いで他拠点のイベントにすることも可能だ。これは大容量データを低遅延で配信する5G回線によって更に発展すると考えられている。

一方で課題もある。「ゲームの使用許諾や資金集めは大変だと言われています。しかし、ノウハウを持つ私どもICT企業などがワンストップでこれらを請け負って代行したり、自治体の予算だけではなく、地場企業や広告代理店などとWin-Winになる仕組みづくりをして資金を集め地域活性化につなげるなど、方法はいろいろあります」 (境氏) 。

NTT東日本グループのe-Sportsへの取り組み

出典:NTT東日本提供資料

 

カスタマージャーニーで
自治体イベントを構想する

例えば自治体の皆様が1000人ほど収容できるアリーナでサッカーのe-Sports大会を実施する場合、運営・観戦・資金繰りを含めたカスタマージャーニーを構想できるのではないかと、境氏は語る。

STEP1:イベント集客

webサイト上で観光情報として、ドローンを使った空撮動画を載せるのが流行している。「この景色・この風景、体感したいな」と思わせる仕組みだ。また現地の窓口にあるインフォメーションセンターでは、大容量VRでリアリティある名所を体感することもできる。

STEP2:会場までのまちづくり

地元のお土産を商店街で買う際も、これからはキャッシュレスの時代だ。既に使われているクレジットカードのほか、導入障壁の低い二次元バーコード決済にも可能性がある。各サービスを個別独立に導入するのでなくマルチペイ方式で不便を防ぎ、個店舗に対応していくのが、必須事項だ。

観光地では、コミュニケーションロボット・通称「Sota君」がお出迎え。成田空港にもサイネージと併設されており、音声認識の精度も、開発当初に比べ、AIの学習効果で高まってきた。自治体のゆるキャラ版にもカスタマイズ可能だ。

商店街で迷ったときには、74言語に対応する多言語音声翻訳端末「ポケトーク」が有用だ。観光のほか学校の教育現場で、PTAの面談や職場での現場監督が携帯して使用することも考えられる。

STEP3:会場到着

大会会場に設置する観光サイネージも、載せるコンテンツの選定が勝負のしどころだ。バーチャルウィンドゥという形で、今の季節にない風景を見せ、リアリティある動画でリピーター誘客につなげることが考えられる。またサイネージの一環で、公共施設などの空き状況を知らせるソリューションが登場しており、設定次第で個人のスマートフォンでも見ることができる。

観戦中はスマートフォンのバッテリー切れが不安だが、会場に可搬式のバッテリーがあれば安心だ。高齢者など、試合会場に来られない人も、分身ロボット「Ori-Hime」の目を通して、会場と一体となってe-Sportsを観戦できる。

ICT活用が秘める
地域活性化への可能性

ここまでは、イベントの成功の秘訣にまつわる「攻め」の観点でカスタマージャーニーを進めてきたが、「守り」の観点も重要だ。観戦中に災害が起こるリスクもある。パケットセンサーは、個人情報を排除して移動の情報のみを集積、高齢者の見守りツールや行動分析、イベントの実施効果や将来予測等に使える。

「施策の『攻め』に使っていたツールが『守り』にも効くことが分かります。このように、自治体の広報活動や地域活性化施策へのICT活用は、地域の可能性を大きく広げてくれます。私たちはこれからも皆様の身近なICTパートナーとしてお役に立てるよう取り組んでいく所存です」(境氏)。

 

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