平井卓也IT・科学技術担当大臣が語る「世界最先端デジタル国家」戦略

約10年間、自民党のIT戦略特命委員長としてIT政策に携わり、今年5月24日に成立した「デジタル手続法」の策定も牽引した平井卓也大臣。「世界最先端デジタル国家」に向けた施策とビジョンについて、平井大臣に話を聞いた。

平井 卓也(IT・科学技術担当大臣)

デジタルの恩恵を全ての国民に

――デジタル手続法の狙いや背景について、お聞かせください。

平井 最近、米国やベルギーを歴訪し、各国の閣僚と話をしましたが、世界最速で高齢化・人口減少が進む日本がその課題をどう乗り越えようとしているのか、日本人が考えている以上に世界は日本に注目しています。日本が超高齢化・人口減少を解決できたら、それは多くの国が参照するモデルとなります。

デジタル手続法には行政手続きの原則オンライン化などが盛り込まれていますが、最大のテーマは、デジタル化の恩恵を最大化して、そのメリットを全ての国民が享受できるようにし、超高齢化・人口減少の課題を解決すること。行政手続きのデジタル化は、そのための手段です。

今の行政サービスは、紙の書類で管理されているため、コストや効率面で弊害が生じています。何度も同じような書類を書かなければならなかったり、その都度、役所を訪ねて申請したりする必要があります。

デジタル手続法により、個々の行政手続きがデジタルで完結し、1度提出した情報は2度提出することが不要となり、民間サービスを含めて複数の手続きのワンストップ化が実現します。例えば、引越しに関わる手続きがネット上で済むようになったり、インターネットバンキングによる手数料の支払いが可能になったり、各種手続きにおける住民票や登記書類の添付が省略されたりします。役所に行く回数が減ることは、高齢者が暮らしやすい社会にもつながります。

また、デジタル手続法によって、年間約7000億円にのぼる官公庁のIT調達が内閣官房に一元化されます。これは画期的なことであり、維持管理コストの削減やクラウドを前提にしたシステムの構築、データ流通の促進などを加速させることができます。デジタル手続法は、今まで誰もやっていなかったことに踏み込んでいるのです。

今、国が率先してデジタル化を推進していますが、社会実装に向けて地方自治体や民間事業者の取り組みも促していきます。

――デジタル・デバイドの是正として、どういった施策を進められますか。

平井 デジタルサービスにアクセスできるか、できないかで格差が開くような社会にしてはいけません。デジタル技術の恩恵を受けられる人だけが勝ち組になるような社会にはしないことが重要です。

デジタル化の恩恵を全ての国民に届けるのは、難しくはないと考えています。例えば高齢者がデジタルサービスを利用する際には、人が介在して、スマホやタブレット等の操作を少し助けるだけでも、だいぶ変わります。そうした役割を担う人たちを社会全体に用意しようというのが、政策の方向性です。

人のつながりを社会の前提にする。これはまさに、令和の時代とも合致します。令和を英語で説明すると、ビューティフル・ハーモニー(美しい調和)。それがこれからの時代、より重要になります。

政府はデジタル・ガバメントの実現に取り組んでいますが、それは、行政のあり方そのものの見直しを意味します。既存の行政サービスをデジタルに置き換えるだけでなく、そもそも、その手続きは必要なのか、その添付書類がなぜ必要なのかなどを見直し、国民の利便性を第一に考えてデジタル時代の新しい行政をつくります。

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