2019年7月号
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事業を構想し実践する「ビジネスデザイン」

町に「必要なこと」を事業に 鯖江TSUGIが描くデザイン経営

新山 直広(TSUGI代表)

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福井県鯖江市で、地域におけるデザイン業の新たなモデルを築き注目を集めるTSUGI。この4月には観光と伝統工芸を結ぶ複合施設『TOURISTORE』をオープンし、活動の幅をさらに広げている。新山直広代表にTSUGIの最新状況と今後のビジョンについて聞いた。

文・矢島進二 日本デザイン振興会


新山 直広 TSUGI代表

新山直広氏は1985年大阪生まれ。京都の大学で建築を学び、卒業と同時に2009年に鯖江に移住。まちづくり会社を経て鯖江市役所で3年間勤務した後、2013年にTSUGIを発足した。

ビジョンは「創造的な産地をつくる」だ。「つくる」だけの時代は終わり、「売る」ところまで自分ごととして考え、デザインを活用し創造的で持続可能な地域づくりに貢献したいと言う。

そのために大事にしていることが2つある。「1つは、外からの視点で地域の原石を見つけ、磨いて伝え価値化していくこと。価値化することで、内外の人たちに気付きを生み出せます。もう1つが『おせっかい』です。いくら僕らデザイン事務所が頑張っても、事業者の熱量が上がらないとうまくいかないので、ある意味余計なことまで手伝っています」

事業領域とフィロソフィー

TSUGIは4つの事業領域を持つ。売上の7割を占めるのが、ブランディングを含めたグラフィックデザインだ。「特にパッケージは、デザインだけでなく、コスト管理や適正なロットまで見ています。最近は店舗や展示会などの空間の全体ディレクションが増えています」

自社ブランドの企画運営にも取り組む。メガネの端材を活用したアクセサリー『Sur』は、現在国内外40店舗まで広がり年商1,000万円に成長した。越前漆器の木地の技術を使ったお弁当箱ブランド『Bento_to』や、漆の可能性を拡張するプロダクト『TOOWN』なども展開。鯖江で学んだ流通の仕組みが、ブランド運営に活かされている。「また、全国の商業施設で福井産品を販売する行商ショップ『SAVA!STORE』を運営しています。その逆で、お客さんに鯖江に来てもらう産業観光イベント『RENEW』を2015年から毎年10月に開催しています」

工房を特別に開放し、ものづくりの現場を見学・体感できる産業観光イベント「RENEW」(写真:荻野勤)

さらに4月から始動したのが『TOURISTORE(ツーリストア)』。TSUGIの事務所の他、漆器工房・店舗・観光案内所・レンタサイクルが入る小さな複合施設だ。「作り手とデザイナーやバイヤーをマッチングさせる機能も持ちたいと思っています。デザインとものづくりが両輪で動く場を持つのは画期的なはずで、地域のデザイン事務所の在り方としての実験でもあります」

産業観光をテーマに福井のものづくりとデザインが体感できる複合施設「TOURISTORE」(写真:長谷川健太)

これら4つの事業領域は、TSUGIのフィロソフィーに基づいている。「これまでフィロソフィーは『支える』『作る』『売る』の3つでしたが、最近『醸す』を加えました。『支える』は、デザインを通じて産地の下支えすること。『作る』は産地の技術で自社ブランドを作り、流通を構築しノウハウをフィードバックすること。『売る』は行商ショップやイベント。最後の『醸す』は産地の熱量を上げることです。最近は自分を説明するときに『インタウンデザイナー』と呼んでいます。その土地に最適化したデザイン事務所のモデルを確立したいですね」

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