IT企業の地方移転の先進地 南紀白浜で新規事業を生み出す
IT資産管理、エンドポイントセキュリティーを提供しているクオリティソフト。本社登記を和歌山県白浜町に移し、IT企業の地方移転の嚆矢として注目を集めた。広い敷地を生かしたドローン事業に新たに着手するとともに、地元発の起業も支援する。
美しい海辺の温泉リゾート地である和歌山県の南紀白浜エリア。家族連れや国内外の観光客だけでなく、最近では、IT企業の進出が増えている。プログラマーやエンジニアなどの、仕事と保養を兼ねた中短期滞在の場所として人気が出つつある地域だ。
クオリティソフトは、企業のIT資産管理や、業務用PCなどのエンドポイント・セキュリティサービスを提供するIT企業。2016年に、登記上の本店所在地を白浜町に移し、注目を集めた。同社代表取締役社長で、本社と東京・麹町の拠点を週の半分ずつ行き来している浦聖治氏に、白浜に本社を移した狙いと効果について話を聞いた。
良い環境が人材を惹きつける
同社が和歌山県に拠点を設けたのは2001年6月。和歌山に企業をつくり地元に貢献するために、ソフト開発子会社を設立した。串本町出身で海を見ながら育ち、米カリフォルニア州ロングビーチでの勤務経験もある浦社長は、「日本では都市部に人が集中しすぎていると感じていました。自然の豊かな地方で働き、暮らしていけるよう、IT企業が率先して雇用を作ろうと考えたのです」と振り返る。浦氏は現在、週の半分は白浜、半分は東京というスケジュールでクオリティソフトを経営する。南紀白浜空港と羽田を結ぶ航空便が、この働き方を可能にしている。
子会社設立当初は、和歌山で働く社員を集められるかどうかを心配していたという。これは杞憂で、社員数は順調に増えていった。そこで社屋を持つことを決め、他企業の研修所を買収して改装したのが現在の本社ビル「イノベーションスプリングス」だ。ビーチと冷泉プール付きの5530坪の敷地に、750坪の建物が建っている。建物の半分がクオリティソフトの本社で約80人の社員が勤務する。残り半分はレストランやレンタルオフィスなどとして開放している。
「オフィスのデザインも、仕事をしやすいものにしようと、2つのテーマを決めて改装しました」と浦社長は話す。「アドレスフリーに向かうフリーアドレス」と、「ネイチャーノマド」だ。
PC端末のエンドポイントセキュリティーのクラウドサービスを提供する同社にとって、どんな場所でもセキュアに仕事ができることを示すことは重要だ。そこで、白浜の本社では、社員が敷地内のどこでも仕事ができるよう環境を整えた。社屋の中はもちろん、庭の芝生や屋外スペースでもPCを持ち出して作業ができるようになっている。場所にとらわれずに仕事ができる環境整備は、災害時の事業継続上もプラスだった。2018年9月に台風21号が近畿地方を直撃した時も、社員は在宅勤務で業務を行い、オンライン会議も行っていたという。
また、この職場環境はメディアでも取り上げられ、2017年度には「今後のオフィス環境の整備の模範」として近畿ニューオフィス奨励賞を受賞した。そして、白浜本社だけでなく、東京や松本の事業所でも、採用を後押しする効果があった。「このオフィスのおかげで、人材の採用がスムーズになりました。期待をはるかに超える効果があったと考えています」と浦氏は言う。
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