新興国で脚光を浴びる「日本型教育」 日直や理科実験、続々輸出

日本の教育が、ASEANや中東などの国々から注目されている。高い基礎学力や生活習慣を育む初等中等教育や、優れた技術者を育てる高等専門学校制度などが、経済成長著しい新興国へと徐々に「輸出」されている。民間企業にとってのチャンスも大きそうだ。

奈良哲 文部科学省大臣官房国際課課長

理系教育や特別活動などに注目

「日本型教育に対する海外からの注目は非常に高まっています」と文部科学省大臣官房国際課の奈良哲課長は述べる。

「エジプトでは、学級会や掃除、日直などの特別活動を中心とした日本型教育を採用した小学校がこれまでに35校開校し、今後200校まで増やす計画があるそうです。サウジアラビアは日本の道徳教育をモデルに、全ての小・中・高校でモラルエジュケーションが導入されました。中学卒業後の5年間で専門的な技術教育を行う高等専門学校(高専)は、モンゴルやタイで導入され、『KOSEN』という名称で知れ渡っています」(奈良氏)

なぜ、日本型教育への関心が高まっているのか。

OECDによる 生徒の学習到達度調査(PISA)では、日本は科学的リテラシーや数学的リテラシーで成績上位国の一つであり、また、教員養成や教育システム面でも「日本の学校・教員は教科の指導だけでない全人的な教育を行うことで、『生きる力』を子供たちにつけさせようとしており、これは世界的に高く評価されている」(2016年度教育改革の総合的推進に関する調査研究報告書)という。

高い基礎学力や規律ある生活習慣を育む初等中等教育や、実践的で高度な技術者を養成する高等専門学校制度など、日本型教育は特色に溢れている。こうした教育システムは、経済成長著しいアジアや中東、アフリカ、中南米の新興国にとって、科学技術力のさらなる向上や知識基盤社会への移行を進める上で、極めて重要な要素である。

例えばエジプトは、2016年に日本と「教育パートナーシップ」を締結し、日本型教育の導入や、日本と協力した教員・指導者の能力向上、技術教育分野における協力などが盛り込まれた。「教育やヘルスケアの分野で2,500人のエジプト人を日本に留学させるプログラムが2019年からスタートしました。特に大学生や教員の教育連携を重視しています」とエジプト大使館のアブデル・アジーズ文化参事官は語る。

官民連携による教育輸出
楽器メーカーや出版系も参画

このようなチャンスを活かすために、文部科学省は2016年度から5カ年計画で、「日本型教育の海外展開推進事業:EDU-Portニッポン」を実施している。この事業では、外務省や経産省、JICA、民間企業、教育機関、自治体などによる官民協働プラットフォームを組織。海外展開に関する情報共有や案件形成を行いつつ、パイロット事業を実施して展開案件を育成している。

文部科学省は2016年度から「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」を実施。成果が出始めている

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