2019年4月号
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5Gのビジネスチャンス

ITビジネス研究の第一人者が説く、5Gが再編する未来社会

國領 二郎(慶應義塾 常任理事、慶應義塾大学 総合政策学部 教授)

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第5世代通信網で実現できることを思い描く前には、その特性を見極める必要がある。通信技術の特性は何か。社会への実装に際しての可能性、また懸念やリスクはないのか。国内外の情報通信業界に精通し、社会連携にも取り組む学識者に話を聞いた。

國領 二郎(慶應義塾 常任理事、慶應義塾大学 総合政策学部 教授)

低遅延通信網で実現
究極のトレーサビリティ

――5Gが生む社会像を描く前に、その通信特性をご指摘いただきました。

第5世代通信網(以下、5G)は4Gまでの従来型通信網に比べ、高速大容量であることのほかに、通信速度の遅れが少なく(低遅延)、多数同時接続が可能であるという特徴を持っています。この安定した「つながり続ける」特徴で実現するのが、モノ・サービスのトレーサビリティ(追跡可能性)です。

トレーサビリティは、1970年代にバーコード技術を基にした共同配送が開発された例(図を参照)にも見られるように、時代ごとのIT技術と軌を一にしながら十数年単位の周期で進歩してきました。近い将来、実現しようとしている「追跡可能」というのは、建物・施設内に限らず移動中も、途切れなく連続的に時間・空間・健康状態などの様々なデータを取得することができる、ということです。

ここで例として挙げた、共同配送のニーズが高まった背景には、多頻度少量配送に対する消費者の期待と、環境問題の深刻化に伴う輸送車両節減の必要性がありました。近年はインターネット通販の発達と大規模な気候変動への懸念もあり、これらのニーズが一層高まっていると言えると思います。

――5Gの実現には、どのような通信インフラが必要なのでしょうか。

従来のインターネットが人口のカバー率で回線を網羅していたのに対し、モノのインターネット(IoT)がどこでもつながり続けるためには、面的(地理的)なカバーが必要になります。

こうして「いつでもどこでもネットワークがつながり続ける」なかで期待される未来社会像は「全てがサービス化していく社会」です。多種多様なビッグデータが取得できる状況の下、5Gと表裏一体をなす技術として人工知能(AI)が力を発揮します。日々蓄積されるビッグデータを解析して得られた知見を、新たな事業に役立てることができます。

――具体的には、どのような事業分野にチャンスがあるとお考えですか。

低遅延で高精細なデータがワイヤレス(モバイル通信)で閲覧できるようになると、建設現場や極地開発の分野にフロンティアが広がります。例えば、従来は人の入り込めなかった場所に、ドローンや建設重機を送り込み、空撮で高精細な映像を送らせたり、精密な画像診断を要する症例の診察に使ったり、一刻を争う救急医療の現場で、病院へ移動中も、通信画像の品質を保って適切な応急処置を施したり、といったことが高いレベルで実現可能になると期待されます。

また、こうした先端分野に限らず、私たちの日常に近いところでもフロンティアはあります。高精細の情報で「現地にいるのと遜色ない、限りなく『その場』に近い体験」つまりAR(仮想現実)が実現するわけです。4Kや8Kに代表されるような、音楽や演劇・スポーツのライブ中継を更に高画質で楽しめるということもありますが、遠隔地をつないだ打合せや会議、企業のリクルート活動や学生の課外活動での現地見学なども、居ながらにして実施できます。

私が審査委員長を務めている群馬イノベーションアワードでも、毎年全国から応募される中に、関連する事例があります。中でも、本学の研究室で高校生部門の優勝チームのビジネスプランの洗練化を支援しているのですが、今年の優勝チームはウエアラブルデバイスで複合現実(Mixed Reality)空間を作って、高校生に多様な職業体験をしてもらうというものでした。山間地の生徒に漁業体験してもらうことも可能だろうと思います。このようなアプリケーションに5Gという先端技術を活用することで、これまでつながる機会のなかった地域同士が結びつき、新たな創発や面白さを生む可能性はあると思います。

図 技術革新によるトレーサビリティ範囲の拡大

國領二郎氏提供資料

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