2019年4月号

5Gのビジネスチャンス

5Gインフラ整備へ 総務省が光ファイバー整備に52.5億円

元山 和久(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課課長補佐)

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高速無線サービスの背骨は、大量の情報を安定的に、素早く送受できる光ファイバー網。観光客のSNS投稿やスマート農業などのため、あらゆる場所で、高速ネット接続の需要が生じている。総務省は新規の大型予算で、光ファイバーの整備を進める計画だ。

元山 和久(総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課ブロードバンド整備推進室課長補佐)

第5世代移動通信システム(5G)などの次世代の無線環境を導入する前提になるのが、光ファイバー網だ。回線速度が速く通信が安定している光ファイバー網は、主要な無線基地局をつなぎ、自動運転や機器の遠隔制御、高精度動画のライブ配信などを実現するインフラとなる。

光ファイバーによるネット接続は、都市部ではすでに当たり前のように提供されている。しかし、世帯数で見た国内の光ファイバー整備率は98.3%と、全国的には未整備地域が残る。また、モノのインターネットであるIoTの用途は拡大している。人が住んでいなくても、ネットにつながるモノがあれば、そこにはネット接続の需要が生じるのだ。

5Gの商業利用開始を控え、最新のICTの恩恵を享受したいと考える地域は多い。それを可能にするために、光ファイバー網のカバー範囲を拡大する支援策が打ち出されている。

図1 都道府県別の光ファイバー整備率

海岸線が複雑、離島を多く抱える、人口密度が低い、などの特徴を持つ地域はカバー率が低い傾向がある

地域社会の課題解決に必須

総務省のICTインフラ地域展開戦略検討会は、2018年8月の最終取りまとめで、地域におけるICTインフラの活用と、その整備方針について発表した。この取りまとめはまた、ICTにより解決が可能な地域課題例を示している。 例えば、労働人口で担い手が不足している農・漁業や土木・建設業の生産性向上や、雇用機会の減少、公共交通機関の衰退や防災・減災、医師の偏在、それに魅力的な観光地づくりなどだ。

総務省が進める5G総合実証実験でも、遠隔医療、建機の遠隔操作による土木作業、場所にとらわれない勤務が可能になるテレワークなど、これらの課題へのソリューションとなる実証試験が進んでいる。

各地でこれらを実施する前提になるのが光ファイバーだ。一方、都道府県別に見ると、光ファイバーの世帯カバー率が90%台前半にとどまっている地域はかなり残っている。石川県や三重県、鳥取県、島根県、山口県、長崎県、宮崎県、鹿児島県などで、これらの県は、離島や半島、山間部、過疎地を多く抱えるという共通の特徴がある。このような地域では、光ファイバー敷設に係るコストが高くなるわりに利用者が少ないため、民間企業の参入が少なく、国や自治体が費用を負担する形で、少しずつ範囲を拡張してきた。

その他の都道府県で光ファイバーの普及率が高いと言っても、それは世帯カバー率であることは見逃せない。IoTの実用化が進み、地域の暮らしでも、実証実験などを通じてその有用性が示され始めている。例えば、無線インターネットを用いた水田の管理や、登山者が遭難した際に、早期の救助を可能にするシステムだ。また、訪日外国人旅行者が僻地の絶景をSNSにアップロードし、それを見てさらに多くの観光客がやってくるという事例が増えている。今後は、人が住んでいない地域でも、無線と光ファイバーを組み合わせたインターネットが必要になるだろう。

新規の補助事業を19年度に開始

総務省は、2019年度に「高度無線環境整備推進事業」を開始することを決め、52.5億円の予算を確保した。これは、離島や山間部など条件が不利な場所で、無線局エントランスまでの光ファイバーを整備する場合に、事業費の一部を補助するというものだ。例えば、自治体が整備する場合の負担割合は、離島の場合が国2に対し自治体が1、その他の条件不利地域では基本的に折半となる。40〜50箇所の光ファイバー整備プロジェクトを支援できる規模の予算だ。

品質の高いインターネット接続を、全国に普及させる活動は、ネットの利用が拡大した21世紀の初めから続いている。データ通信量の増大と技術革新に合わせ、より多くの情報を早くやり取りできるよう、追加投資も実施されてきた。

2019年度に開始する事業では、2018年度までの先行事業よりも予算額を1桁増やした。対象を光ファイバーのみとする代わり、補助を受けられる事業主体に、新しく民間事業者を加えている。過去の、自治体が主導する光ファイバー網の整備では、将来の維持管理費の負担が懸念されていたことから、企業による整備を促進する狙いがある。

この事業は注目を集めている。総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課ブロードバンド整備推進室課長補佐の元山和久氏は、「概算要求で公開した事業案の段階で、既に多くの自治体から問い合わせや要望をいただいています」と説明した。

特に、広大な農地や多くの家畜を抱え、IoTを活用したスマート農業に進出したい地域や、観光客による情報の拡散を目指す観光地などで関心が高いという。同事業による補助を利用したいと希望する、光ファイバー網の未整備地域がある自治体は、整備計画を作成すること、その際「域内を一体的にカバーできるように注意する必要があります」と元山氏は話す。補助金を使って、地域の中でも採算が取れそうな地域のみを整備すれば、極端に条件が不利な地域だけが取り残される。場合によっては自治体が通信事業者と交渉し、より多くの人やモノが恩恵を受けられるようなプランを練る必要が出てくるかもしれない。

総務省としては、光ファイバー整備のニーズのある地域の要望は支援していく考えだ。同事業は5カ年計画で、地域のニーズに基づいて必要な予算を盛り込んでいく。また、同事業は地方財政措置の対象となることが決まっており、自治体の財政負担にも配慮している。今後、IoTや5Gに関する様々な取組が発展し、さらにプロジェクトを拡大する場合にも、追加投資できる体制を準備していく。

図2 5G・IoTと光ファイバー網

光ファイバー網を各地の要所まで引き、IoT端末などは無線で接続することで、効率よく高度なネット環境を構築

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