2019年2月号

新規事業担当者に求められる広報視点

オウンド・メディアの活用戦略 サイボウズ式コミュニケーション

渡辺 順也(社会情報大学院大学 准教授 /イノベーター・ジャパン 代表取締役社長)

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企業の自社メディア活用を研究する「オウンド・メディア戦略」の講義。サイボウズ式編集長である藤村能光氏をお迎えし、「認知拡大のためのメディア戦略」をテーマに企業ブランドを伝えるための取り組みを紹介した。(2018年11月20日、社会情報大学院大学の講義より)

(左)藤村 能光 サイボウズ コーポレートブランディング部 サイボウズ式編集長(右)渡辺 順也 社会情報大学院大学 准教授 /イノベーター・ジャパン 代表取締役社長

サイボウズが運営するWebメディア「サイボウズ式」は、新しい価値を生み出す働き方を発信し続け、現在では月間15万人を集めるオウンドメディアへと成長している。そのサイボウズ式が今年「サイボウズ式 第2編集部」というコミュニティに取り組み始めた。編集長の藤村氏は「ファンベースという考え方を知り、これこそ今のサイボウズ式に必要なものだと感じ、実践してみることにしたんです」と語る。

サイボウズ式の立ち上げは2012年。当時、従来のパッケージ売りグループウェア市場は頭打ちで、会社としても新たな市場を創出するためのマーケティング課題を抱えていた。そんな中、「製品を売る」のではなく「サイボウズを知ってもらう」ための自社メディアとして、サイボウズ式は誕生した。ツールのことを説明する製品ブログはそれまでにもあったが、サイボウズ式は「新しい価値を生み出すチームのための価値観や働き方を伝えるメディア」という形を目指した。「製品のことを語らなくても、会社のビジョンを反映させれば、絶対オンリーワンのメディアができるはずなんです。別の部署から、こんな記事を書いて欲しい、と頼まれることもありますが、僕や編集部のみんなが納得できる内容でなければ採用はしません。読者の視点で面白いと思えるかどうかで判断するようにしています。よいところだけではなく、今の課題も伝えますし、競合他社を取材することもあります」

ブランド発信を軸に立ち上げたサイボウズ式だったが、売り上げにも貢献する数字を残した。運営を開始した年に実施した自社クラウドサービス購入時の認知経路調査で、イベントや新聞広告、ブログやSNSでの発信よりも、サイボウズ式の方が割合が多かったのだ。「知っていたけど使っていない、というお客様にサイボウズを思い出してもらうきっかけになったのだと考えています。売り上げに寄与するという結果が出たこともあり、より自由にメディアを運営できるようになりました」

定量よりも定性を見る

社内でオウンドメディアがどういった指標で評価されているのかを尋ねてみると、驚くことにきちんとしたKPI設計をしていないという答えが返ってきた。KPIというのはクセ者なんですよ、と藤村氏は語る。「数値化すると管理はしやすいですが、数値だけでは見えない価値というものがあると思うんです。重視しているのは、PVよりも、どのくらいサイボウズのブランドが伝わったか、ということです。SNSやブログでどんなコメントがあったか、読者の声は積極的に社内に共有していますね。そこからさらに社内でコミュニケーションが生まれます」

さらに、数値化こそしていないが、採用にはいい影響が出ているのでは、と藤村氏は感じている。実際に中途採用者の多くが、サイボウズ式で発信しているビジョンなどに共感したことがきっかけで応募につながっているという。

また、ブランド発信の新たな試みとして、サイボウズの株主総会もシンポジウムという形にデザインし直した。2018年は堀江貴文氏を迎え、パネルディスカッションという形で新しい働き方について発信した。「よくある株主総会の風景ってあるじゃないですか。でも、株主もサイボウズのチームの一員として考えると、株主総会はチームで新しいカイシャを考えるための一つのメディアなんです」

株主総会を自社のブランドを伝えるメディアとして利用する、新しい広報の形と言えるだろう。

伝えるだけではなく共に創り出す

「サイボウズのブランドを伝える、という役割はある程度形になってきたと感じています。次のステップとして、読者との関係性を構築しようと思いました。読者のみなさんともチームとして、新しい働き方を一緒に創り出していく、ということに取り組んでみたいと思ったんです」

定期的にイベントを開催し、サイボウズ式が発信している情報に深く共感して理解してくれている読者と、実際に顔を合わせて話しながら少しずつメンバーを増やしていった。そうして形成されたコミュニティ「サイボウズ式第2編集部」が、今年になって少しずつ動き出した。「コミュニティからいろんな企画が出てきて、記事を企画したりイベントをやったりラジオをはじめたり、実際にコンテンツが生まれてきたんです。これはすごいぞ、と。僕らが発信した価値観に共感してくれた人たちが、同じ価値観で自発的にさらに広げていってくれるんです」

自分がいなくてもこのコミュニティがまわりだす仕組みをつくるところまでが仕事だと思っています、と藤村氏は語った。

全方位に響く活動を目指す

出典:サイボウズ

 

本講義では、オウンドメディアをWebサイトだけでなく空間やコミュニティなど広義に捉え、これからの社会に必要な組織コミュニケーションを研究している。研究の過程で実務家をゲスト講師として招き、リアルで実践的な情報をインプットする機会を積極的に設けている。

 

藤村 能光(ふじむら・よしみつ)
サイボウズ コーポレートブランディング部 サイボウズ式編集長

 

渡辺 順也(わたなべ・じゅんや)
社会情報大学院大学 准教授 /イノベーター・ジャパン 代表取締役社長

 

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