コンパクトシティは地方創生と矛盾? 「一極集中」が向かう先
「コンパクトシティ」の前提には、一定の地域に人口が集中したほうが、行政サービスを効率的に提供できるという「集積の利益」の概念がある。この観点で考えると、コンパクトシティの究極の形は「東京都一極集中」であり、地方創生との矛盾が生じることになる。
地方圏で注目を集める
コンパクトシティ
地方圏の自治体の一つの政策志向に「コンパクトシティ」がある。国土交通省がとりまとめた国土整備計画『国土のグランドデザン2050~対流促進型国土の形成~』(2014年)にコンパクトシティの言及がある。例えば、同計画に「人口減少・高齢化が進む中、特に地方都市においては、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保し、高齢者が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携して、コンパクトなまちづくりを進めることが重要です」と述べている。
自治体は国に先駆けてコンパクトシティに取り組んできた。先進事例は青森市や富山市などが挙げられる。また近年では、夕張市(北海道)が注目を集めている。夕張市は地域再生計画の中でコンパクトシティを位置付け、同市の構造を小型化することに意図を置いている。
さらに、コンパクトシティを行政計画に位置付ける事例も登場している。例えば、美唄市(北海道)の「美唄市コンパクトシティ構想」や大村市(長崎県)「大村市コンパクトシティ構想」などがある。コンパクトシティは爆発的に自治体に広がっていくというわけではない。しかし地方圏の自治体を中心に少しずつ浸透しつつある。
議会質問におけるコンパクトシティ
議会において「コンパクトシティ」が取り上げられた動向を確認する。図表1は、都道府県議会別に見た過去に「コンパクトシティ」が取り上げられた回数である。山口県、富山県、石川県など地方圏に位置する自治体が多くなっている。多くの議会答弁は、コンパクトシティに取り組む背景に「人口減少」を挙げることが多い。
図表1 都道府県における「コンパクトシティ」の質問回数
図表2は各都道府県議会における「コンパクトシティ」の質問回数の推移である。2003年に石川県議会で「都市計画においてはコンパクトシティといった考え方も出ていますので、それを実践していく必要があるのではないか」という質問が初めて登場している。同年に福井県でも同じ趣旨の質問がある。人口減少対策に絡めてコンパクトシティを取り上げ質問している。
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