本田技研工業 走行実績データで被災地を支援、渋滞や事故を防ぐ
Hondaの通信型ナビシステムから収集した走行実績。被害が広域にわたる大災害の被災地支援に使われるだけでなく、交通事故や渋滞の予防などにも活用の幅を広げていく。
2018年7月5日から断続的に降り続けた大雨は、西日本で甚大な被害をもたらした。土砂災害で主要な交通網が寸断され、食料や生活必需品の物流がストップ。西日本高速道路管内では、最も通行止めが多かった8日早朝には、65%が使用不能になっていた。
Hondaは、自社の自動車に搭載している通信型ナビ「internavi(インターナビ)」で収集した自動車の走行データを個人が特定できないよう統計的に集計し、7月6日からYahoo!JapanやITS Japan等に提供した。スマホやPCがあれば、Hondaの自動車が3時間以内に通行した道路や、渋滞情報などを地図上で確認できる。これらの情報は、被災地に支援の手や物資を届ける際に役立っている。
Hondaはこれまでも、大規模な広域災害が発生すると、復興支援の一環として、自動車の走行データの提供を行ってきた。2007年新潟県中越沖地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震で、インターナビを使っている自動車の通行実績情報は、通行可能な道路を把握する上で役立った。収集したデータのより広い活用を目指して、「Honda Drive Data Service」を2017年12月に開始している。
走行データを防災・減災に生かす
自動車の走行データが防災や減災でどのように役立てるか。既に10年以上の実績があるのが、「人災」といえる交通事故や渋滞の防止だ。
インターナビの走行データからは、急ブレーキをかけた場所と時刻、速度等の情報を高い精度で得られる。急ブレーキには何らかの原因があり、それは将来の大事故につながるものかもしれない。そこで原因を推定し、運転者がスピードを出しすぎる傾向がある場所では路面に注意喚起のマーキングをする、視界を妨げる植栽は撤去する、などの対策を取り、道路の安全性を向上させる。
また、渋滞多発地帯では、交差点の有無や走行の方向(右左折など)のデータから、渋滞の原因がある程度パターン化できる。渋滞が多発している地点を定量的に評価することで、真に対策が必要な地点に、限られた資源を投入できるという効果もある。
このような、交通事故防止と渋滞緩和策の立案、効果測定では、Hondaはすでに100件以上の利用経験を積んでいる。さらなる用途を開拓するためには、今後は他の企業や自治体と協力していくことが必要と同社では考えている。「Hondaは自動車の走行データを持っています。それを、地図など他社のデータと組み合わせる、防災・減災の専門家と協力する、などでより広く活用していきたい。オープンな連携を望んでいます」と、同社ビジネス開発統括部ビジネス開発戦略部戦略課主任の福森穣氏は語った。
例えば、台風やゲリラ豪雨など一過性の局地的災害で、道路が冠水し、通行不能になれば、地域住民にとっては大問題だ。そこで、専門家やパートナー企業と連携して自治体にHondaのデータに基づく対策を提供したり、避難のデザインを支援したり、という取組が可能になるかもしれない。
提供主体:特定非営利活動法人 ITS Japan、協力会社:本田技研工業(株)、パイオニア(株)、トヨタ自動車(株)、日産自動車(株)、富士通(株)、いすゞ自動車(株)、ボルボグループ〔UDトラックス(株)〕
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