自治体プロモーションの知を集約 「住民のため」を考える

理念に基づく自治体マーケティングや、効果的な広報を考えるイベントを開催。自治体職員や研究者、そして自治体との連携実績を持つ企業が一堂に会した。自治体が、マーケティング・広報活動を通じて社会に貢献するにはどうすべきか、共に議論した。

フォーラム会場の宣伝会議セミナールーム(東京都渋谷区)に集結した参加者は、約7割が自治体関係者

宣伝会議と事業構想大学院大学、社会情報大学院大学は、2018年5月22~23日に、自治体マーケティング広報フォーラム2018を開催した。同フォーラムは、「シティプロモーションの知の集約の場」として、自治体がマーケティングや広報を実施する際に参考になる、他自治体の戦略・先行事例や企業のサービスなどを紹介するもの。2日間で、自治体や企業などから、のべ1500人を超える参加者を集めた。

自治体のPR担当者が集結

シティプロモーション活動は、「地域の理想の姿」を実現させるための活動だ。しかし、シティプロモーションの現状は、地域の課題や理想の姿を明確にしないまま、手法や目先の評価指標(KPI)に労力や予算を投じているケースが多い。その結果生まれるのは、面白いだけ・目立つだけのプロモーションを個別に実施してしまい、本来目指すべき理想の姿や課題解決とかけ離れてしまう、という事態だ。

事業構想大学院大学副学長の吉國浩二氏は、フォーラム開会のあいさつで「マーケティング・広報は民間企業だけのものではありません。地域に住んでいる人が本当に必要としているものを掘り起こして、きちんとそれぞれの人の手元に届けることが自治体に求められています」と話した。自治体が地域経営の総合的な戦略を作り、その中にマーケティングやプロモーションを位置付けて実行していくことが今、求められている。

では、どうすれば、現在の状況・課題を整理し、理想の地域を実現できるのか。今回のフォーラムは、その戦略と戦術を考えるための知識を集約した学びの場として企画された。2日間にわたる同イベントには、自治体で先進的なマーケティング、広報活動を展開している担当者や、シティプロモーションの研究者、関連サービス提供企業が登壇し、様々な角度から、地域での取り組みについて紹介した。

少子高齢化が進む中で、若い世代を惹きつけるまちづくりを進めている奈良県生駒市の小紫雅史市長は、「自治体3.0のまちづくり」のタイトルで講演。市民をお客様として扱い、行政主導で物事を進める「自治体2.0」に対し、市民と共に汗をかき、事業を協創するのが「自治体3.0」だ。地域に関わる人の方が市民満足度は高く、定住希望率も高くなる。皆で楽しみ、皆で課題を解決するという取り組みだが、その実現には、地域愛と行動力から成る「市民力」が不可欠。市長が呼び掛けて、市民と事業者・行政が協力してまちづくりを実施し、地域の活力や魅力を向上させようとしている。

流山市、豊岡市、佐賀県、佐賀市、春日市からは、広報やマーケティングの現場を担当する職員が登壇し、それぞれの地域の取組を明かした。東京のベッドタウンとして発展している流山市は、住宅都市の魅力を発見し、シティプロモーションに生かす取り組みを紹介。福岡都市圏のベッドタウンである春日市は、市民と街のブランディングに取り組んだ事例を取り上げた。豊岡市は、インバウンド向けの広報と受け入れ態勢整備などを紹介した。さらに、佐賀県と佐賀市は、多くのメディアで報道されるなどの結果を出してきた「佐賀」のプロモーションについて、県と市の担当職員が一緒に登壇し、座談会の形で話し合った。

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