ヴィンテージ日本酒は1本60万円 ブランディングで過疎化と戦う

古民家再生から地域産品の開発へと拡大し、今度はワインのように長期熟成できる純米大吟醸の"ヴィンテージ日本酒"で世界を狙う。ベンチャー起業家の郷土愛からスタートした夢の軌跡を追う。

山口県で生まれた"ヴィンテージ日本酒"「夢雀」は海外富裕層から高い評価を受けている

やや腰の張った東洋的な立ち姿。濃紺に透きとおるボトルには、シンプルな和紙をのせた静謐なデザインが印象的だ。岩国・錦帯橋の古材をつかったプレートには、限定1000本のシリアルナンバーが刻まれている。海外富裕層に好評の"ヴィンテージ日本酒"「2016夢雀(むじゃく)」である。

ワインのように原料(米)の収穫年を明示し、1年1年寝かせるごとに熟成が進み、極みの味が堪能できる。ドバイのアルマーニホテルでは1本60万円、香港のマンダリンオリエンタルホテル香港は20万円の値をつけるなど、世界最高峰の日本酒として取引されている。

松浦奈津子 ARCHIS代表取締役社長

「夢雀」を世に送り出したのは、山口県のベンチャー企業「ARCHIS(以下、アーキス)」だ。代表取締役社長は、県内・錦町出身の松浦奈津子氏。元商社マンの副社長・原亜紀夫氏とともに二人三脚で、高級日本酒をゼロから作り上げた。

「過疎が進む農村地域の活性化をなんとかしなければと立ち上がったのが始まりです。地元農家のおじいちゃん、おばあちゃんが丹精込めた美味しいお米をもっと内外の人に知って欲しい。私の母校や故郷を絶対に失いたくない。小さな町を元気にしたいという強い気持ちから始めた事業です」と松浦氏。

松浦氏が生まれた岩国市錦町は山口県で最も標高が高い地域にあり、一級河川の錦川とその支流・宇佐川が町中を流れ、川沿いに人口3千人ほどの小さな町が開けている。松浦氏の実家では「米や野菜などを家でつくる」生活。手を入れるとハッとするほど冷たい緑の清流と田園風景が広がる美しい町だが、深刻なのは過疎化だ。

「私の母校である宇佐川小学校は全校児童が5人。2年生1人、4年生と5年生が2人ずつです」と松浦氏がいうように町には、第一次産業を営む高齢者らが中心だ。それでも、日本が進化とともに失ってきた原風景が今も残る稀少な地だ。

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