製薬企業から、「いい人」増生企業へ

「"『いい人』であふれかえる世の中を目指す!"このテーマこそが、未来の社会を見据えた私の使命です」と熱く語る大日本住友製薬の馬場博之氏。形骸化していない、心が通った馬場氏のビジョンが閉鎖的な製薬業界にイノベーションを引き起こす。

馬場博之 大日本住友製薬 執行役員 経営企画部長 兼 法務、知的財産、IT&デジタル革新推進担当

「いい人」という言葉の定義は人によって異なるが、馬場氏は「いい人」を「お人好しで代償を求めず、立場の弱い人にも優しい態度と温かい心で接し、何があっても偉そうぶらないあったかい人(people with good/big heart and compassion)」と定義している。がむしゃらではないが、人様のために淡々と行動をする。日本人の中でも、大阪人に多い特有のDNAを持つ人こそが生粋の「いい人」なのだ。

「いい人であふれかえる世の中には、悲惨な事件も発生せず、胃に穴があくような人間関係の諍いさえも笑いにかえてくれます。AI等の技術革新で人間らしさが希求される未来の仕事はおそらく" 善"と"美"の探求だけ。低成長・高齢化で手を携え合う社会が来ても、いい人を増生するビジョンが実現できれば誰もが幸せ、安泰です。製薬メーカーのわれわれが持つ(精神神経領域などの)技術と英知で、いい人増生に貢献したいと考えています」

いい人増生は、
常識の先にはない

「自分自身がワクワクしなければ、他人を驚かせることは絶対にあり得ないでしょう。終わり!とシャッターを降ろしたその先に、優れたアイデアや次なるイノベーションを創出できる余地が眠っています」と馬場氏は持論を語る。

「数年前、当時は弊社ボストンの子会社に勤務していたのですが、出張で日本に戻ったとき、あるテレビ番組を見ていたら、京都の老舗紙器メーカーが、海外各国の色柄の紙を使って、1点1点綺麗に手貼りで箱を製作するというワークショップをやっていました。一緒に来日していた米国人同僚を連れていきたいと思い、問い合わせたら、あいにく参加可能な日はその店が定休日でした。そこで引き下がることもできたのですが、『わざわざそのワークショップに参加しようと来日したのですが...』とダダをこねたら(笑)、親切にも特別に店を開けてくれました。箱作りワークショップに彼らはいたく感銘を受け、自国にこの日本のアートを紹介したいと言い出しました。すると、なんと偶然にも数日前に、ボストンのMITメディアラボからこの紙器メーカーに、日本の暮らしを彩る紙の神秘芸術を広める企画展をしてみないかと誘いがあったそうで、『じゃあついでにうちの会社にも...』と、双方は大いに楽しく盛り上がりました。翌年、本当に日本×ボストンがコラボする盛大な異文化交流が実現しました。これがイノベーションの始まる現場のワクワクするモチベーションだと思います」

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