2017年8月号

ICT×共創のまちづくり

ICTで実現する「共創のまちづくり」 富士通フォーラムレポート

富士通

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持続可能なまちづくりのためには、自治体・企業・市民などの多様な担い手が情報や知恵を持ち寄り、「共創」によって地域の課題解決を目指すことが必要だ。そして、共創を促進するためにはICT基盤の活用が欠かせない。

デジタル技術の進化により、あらゆる人・モノ・情報が繋がりを持てるようになった今、「共創」の重要性が高まっている。ビジネスでは、業界や職種、国境を超えた共創により、新しいサービスやビジネスモデルを生み出せるかどうかが企業の競争力を左右するようになった。まちづくりや公共分野でも、多様化する地域課題を解決するために、自治体、企業、NPOなどによる共創が求められている。

5月18日・19日に富士通の主催で開かれた「富士通フォーラム2017」は、『Human Centric Innovation : Digital Co-creation』をテーマに、新時代の共創の可能性が議論された。初日の公共分野カンファレンスでは、行政・医療・教育の各分野でまちづくりを担うトップランナーが登壇。「ICT」と「共創」をキーワードに、各地域の先進事例が紹介された。これを受けて後半のパネルディスカッションでは、地域の力を合わせた魅力的なまちづくりについて意見交換がなされた。

神奈川県川崎市 福田紀彦市長
共創で「最幸のまち」へ

福田紀彦 川崎市長

まず、共創に取り組む自治体のモデルケースとして、神奈川県川崎市の福田紀彦市長が登壇した。

福田市長は2013年の就任以来、「市民とともに最幸(さいこう)のまち かわさきをつくる」との理念を掲げ、邁進してきた。2016年に策定した川崎市のブランドメッセージは「Colors, Future! いろいろって、未来」。キーワードは「多様性」だ。年代や性別、障がいの有無などの違いを受け入れることで未来を創り出したいとの思いが込められている。

川崎市が2016年に策定したブランドメッセージ

川崎市は、首都圏の中心に位置する立地優位性と交通利便性などから転入超過が続き、直近10年間の人口増加率は政令市トップを誇る。また、生産年齢人口の割合が高く、若い人に選ばれるまちとして、今や150万人を擁する大都市に成長している。

若さと多様性という強みを活かし、魅力あるまちづくりを進めてきた福田市長。首長として常々感じていたのは「行政の思い込みの激しさ」だった。「思い込みを打ち破るためにも、さまざまなソリューションを持つ多様な組織とのコラボレーションが欠かせません」と語り、次に挙げる共創の取り組みを紹介した。

まずは自治体との共創だ。年々増加する子育て世代への支援施策が急務となるなか、「隣りの横浜市も共通の課題を持っているのだから、協力し合えばいい」と考え、横浜市と待機児童対策の協定を締結。保育ニーズの高い市境の地区に、共同で保育園を整備し、お互いの市民が利用できるようにした。このような取り組みの成果もあり、川崎市は2015年に引き続き、2017年も待機児童ゼロを実現。「それぞれの自治体がそれぞれの地域住民のみのためにやるもの」との思い込みを、自治体間の連携によって打ち破ることで成し得た好事例だ。

共創は、近隣地域のみに限ったことではない。福田市長は、大消費地の川崎市が森林王国の宮崎県と協定を締結し、国産木材の利用促進に取り組んでいると報告し、「持っている者と持っていない者がコラボレーションすると、新たなマーケットが作り出せる」と共創のメリットを強調した。共創を成功させるポイントは互いの特徴・強みを活かすことにある。

次いで福田市長は、少ない費用負担で政策効果を上げるには、「自治体が持っていない企業の知恵と工夫を取り入れることが重要」と述べた上で、富士通が開発した「かわさき子育てアプリ」を取り上げた。市内の子育て情報を配信するスマートフォンアプリで、イベントやお出かけスポット、医療機関などの情報がチェックでき、子どもの年齢や地域に応じた情報の絞り込みも可能。川崎市麻生区で行なった実証実験で、利用者の約8割(0歳児の親の9割以上)が継続利用を希望したことから、すぐさま市全域を対象としたアプリを開発した。

「富士通フォーラム2017」の公共分野カンファレンスは、まちづくりと共創をテーマに開催された

福田市長は「行政の情報をオープンデータ化し、位置情報と組み合わせることで、子育てや防災に関する必要な情報を効率的かつタイムリーに提供できるようになりました」と説明。そのほかに、鉄道会社との折半負担による新駅の設置、健康機器メーカーが監修する中学校給食メニューの実施についても紹介した。

最後に、福田市長はブランドメッセージに描かれたロゴマークについて、赤・緑・青の光の三原色を表していると説明。「三原色が交じり合うことで、どのような色も生み出せるまちの可能性を広げ、新しい価値を見出していきたい」と結んだ。

福岡東医療センター 上野名誉院長
ICT×多職種連携で地域包括ケア

上野道雄 福岡東医療センター名誉院長

人口減少と少子高齢化が進展するわが国において、とりわけ共創の必要性が求められているのが地域医療だ。高齢者が住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らしていくためには、行政・多職種・地域住民が緊密な連携を図り、高齢者を地域で支える「地域包括ケアシステム」の構築が重要となる。

地域包括ケアシステムにいち早く取り組んできたのが、福岡東医療センター名誉院長(福岡県医師会副会長)の上野道雄氏だ。病院完結型から地域継続型医療への転換を成功させるには、「必要なときに必要な病院情報をわかりやすい表現で得られることが大前提」と指摘する。

同センターは2006年に地域医師会、行政と「地域医療を考える会」を発足。医師や看護師のみならず、ケアマネージャーや保健師ら地域関係者の声を10年間にわたり聞き続けるなか、「病院と地域間の情報格差」が見えてきたという。

上野氏は、患者と密に接する機会の多いリハビリテーション職員を例に挙げ、「電子カルテには患者情報が誰にもわかる形式では盛り込まれておらず、退院後地域に戻ってから悪化する患者が散見された」と述べ、職種の垣根を越えた情報共有の必要性を痛感したと話した。

そこで、病院の様々な職種が記録した膨大な情報と、退院後も日常的に受けるリハビリや介護に関する院内の記録を整理・統合し、病院と地域で情報共有するシステムを構築。「医師や看護師が電子カルテ上に患者様の情報を要約したサマリ情報を地域に提供する一方、地域の診療所や訪問看護ステーションからも必要に応じて病院に転院後のケアの情報をフィードバックする、双方向の情報共有に取り組んでいます」と語った。

さまざまな地域関係者の声に耳を傾け、そこから見えてきたニーズを病院から提供する情報に反映する。その繰り返しこそがシステムを熟成させ、まちを発展させる重要なカギといえる。

大阪府池田市 藤本智裕課長
「俯瞰する視点」が共創のカギ

藤本智裕 池田市役所にぎわい戦略室地域活性課課長

複雑性と不確実性が高まる時代に、正解のない主体なき問題にどう対処すべきか。エンジニア出身で、長年、病院運営に携わってきた大阪府池田市役所にぎわい戦略室地域活性課、課長の藤本智裕氏は「医療の問題はもはや医療組織だけでは解決できない。共創の時代にはシステムデザイン思考が求められます」と説く。

システムデザイン思考とは、物事をシステムとして捉え、解決方法を設計する思考であり、平易にいえば「木を見て森も見て、幹枝葉も見ること」だ。藤本氏によると、日本で独自の進化を遂げた"ガラケー"がiPhoneに市場を奪われたのはシステムデザイン思考の欠如によるもので、「専門領域内で合理的な判断を繰り返していると、新しいものは生まれない」と続けた。

さらに藤本氏は、「部分最適ではなく、システムとして地域や社会の問題を全体俯瞰し、共創によってイノベーティブに解決するという視点が大切」と指摘する。その具体事例として、地域包括ケアシステムや災害支援連携システムを取り上げ、「いずれも全貌を俯瞰しながら事前に課題を洗い出すことで、解決策が見出だせるはず。現場にこそシステムデザイン思考により自分事として、ヒト・モノ・コトのつながりを作ってほしい」と会場に訴えた。

九州大学 村上和彰名誉教授
継続的な学びがまちを活性化

村上和彰 九州大学名誉教授

デジタル技術の発展により、教育分野ではいつでも誰もがインターネット上で学びの機会が得られ、自治体ではオープンデータサイトによる共創環境を構築している――。こうした教育を取り巻く現状を踏まえ、九州大学名誉教授の村上和彰氏は「オープンエデュケーションによるまちづくり」と題し、地域住民が主体的に参画するまちづくりの可能性を探った。

村上氏は「まちづくりとはビジネスエコシステムづくりである」と指摘する。つまり、多様なプレーヤーが収益構造を維持し、共存・共栄できる持続的な仕組みを構築することが、まちづくりの本質だ。

「エコシステムづくりは、国や行政に委ねることはできません。地域住民一人ひとりがエコシステムをつくっていくという意識を持つ必要があります」と村上氏は語る。

そして村上氏は、まちづくりのポイントとして次の4つを挙げる。行政任せにせず地域の課題は地域住民が解決しようという「1.マインドセット」。協働してモノやサービスを生産し、シェアする「2.協働型経済」。税金を収益モデルとした従来型から脱却するための「3.社会システムの再構築」。そして、一人ひとりの無限の可能性のための次世代教育環境である「4.オープンエデュケーション」だ。

最後に、村上氏は富士通が開発したデジタルラーニングプラットフォーム「Fisdom」を紹介。大学レベルの講義をパソコンやスマートフォンから無料で受講できるFisdomは、都会と地方の教育格差を解消するサービスと言える。「まちの活性化は、いかに地域住民が継続的に学び続けられるかに掛かっています。人生100歳時代の到来を前に、学びが果たす役割は大きい」とオープンエデュケーションの重要性を説いた。

富士通が開発したデジタルラーニングプラットフォーム「Fisdom」

共創を加速させるICTの力

宮田裕章 慶應義塾大学医学部教授

佐藤秀暢 富士通公共・地域ビジネスグループVP

岡田英人 富士通行政システム事業本部統括部長

後半のパネルディスカッションでは、医療ビッグデータ活用の第一人者、慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏をモデレーターに、4人の講演者と富士通から2名が登壇し、地域包括ケアシステムが話題の中心に上った。

パネルディスカッションでは、共創におけるICTの重要性について活発な議論が行われた

上野氏は、地域包括ケアシステムの実現においては「職種間の壁が課題。医師は院内職員や介護職の仕事内容をあまりに知らなすぎる」と述べ、互いを知ることがその第一歩だと話す。

宮田氏も「上野先生と福岡東医療センターの取り組みでは、情報共有によって相手の立場に立つことで、初めて共創が可能になった。ICTの活用の不可欠さが表れた事例だ」とコメント。福田市長は「多職種連携では、膨大な情報の中から重要なものとそうでないものを取捨選択しなければいけない。それはICTなしでは実現しない」と指摘した。

一方、富士通公共・地域ビジネスグループの佐藤秀暢VPは、地域包括ケアシステムの現状について「電子カルテを利用した情報共有は医療職にほぼ限られており、他職種ではいまだ紙ベースの情報共有が大勢」と報告した上で、「ICT利用者の裾野拡大が急務。富士通の技術でつながりを創出したい」と述べた。

富士通行政システム事業本部の岡田英人統括部長もこれに頷き、「医療分野だけでなく幅広い領域で、富士通は今後もお客さま同士をつなぐハブの役目を果たすとともに、誰もが自由に使えるオープンなプラットフォームを提供し、地域に貢献したい」と話した。

宮田氏は「今後はICTを活用したソリューションがまちの新しい価値を生むはずだ。まさにこの場所から新しい価値が生まれる可能性を感じた」と総括した。

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