九州大学に「起業部」 学生ベンチャー創出へ、第一人者が奔走
2017年7月、九州大学公認の部活動「起業部」が創設される。起業家教育に携わる大学教員を対象とした、経済産業省主催のベンチャーアワードで、「最優秀教員賞」を受賞した熊野正樹准教授は、地方大学で学生ベンチャーの創出に挑む。
今、さまざまな大学で起業家教育が実施されている。そうした中、2015年12月、経済産業省が主催する「University Venture Grand Prix 2015」において、イノベーション教育・起業家教育に関する講義を行う大学・大学院の教員を対象とした部門で、「最優秀教員賞」を受賞したのが、当時、熊本県の崇城大学(旧:熊本工業大学)で「起業部」顧問だった熊野正樹准教授だ。
崇城大学は理工系の大学であり、学生数は1学年800人。熊野准教授が担当するベンチャー起業論は、自由選択科目にもかかわらず半数の400人が受講ける人気講義となり、さらに、その1割が「起業部」に入部した。日本で初めての大学公認の「起業部」である。熊野准教授が設立した部活動であり、そこから巣立った起業家も出ている。
熊野准教授は、2016年6月より九州大学学術研究・産学官連携本部にて学生ベンチャーの創出に力を注いでいる。
「起業」に関する誤解を解く
「日本の起業環境を考えると、今一番課題なのは、VC(ベンチャーキャピタル)など支援者ばかりが増えて、起業家がいないこと。しかし、多くの大学は起業家輩出のための実践的な起業家教育を提供できていません」
熊野准教授によると、学生たちはベンチャー起業について、誤ったイメージを持っているという。講義で学生に起業のメリットを尋ねると、「金持ちになれる」「社長になれる」「モテそう」といった声が出てくる。一方、デメリットについては、口を揃えて「失敗すると借金を背負い、夜逃げしなければならない」などの答えが返ってくる。
「そもそも学生は銀行からお金を借りることはできませんし、ベンチャーとは投資家から投資を受けて始めるものです。学生ベンチャーの社長が、個人保証が原因で多額の借金を背負い、夜逃げに追い込まれるようなことはありません。銀行融資で事業をする中小企業(small business)と、投資を受けて成長を目指すベンチャー(Startup)は似て非なるもの。『融資』と『投資』の違いすら、十分に認識されていないのです」
起業の基礎知識を教えることから、熊野准教授の講義は始まる。
「ベンチャービジネスと何か、投資と融資の違いとは何かなど、基本的なことから教えていきます。最低限の知識さえ不足しているので、誤った怖いイメージばかりが先行してしまうのです」
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り59%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。