2016年7月号

人間会議

文化プロジェクトを地域で「自走できる仕組み」づくり

上原 闘(凸版印刷 オリンピック・パラリンピック事業推進部 部長)

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文化プロジェクトを通した地域の課題解決に、企業の持つ力を活かすプロジェクトが始まった。プロジェクト名は「CONTEXT」。世界に日本文化を発信する共創造型のプロジェクトとして、企業に加え、企業メセナ協議会、日本財団、そしてアドバイザーとして文化庁が参加している。
プロジェクトでは、企業のアセット(財産、資産)を活かし、文化活動を地域の人々で「自走できる仕組み」をつくっていく。さらに、企業にとってはコストと捉えられがちな文化活動に、ビジネスとしての価値を見出していくプロジェクトの方針に期待が高まる。

企業の本質的な価値を活かし地域の課題を解決する

企業として、どのように東京オリンピック・パラリンピックに関わっていけるか。2020年は多くの企業が考えている好機の一つであろう。競技大会への参画や、スポーツ活性化によるスポーツ産業への参入も考えられるが、その切り口の一つとして「文化」が注目されている。

2015年、民間企業が中心となり、世界に日本文化を発信する共創造型プロジェクト「CONTEXT」が立ち上がった。背景の異なる様々な企業と地域がつながり、それぞれのアセットを持ち寄ることでモデル事業を共創造していくことが、プロジェクトのコンセプトである。

プロジェクトを立ち上げ、事務局を務める凸版印刷の上原闘部長は、「アセットとは、資産や財産を示しています。この機会に、企業や自治体は自らのアセットを見直し、それらを活かした文化プロジェクトで、地域の課題を解決していきたい」と話す。

上原 闘 凸版印刷 オリンピック・パラリンピック事業推進部 部長

凸版印刷は、2000年の創業100周年を記念して、クラシックコンサートホール「トッパンホール」と、印刷の資料や歴史を紹介する「印刷博物館」をオープンし、芸術・文化活動に力を入れている。また、印刷で培った技術を活かし、文化財のデジタル化保存など、日本文化を残す取り組みも行っている。

同プロジェクトには、他にコクヨ、ヤマハミュージックジャパン等数社が参加している。企業以外では、企業の文化・芸術活動を支援する企業メセナ協議会、ソーシャルイノベーションのハブを目指す日本財団が加わり、さらに文化庁がアドバイザーとして入っている。

ヤマハミュージックジャパンは、全国で「おとまち」という音楽の街づくりプロジェクトを開催し、各地域とのつながりを持っている。コクヨは、働き方、学び方の視点からオープンイノベーションの空間開発、運営、実施とノウハウが提供できる。

「各企業や団体ごとに、特徴的なアセットがあり、地域や文化に貢献できることはたくさんあります。しかし、そのアセットを組み合わせて、複数が集まったからこそできることもあります。それがCONTEXTで提供したいことであり、プロジェクトの価値だと考えています」

図1 CONTEXTプロジェクト体制

継続的なイベントにする仕組みづくり

CONTEXTは大きく2つの柱を掲げている。

1つ目は、「文化プログラム創造事業(日本版InspireProgram)」である。2012年のロンドン大会で、InspireProgramは、ロンドン大会を契機に始まった非営利プロジェクトやイベントを公式に承認するプログラムのことを指していた。このプログラムは、産業、教育、スポーツ、持続可能性、ボランティア、そして文化という6つの分野に分類され、文化プロジェクトは717件実施された。

この日本版をとして、世界に向けた多様な日本文化の発信、国際的な文化の交流を目指し、創造性と多様性によるイノベーティブな視点でのプロジェクト活動を創出。また地域と企業にとって活力をもたらすモデル事業をつくることを目指していく。

2つ目は、「レガシーの創出」だ。文化プログラム創造事業を通じて、「人材育成」「地方創生」「多文化共生」等の日本における社会・経済・まちづくりなど様々な分野におけるレガシーを創出することを目指している。

人材育成では、美術、音楽等の文化芸術への興味関心の裾野を拡大するため、本物の文化芸術に触れる場を提供する「エデュケーションプログラム」を考案している。地方創生では、公民館や企業の遊休施設を文化プログラムの地域拠点としてリノベーションしながら、地域の特徴を活かした「クリエイティブシェアプレイス」の開発を進める。多文化共生では、「都市×多文化×アート」と称し、ダイバーシティをテーマとしたアートプロジェクトを計画中だ。

文化プロジェクトは、企業にとって、コストであり、プロフィットになりえないと思われがちだ。また自治体にとっても、補助金が入る短期的なイベントとして継続性がないところも多く見受けられる。

CONTEXTを通して、企業としては、企業の本質的な価値を活かして、地域の課題解決ができ、ビジネスにもつながる。自治体としては地方創生として地域を活性化できる一つの戦略になりえる。それらの実現のため、上原氏は「プロジェクトとして地域で『自走できる仕組み』をつくりたい」と話す。

そのため、企業の持つ技術や知見だけではなく、マーケティング力、コミュニケーション力なども活用し、2年後、3年後は地元の人々で継続できる仕組みを共創造することを目指している。

組織委員会や開催都市・東京都は、「オリンピック・パラリンピックの文化プログラム」と称して文化活動を行うことができる。「だからこそ、私たちは地域で、全国規模の文化プロジェクトを推進していきたい」と上原氏は語る。本プロジェクトには、場所と時間を超えた広い未来が広がっているようだ。

世界に日本文化を発信する共創造型プロジェクト「CONTEXT」のロゴマーク。

 

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