世界から人が集う「創発の場」 「イノベーション拠点」が誕生へ
イノベーションが生み出されるためには、どのような「場」、「働き方」が必要なのか。日華化学は、社員自らが「理想の場、働き方」を考え、提案するプロジェクトを実施。新たに建設される『NICCAイノベーションセンター』は、地方発の共創のモデルを提示する。
近年、社内外のアイデアやリソースを組み合わせ、新しい事業を生み出す「オープンイノベーション」が注目を集めている。
しかし、その事例として取り上げられるのは、都市部の大手企業やベンチャーであることが多い。
そうした中で、地方発のオープンイノベーションを目指している企業がある。福井市に本社を置く日華化学だ。現在、創業の地である福井で、新たな研究施設である『NICCAイノベーションセンター(仮称)』(以下「センター」)の建設を進めており、2017年秋に完成予定となっている。
日華化学の江守康昌社長は「当社は、オープンイノベーションという言葉が生まれる前から、それを実践してきました。センターも、創業から脈々と流れる当社の強みをカタチにしたものです」と語る。
顧客と共創することが文化
日華化学の創立は1941年、2016年で75周年を迎える。世界有数の繊維産地である福井県において、繊維を加工するための薬剤を手掛けて成長し、2015年12月期の決算(連結)は売上高465億円、営業利益23.6億円となっている。
「製品を売るにあらず、技術を売る」が創業から受け継がれてきた精神。一口に「繊維の加工薬剤を手掛ける」と言っても、技術の領域は広く奥が深い。例えば、繊維を加工するための界面活性技術を応用し、金属を加工する薬剤を手掛ける。また、紙や人の毛髪はいわゆる繊維であり、製紙や頭髪化粧品の領域にも進出してきた。
「顧客となる繊維産業とも近い距離に立地し、お客様の声を聞きながら市場を開拓してきました。大学の研究室などとも協力し、お客様と一緒に製品を開発するのは当社の文化です」
そうした「オープンイノベーション」とも言える研究開発戦略で成長するとともに、日華化学はグローバル戦略にも力を注いできた。
「人件費や市場など時代の変化に伴い、繊維の産地は広がりを見せており、我々も現地ニーズに即応する体制を整えてきました」
現在、日華化学グループは、台湾、韓国、タイ、インドネシア、アメリカ、中国、ベトナムなど、アジアを中心に12の海外拠点を持つ。
研究開発力とグローバル戦略を原動力に、発展を遂げてきた日華化学。こうした戦略の中で、2017年秋に福井市に完成するセンターは、どのような意味を持つのか。
「働く人」こそがコンテンツ
江守社長は、センターを新設する狙いについて、こう語る。
「研究開発拠点として機能するだけでなく、全国や世界から人と技術が集まり、新たなビジネスモデル、新規事業を生み出す『場』をつくりたい」
多くの場合、先端的な知識を吸収するためには海外に行ったり、国内の人の移動を見ても、地方から大都市への流れが圧倒的に多い。それを逆転させ、国内外から地方都市・福井に人を集めようとしているのだ。
センターの建設にあたり、一部の役員からは「海外から来る人にとって福井は不便。東京に置くべき」という意見も出たという。
しかし江守社長は、本社がある福井市にこだわった。
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