漆はニッポンの文化、「本物」は滅びず 衰退する伝統産業を救う

漆は9000年の昔から使われ、日本人の生活・文化に深く関わってきた。しかし今、日本の漆産業は風前の灯にある。岩手県二戸市の浄法寺地域は、国内最大の漆の産地。漆文化の復興を目指して、2009年に設立されたのが浄法寺漆産業だ。

岩手の漆と、山口県萩市のガラス工房が協力。2つの産地のコラボが生み出したガラス器「ウルシトグラス」は、グッドデザイン賞を受賞した

長い伝統と歴史を持つ漆は、古くから日本人の生活に密着してきた。16世紀半ば、南蛮貿易の頃には海外へも多く輸出され、オランダをはじめとする欧州で特に高く評価された。

そんな国産漆も、戦後、安価な海外産の漆に押されて衰退。現在、国内に流通している漆の98%は中国産だという。戦前まで各地に見られた漆掻き職人(漆を採取する職人)の風景は消え、国内最大の漆産地である浄法寺(じょうぼうじ)地域でも、300人いた漆掻き職人は、20数人まで減少した。

危機的状況に警鐘を鳴らすべく立ち上がったのが、松沢卓生氏。2009年に浄法寺漆産業を立ち上げ、国産漆の伝統と魅力を全国・世界へ広く発信している。

高級なイメージのある漆器を身近なものにするために、岩手のゆるキャラを使った「わんこきょうだい椀」の販売を開始

漆は一滴一滴が貴重なもの

岩手県庁の職員だった松沢代表は、県の出先機関である二戸地方振興局林務部(当時)に異動したのがきっかけで漆に出会った。

「天然塗料で、これだけ深い色艶と堅牢性を併せ持つ素材はありません。知れば知るほど、漆文化の深さに惹かれていきました。しかし地元には、職人がいても、その価値を発信して販売をする人がいませんでした。自分がその役割を担おうと考えたのです」

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