豊富な地域資源、不足する「次の一手」 愛媛の強みと弱みを分析

数多くの「日本一」を誇る1次産業、四国最大の2次産業基盤など地域特性を最大限に発揮した産業形成を行ってきた愛媛県。過疎化やグローバル化が進む今、さらなる「創生」の鍵はどこにあるか。

首都圏や京阪神など巨大経済圏の周縁部に位置する自治体は、総じて経済的に豊かである。しかし、その反面、その自治体としての独自のアイデンティティに欠けがちで、地域ブランドの創出が難しい。

その一方で、そうした経済圏から遠く、個性豊かな産業に恵まれている自治体は、多くの場合、産業従事者の高齢化・承継者難が進行している。その結果、地域経済は停滞し、せっかくの個性的な地域資源が活き切れず、「創生」の実を挙げ難い。

愛媛県は、まさに後者の典型かもしれない。その可能性と課題を検討したい。

地域特性に適合した産業棲分け

愛媛県は、人口約139万人(2015年)で、11市7郡9町からなる。四国横断自動車道と四国縦断自動車道で四国各県と連絡するほか、西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)で中国地方(広島県尾道)と直結するなど高速交通面での基盤は盤石である。

県土は、東予・中予・南予という3つの圏域に分けられ、圏域ごとに、産業の棲み分けが明確化している点が他県と異なる特徴である。

まず、東予は、四国中央、新居浜、西条、今治などを擁し、2次産業の中核をなしている。大王製紙・ユニチャーム・リンテックに代表される四国中央の製紙・紙加工業と、今治の地場産業のタオル製造(今治タオル)は、ともに出荷額で全国1位を誇る。

また、別子銅山以来の新居浜の住友グループ大規模工場群、今治・西条の造船業や、「焼肉焼いても家焼くな」のCMで人気の日本食研(今治市)など個性豊かな食品製造業も東予を特徴づけている。さらには、砥部町伝統の地場産業「砥部焼」も全国的に知られている。

県としての2次産業出荷額は、四国全体の約半分(47・4%)に達しており、工業生産額(生産年齢人口1人当たり出荷額)は全国第14位(2013)という高位である。

一方、県人口の4割が集中する中予は、3次産業の中心であり、松山が中核をなす。夏目漱石の小説「坊ちゃん」の舞台であり、「道後温泉本館」など全国的知名度を有する観光資源がある。近年は、テレビ・ドラマ化の影響もあって、司馬遼太郎「坂の上の雲」の主人公、秋山好古・真之兄弟や正岡子規の出身地としても知られるようになり、松山市役所は、この作品を通じた町興しを推進中である(=フィールドミュージアム構想)。

また、南予は、宇和島、八幡浜などを擁し、柑橘類栽培・養殖業などを中心に県の1次産業を支えている。1次産業における生産量“日本一”だけを眺めても、かんきつ(30年連続)、キウイフルーツ(28年連続)、裸麦(28年連続)、真珠(9年連続)、養殖真鯛(24年連続)など、長期にわたって確乎たる地位を占める産品が多い。

以上のように、愛媛県は、圏域ごとに、地域特性を最大限に発揮した産業形成を行い、顕著な成果を挙げている点で、ある意味、模範的ですらあるのだが、それでもなお、同県をめぐる状況は厳しいようだ。

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