「仕事づくり」の方法を発明 地方に広がる「月3万円ビジネス」
栃木県那須町にあるテーマパーク「非電化工房」。代表の藤村靖之氏は、「地方で仕事を創る塾」を主宰し、スモールビジネスの価値、「豊かさ」のあり方を問い直す。
「エネルギーとお金を使わなくても豊かになれる。そういう選択肢があってもいい」
一人の発明家の、そんな思いを具現化したのが、那須の自然の中に佇む私設テーマパーク「非電化工房」。代表の藤村靖之氏は、高度成長の時代、大手企業で次々と特許を取得したトップエンジニアだった。1984年に39歳で起業し、自ら発明した製品でビジネスを展開していった。
那須に移り、テーマパークをつくり始めたのは2007年。現在では、見学会やセミナー、ワークショップ、起業塾などを開き、年間3000人以上が国内外から訪れる。
「非電化」という新たな選択肢
非電化工房には、世界一貧しい国の家をモデルにしたという「非電化カフェ」など、独特な建物が並ぶ。
「非電化カフェは、ジンバブエの民家を参考にしました。ジンバブエは貧しいので、タダの材料を使い、自分たちで家をつくるそうです。でも僕は、その世界一貧しい国の家を見て、素敵だと思いました」
「非電化」とは、「電気を使わなくても快適・便利は実現できる」という生活の提案だ。藤村氏は電化製品を否定するわけでなく、「エネルギーとお金を使わないと豊かになれない」といった考え方とは異なる、別の選択肢があることを示すために「非電化」という言葉をつくり出した。
「発明家は、世の中に新しい選択肢を提供するのが仕事です」
非電化工房にある建物はすべて、住み込みの弟子がつくっている。室内40席、デッキ40席の非電化カフェは、建築業者が見積もれば4000万~5000万円が相場だが、わずか50万~60万円で完成させた。他の施設もすべて約15万~20万円で手づくりしたという。
「テーマは、素人が楽しみながらつくれる、素敵で頑丈なゼロエネルギーの建物。基本的には、文系女性でもつくれます。大切なのは技術ではなく、時間と体力、そして建物を一緒につくってくれる仲間です」
非電化工房には常に3~8人の弟子が住み込む。無料で三食寝泊まりできるが、給料は出ない。そして、食料から建物まで、すべて自分たちでつくる。藤村氏によると、非電化工房の弟子になるための競争率は、日本で最も人気のある大学より高いという。
多くの若者が非電化工房の弟子を志願するのは、その営みの中に、現代社会で生きる人が失ってしまった、“豊かさ”を感じ取っているからなのだろう。
「月3万円ビジネス」を生み出す
藤村氏が「非電化」の提案と並行して行っているのが、地方での仕事づくりだ。
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