知事が語る「地方創生」戦略 栃木で「本物の出会い」を 

大手企業が立地する「ものづくり県」であり、観光資源に恵まれ、豊富な農作物で、首都圏の食料供給基地にもなっている栃木県。福田知事は県の実力を引き出し、ブランド力を高めるために、数々の戦略に力を注ぐ。

福田 富一(栃木県知事)

――県産業の強みをどのように見ていますか。

栃木県は、県内総生産に占める製造業の割合が全国6位という典型的な「ものづくり県」です。製造品出荷額等の産業別構成比を見ると、自動車・航空機などの輸送機械が最も多く全体の約2割を占め、その他、情報機械、飲料・たばこ、電気機械、化学、食料品、プラスチック、生産機械、金属、情報機械など、さまざまな分野がバランス良く立地しているのが強みです。

そして、日産やホンダ、富士重工業、富士通、キヤノン、パナソニック、ブリヂストンなど、大手企業が立地するだけでなく、それらを支える高度な技術を持つ中小企業が地場に多くあることが、栃木の大きな強みと言えるでしょう。

こうした強みを活かした産業振興施策として栃木県は、自動車・航空宇宙・医療機器・光・環境の5つを重点分野に指定し、それぞれに協議会を立ち上げ、官民一体となって各種支援策を講じることにより、「ものづくり県」として一層の発展を目指しています。

地域資源を活かして成長へ

――栃木県のものづくりの強さには、どのような背景があるのですか。

その素地は、江戸時代まで遡ると考えています。日光東照宮を造営した職人が、寒さの厳しい冬場、宇都宮などに下ってきて山車や屋台、神輿を数多く造りました。それら職人の技術が、昭和に入ってから多くの優秀なものづくり企業が立地する素地となったのではないかと思います。

また、慶長15年(1610年)から昭和48年(1973年)までの約360年にわたり銅の採掘が行われていた足尾銅山の存在も、栃木県の発展に大きな役割を果たしました。先人の残した遺産、偉業を現代の我々が受け継ぎ、発展させていくことが大切です。

――成長産業の育成について、どのように考えていますか。

地域資源を活かした新たな産業の創出を目指します。力を注ぐ分野の一つが、再生可能エネルギーです。

かつて足尾銅山では、銅山経営に着手した古河家が、ドイツ人技師を招き、日本で最初の水力発電所を建設したという歴史もあります。

県内は標高差が大きく、また、水資源も豊富なため、小水力発電で有望な地域を特定し、発電へ向けて動き出す計画です。また、栃木県は冬場の日照時間が全国でもトップクラスですから、太陽光発電は有力な電力源となります。これはすでに、目標値を掲げて取り組みを始めています。

県の55%が森林ですので、森林資源を活用したバイオマス発電・熱利用にも力を入れます。那珂川町では、中学校跡地にバイオマス発電所が建設され、併設された製材工場の排熱を利用してビニールハウスでマンゴーを栽培したり、ウナギを養殖する事業が始まっています。

今ある資源を産業に育てて、地域の発展につなげていく。これは、地方創生にもつながる視点だと考えています。

栃木県、産業の特徴

製造業

  1. ・リーマンショック等からの製造品出荷額等の持ち直し
  2. ・事業所数・従業者数の減少
  3. ・下請的立場にある多くの事業者

 

企業立地

  1. ・景気回復に伴う企業立地件数の増加
  2. ・充実した高速交通ネットワーク
  3. ・人材の不足

 

立地環境・地域資源

  1. ・東京圏等とのアクセスに優れた地理的優位性
  2. ・豊かな自然環境・地域資源
  3. ・低迷するブランド力

 

商業 ・サービス業

  1. ・年間商品販売額・事業所数・従業者数の減少
  2. ・困難な事業承継

 

雇用・産業人材

  1. ・減少傾向にある県内従業者数
  2. ・有効求人倍率の改善
  3. ・低い女性・若者の就業率

 

産業構造

  1. ・全国上位の県内総生産と県民所得
  2. ・高い第2次産業の構成比
  3. ・低い開廃業率

 

観光

  1. ・観光入込数の回復、宿泊数の伸び悩み
  2. ・高い観光客満足度と多いリピーター

出典:「次期産業プラン(とちぎ産業成長戦略(仮称))骨子案(部会案)の構成」(2015年)から抜粋

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