2015年10月号

外国人を呼び込む 観光・移住のインバウンド市場

星野リゾート、チームラボの代表らが語る「2020年の観光」とは

パナソニック株式会社

2
​ ​ ​

2020年の観光とは--。 本誌5月号では、今年3月にパナソニックが博多駅で実施したイベント「WONDER JAPAN TRIP」を取り上げた。実はその裏には、同社が仕掛けたもう一つの企画があった。BSフジの制作で4月17日に放映された、番組内容の一部を紹介する。

6名の有職者が「ななつ星in九州」を舞台に2020年の観光を考える旅に出る

列車による旅の最高峰クルーズトレイン「ななつ星in九州」

Photo by Sanjo

「ななつ星in九州」は、総工費30億円、定員28名。1泊2日コース21万円~、2泊3日コース48万円~という価格ながら、2015年春の申し込みは最高応募倍率が171倍。JR九州という一企業の枠を超え、沿線住民、さらには九州全域に富と活気をもたらした、地域活性の空前の成功事例だ。

 

3月3日、JR博多駅。「本日はワンダージャパントリップへようこそ」。いまや国民的人気キャラクターとなった「くまモン」の生みの親であり、これまでに斬新な企画を数多く世に出してきた小山薫堂氏の呼びかけで、「会議のための旅」がスタート。

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向け、各界のトップランナーが観光の未来を考える。舞台となるのは、JR九州が世界に誇る豪華列車、クルーズトレイン「ななつ星in九州」だ。

小山氏と時間をともにするのは、キャスターの八木亜希子氏、星野リゾートの星野佳路氏、ユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学氏、音楽プロデューサーの松任谷正隆氏、チームラボの猪子寿之氏だ。総勢6人が、旅をしながら観光をテーマにさまざまな議論を展開する、社内会議ならぬ「車内会議」なのだ。

「ななつ星in九州」のラウンジカーにて会議。6人の旅人からは、さまざまなアイデアが飛び出す

「こんなにチャーミングな仕事はここ最近なかったな」(赤池氏)、「今ちょっとテンションがマックスになっています」(八木氏)と、旅人たちは早くも興奮気味。もちろん、単に旅を楽しむだけではない。「宿題を一生懸命考えてきて、それだけでもう頭がいっぱい」(星野氏)。そう、宿題とは、事前に小山氏が旅人に課した「2020年に向けてやってみたい観光のアイデア」というものだ。

6人の旅人を乗せた「ななつ星in九州」は、駅員や多くの鉄道ファンに見送られながら、定刻の11時18分に博多駅を出発した。湯布院を経て宮崎へと至る1泊2日の旅である。

「ななつ星in九州」では運行開始以来、園児たちによる見送りが、週2回欠かさず行われている

問われる「おもてなし」のあり方

最初のテーマとなったのは、「日本の観光の現状・問題点」。訪日外国人の数は過去3年で順調な伸びを見せている。だが、「アジアの中での順位は伸びていない。伸び率という点では他の国に負けている」(星野氏)。シェア争いでは他国に遅れを取っているのが現状だ。

実際に外国人観光客からは、「フリーパスが充実していない」、「無料で使えるWi-Fiサービスが整備されていない」、「飲食施設などで外国語の情報が不足している」などの声があがっている。外国人に日本を楽しんでもらうための準備が、十分に整っていないのだ。

オリンピック招致で一躍キーフレーズとなった「おもてなし」。今後の日本が描くべき「おもてなし」とは何なのか。「国際的な感覚から見ると、日本のおもてなしには履き違えがある」(猪子氏)。「単なる親切や気遣いであれば、そんなものはアメリカのホテル・チェーンでは当たり前のようにやっている。そこに定義を置いちゃいけない」(星野氏)と警鐘を鳴らす。

また、「外国人が増えることが観光立国の成功ではない。地方経済の活性化にどの程度結びつくか」(星野氏)を見据え、日本ならではの「おもてなし」の姿を描かなければならないとの意見もあがった。

2020年に向けた「観光のアイデア」

1 小山薫堂 (構成作家)

・日本を一周する国営豪華客船
→ 停泊する場所や食材などを募ることで、地域活性につなげる

 

2 八木亜希子 (キャスター)

・ふるさとCMコンペティション
→ 日本全国のCMをつくり、世界に発信

 

3 星野佳路 (星野リゾート)

・休暇を分散取得する社会システムをつくる
→ GWなど休暇が集中する期間に、旅行費の削減や混雑回避につながる

・2020年オールジャパンオリンピック
→ 2020年のオリンピックの競技開催地を分散させて地域の活性化を図る

 

4 赤池 学 (ユニバーサルデザイン総合研究所)

・社会システム全体を子ども目線でデザインしなおす
→ 日本を世界一、子どもが幸せな国にする

 

5 松任谷正隆 (音楽プロデューサー)

・隣人との距離感を縮めるきっかけをつくる
→ 人と人とのつながる場所を増やすことで、新しい動きを期待

 

6 猪子寿之 (チームラボ)

・オールジャパンオリンピックを3Dホログラムで生中継
→ 全国各地で生中継会場をつくり、誰でも参加できるようにする

・過疎化した村をまるごとアートにする
→ 世界中のアートファンに建て売りすることで、過疎の村を観光地として復活

 

身近な素材に成功のヒント

湯布院に到着。6人の旅人は、湯布院の伝統芸能である庄内神楽や、辻馬車による街の散策を堪能

14時3分に「ななつ星in九州」は、由布院駅へ到着。9時間の停車中に、旅人はゆったりと観光を楽しむことができる。

6人は、まちおこしを成功させた九州の人々をゲストに迎え、秘訣を尋ねた。欧州各地の観光地を視察し、まちづくりを学んだ「亀の井別荘」会長の中谷健太郎氏が登場。中谷氏は、さまざまなイベント実施や、地域の文化を育むことで、湯布院ブランドを築き上げた伝説的人物である。「人様をお泊めする際は、とにかく安心なさい、と訴え続けること」と語った。

湯布院ブランドを育て上げた「亀の井別荘」会長・中谷健太郎氏など、九州のまちおこしのキーパーソンたちに、その秘訣を聞く

都農町観光協会事務局長の猪股利康氏もゲストの1人。都農町は、2010に年に家畜の感染症・口蹄疫であらゆる産業が甚大な被害を受けた。しかし「ななつ星in九州」への食材提供を通じて、地元特産品のブランド化に成功。地域の活性化を実現したという。

そんなゲストたちの成功事例を聞いた星野氏は、「バブルの時代のリゾート開発は、魅力を外から持ってくるもの。地域に成功の素材がもともとあって、それをいかに掘り起こし、形にして提供するのか。それが観光の王道だと思う」という。「身近にある素材に成功のヒントがある」と指摘した。

ミーティングを終えた6人は列車に戻る。バイオリンとピアノの生演奏をバックに、極上のディナーを楽しんだ後は、最後の会議に臨む。

会議のテーマは、宿題でもあった「2020年に向けてやってみたい観光のアイデア」だ。6人の提案は、前頁の表の通り。6人それぞれの個性が発露した、どれもユニークなアイデアばかりとなった。豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」における非日常の体験が会議全体のスパイスとなったことは間違いないだろう。

列車内でディナー。バイオリンとピアノの生演奏をバックに、極上の料理を楽しむ

パナソニックが目指す「観光立国」への貢献

この企画を仕掛けたパナソニックの狙いは、一体何だったのか。

番組内でも取り上げられたとおり、訪日外国人が言葉の壁を感じるなど、日本のサービスやインフラには改善の余地がある。ディスプレイや内照式看板、ショウウインドーに搭載されたLED光源にスマートフォンをかざすだけで、世界中の言語に翻訳された交通案内板や詳細情報を瞬時に受信できる光ID技術や、音声関連技術とクラウドの翻訳技術※をつなげることで、瞬時に翻訳を行う多言語翻訳機など、パナソニックでは、この壁を取り払うためのさまざまなソリューションを提案している。

さらにパナソニックはこの技術力を核に、観光分野での新たな事業創出を目指して、6月にはJTBとの協業を発表した。JTBとパナソニック両社の強みを掛け合わせることで、観光というフィールドでの連携を加速させ、事業の創出を目指すのだ。

協業の取り組みの第一弾は、国立研究開発法人 情報通信研究機構とともに研究開発を進める自動翻訳機の実用化だ。JTBの協力を得て、ホテルや旅館、観光案内所などに、開発中の自動翻訳機を設置し、その有用性の確認や改善点の抽出を行う実証実験が2015年7月よりスタートしている。実験結果は、2020年に向けた事業の創出や翻訳機の商品開発などに反映されるという。

パナソニックが描く、観光立国・地方創生とは何か。今後の動きに注目したい。

※情報通信研究機構(NICT)の翻訳技術を利用

列車は終点の宮崎駅へ。旅は、「観光立国」のヒントとなるアイデアを数多く生み出した

 

  1. パナソニック株式会社
  2. URL:http://panasonic.co.jp
2
​ ​ ​

バックナンバー

最新情報をチェック。

社風が変わる、イノベーターが育つ

地方創生・イノベーションにつながるアイデアと思考に注目!

志高い、ビジネスパーソン・行政・NPO職員・起業家が理想の事業を構想し、それを実現していくのに役立つ情報を提供する、実践的メディア。

メルマガで記事を受け取る

メルマガ会員限定で、
ピックアップしたオンライン記事を
毎日お届けします。

メルマガの設定・解除はいつでも簡単

バックナンバー検索

注目のバックナンバーはこちら


会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる