熱き公務員、まちを動かす 「リノベーションスクール」の挑戦

組織の枠を越え、リノベーションスクールの実現に奔走。地域に飛び出す公務員の取り組みをきっかけに、「まちを変えたい」と思う人がつながり、変化が起こり始めた。
取材協力:クックパッドグループ ホリデー社

 

リノベーションスクールは、2011年に北九州市から始まった。3~4日間の日程で、まちに実在する遊休化した不動産のリノベーション事業計画を作成し、最終日にオーナーにプレゼンして事業化を目指す集中講座だ。建物単体の再生だけでなく、それを起爆剤として周辺エリアの再生を進め、まちの魅力アップにつなげることを目的としている。

北九州市では、すでにいくつかのプランが事業化し、まちづくりの新たな流れを生んでいる。そんなリノベーションスクールを鳥取市でも開催するきっかけをつくったのは、一人の公務員だ。

人との出会いがきっかけに

「上司からは最初、『組織の体制上難しいだろう』と相手にされませんでした」

県職員で建築技師の林拓磨氏は、当時を振り返り苦笑する。林氏は、地元・鳥取県八頭町の建設会社に6年間務めた後、妻の勧めで2008年に入庁。住宅政策課で建物の耐震化施策などに関わっていた2012年、出張の機内で見た番組に強い感銘を受けた。東京の建築士事務所、「ブルースタジオ」の大島芳彦氏が出ていたのである。

大島氏は、建物だけでなく、周辺エリアの状況やオーナーの思いをくみ取り、長年使われていなかった物件をリノベーションにより再生する手法の草分け的な存在だった。

「テレビで、『賃貸住宅をリノベーションして、家賃を倍にする不動産再生集団』みたいな形で出ていて、衝撃を受けたんです。同時に、これなら鳥取でもできるかもしれないと思いました」

2012年11月、鳥取市の講演会に大島氏を招いた。そのとき、事例として紹介されたのが、北九州市で始まっていたリノベーションスクールだった。

2014年11月に開催された「リノベーションスクール@鳥取」。参加者は、リノベーション事業計画を作成し、最終日には、公開の場でオーナーに向けてプレゼンを行う

実現に向けて苦難の日々

講演後、すっかり感化された林氏が「鳥取でもできませんか」と大島氏に問いかけると、「そちらの準備しだいで可能性はある」との返事。林氏は早速、上司に相談した。その際の返答が、冒頭のひと言だ。担当部局の壁や、まちづくり施策の主役である市町村との関係性もあり、確かにそれは、林氏自身が考えても実現困難な状況にあった。

「当時、リノベーションといった手法を行政が切り口にすること自体、前例がありませんでした。当然の反応だったと思います」

林 拓磨 鳥取県 東部生活環境事務所 建築住宅課

しかし、あきらめきれない林氏は、大島氏との縁を頼りに全国のリノベーション関連イベントへ出かけ、らいおん建築事務所の代表・嶋田洋平氏や、メゾン青樹の代表・青木純氏など、リノベーションスクールに携わる人たちと広く関係を築いていった。

そうした中、チャンスは2013年の冬に訪れた。大島氏から鳥取市で、「リノベーションシンポジウム」の開催を打診されたのだ。

上司の進言で鳥取市に提案したところ、当時の市都市整備部長の理解が得られ、遂に話が動き始めた。

岡田氏は、リノベーションスクールで出会った仲間たちとともに、「ホンバコ」の実現に奔走。多くの人の協力を得て、オープンにこぎつけた

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