山口はメディア芸術の聖地 地域と世界を結ぶ「創造と遊び」の場
オープンから10年超で来館者が800万人を突破した山口情報芸術センター(YCAM)。地域の創造活動を支え、その成果は、東京を飛び越えて世界から注目されている。
作品の展示スペース、劇場、ミニシアター、市立中央図書館が一体となった新しい形の複合文化施設として、2003年11月にオープンした山口情報芸術センター(YCAM)。山口市文化振興財団が運営する公共施設であり、名称に「情報芸術」とあるとおり、YCAMはメディアアートとメディア文化の拠点に位置付けられている。
メディアアートとは、映像や音響、プログラミングなど、コンピュータ技術を使ったアートのこと。YCAMは、身体表現とコンピュータ技術を融合したパフォーマンス制作や、メディアリテラシー教育に特化したプログラムの開発で世界的に知られる。2013年には音楽家の坂本龍一氏がゲスト・アーティスティックディレクター(総合芸術監督)を務め、10周年を記念した年間企画展も催された。
人口約19万4000人の山口市において、YCAMの来館者は累計800万人を超える。注目すべきは、その集客力だけではない。YCAMは山口市という地方都市にありながら、世界の先進的なクリエイティブ・シーンと直接につながり、創造の場として機能している。
たとえば、Perfumeが2013年のカンヌ国際広告祭で銀賞を受賞した際に、パフォーマンスの演出を手掛けたクリエイター集団・ライゾマティクスなどが、YCAMでの共同制作を何度も行っている。YCAMは東京を経由することなく、地域発の創造性を世界に広げているのだ。
コンセプトは「フレキシブル」
副館長の阿部一直氏は、建築家・磯崎新氏らを中心とした施設のためのソフト研究会の一員として、1990年代後半からYCAMのコンセプトづくりに参加していた。
磯崎氏は、山口市の「市の未来を育む中核拠点施設をつくりたい」という要望を受けて、情報技術に長けたアーティストやキュレーター、マネジメントの専門家といった現場の人材を集めて研究チームを結成。その中からキュレーターとして抜擢されたのが、阿部氏である。阿部氏はもともと、キヤノンのアートラボ・プロジェクトにおいて、アートとテクノロジーの融合を目指した文化支援プロジェクトに携わっていた。
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