住民主体のエコミュージアム構想 地域に眠る「魅力」を発掘
箱物ではなく、まち全体を博物館と捉えるエコミュージアム構想。生涯学習にも通じるこの取り組みで、まちおこしに成功している自治体がある。地域に活力を与える日本版エコミュージアム構想とは何か。
眠る資源を発掘しまち全体を博物館に
日本の地方創生の一手となる取り組みの一つに、「エコミュージアム」が挙げられる。地域資源を活かしたまちづくりは、地域内の人が活発になり、雇用を生み、地域外からの人々を惹きつける原動力となる。
エコミュージアムは、1960年代にフランスで発祥した。エコロジーとミュージアムを合成した言葉だ。従来のミュージアム(博物館)は一つの建物の中で完結するのに対し、エコミュージアムは地域固有の自然、歴史、文化、伝統、伝説など地域に眠る資源を、“まちの魅力”として発掘し、現地で整備保存して、まち全体を博物館として捉えるものだ。
日本におけるエコミュージアム形成の推進者の代表的なひとりが、全国生涯学習まちづくり協会の福留強理事長だ。各地で地域資源を活かしたまちづくりを行い、さらに成功事例を他の地域へつなげている。まさにまちづくりプロフェッショナルだ。
「エコミュージアムの形成は、行政主導型ではなく、地域住民、地域の事業者が一体となって行う活動です。それは身近なところに生活の糧を探し、学びながら発展させていく生涯学習と相通ずるものがあります」
福留氏は、当時の文部省に務めていた頃から、長く生涯学習普及に携わってきた。その活動の中で、「まち全体が学習できる環境づくり」を掲げる生涯学習は、まちづくりや観光誘客へ通じることに気がついた。
「地域の魅力を探すこと、それは生涯学習の一つです。それは箱物の資料館の中ではなく、様々なところに潜んでいます。自然や遺跡のよう視覚的なものだけではなく、歴史や伝説、また文化や地域特有のおもてなし精神も含まれます。それらを見出していくと、自ずとエコミュージアムができるのです」
主役は市民
行政はサポート役に
日本のエコミュージアム構想の先駆けとなったのは、1992年にスタートした岩手県三陸町の取り組みだ。当時の三陸町は、人口減少が進み、1万2000人いた住民が9000人にまで減少。一方で鹿が増えて約6000頭もいる状況だった。まちを活性化したいと思い、まちの人々は福留氏に相談をもちかけた。
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