2015年1月号

プロジェクトニッポン 長崎県

ハウステンボス テーマパークを超え、新ビジネスの「実験場」に

澤田 秀雄(ハウステンボス社長)

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18年間赤字を続けていた佐世保市のハウステンボスの再建に着手し、たった1年で黒字転換。澤田社長は、ロボットや健康など新ビジネスを生み出す「実験場」として同園を活用し、テーマパークの枠を超えた、アジア有数の「観光ビジネス都市」を目指して拡大を続ける。

世界最大級1100万球超ものイルミ―ネーションが輝くハウステンボス「光の王国」。夜景鑑定師が選ぶ全国イルミネーション第1位を獲得している

―澤田社長は、2010年にハウステンボスの再建に着手しました。引き受けた理由は、何だったのですか。

澤田 秀雄 ハウステンボス社長

テーマパークを成功させる条件は、「商圏規模の大きさ」、「アクセスの良さ」、「雨の日が少ない」、「イベント力の高さ」などです。ハウステンボスの立地を考えると、佐世保の商圏は首都圏の20分の1、福岡や長崎空港からはアクセスに時間がかかるなど悪条件が重なっており、最初は断っていました。しかし朝長則男・佐世保市長から熱心に3度も再建を頼まれ、観光業の振興、地域の活性化の一助になればという思いで、2010年2月に受諾を正式発表しました。

オンリーワンのイベントで集客

―就任後1年で営業黒字に転換し、2014年9月期には5期連続で増収増益を見込むなど、業績好調が続いています。復活への手応えを感じたのは、いつ頃ですか。

2010年5月ぐらいまでには、再建への手応えを感じていました。利益を出すために最初に手掛けたのは、コスト削減です。売り上げの向上は原価が必要になるので、そのまま利益になるわけではありませんが、コストの削減は利益に直結します。

まず、就任前に地元の行政、財界、金融機関の全面支援を取り付け、実質借金ゼロで始められるようにしました。さらに、ハウステンボスはディズニーリゾートの1.6倍もの広さがあり、過剰な経費がかかるので、敷地の3分の1をフリーゾーンとしました。テナントは残り3分の2の有料ゾーンに集約し、賑わい感を生み出しました。そうしてどんどん無駄なものを削り、集客の向上にも力を注ぎました。

―再建に乗り出す直前は141万人だった来客数は、2014年度には297万人を見込むまでに回復しました。成功したイベントとして、どのようなものがありますか。

一例として「100万本のバラ祭」があります。以前からバラ園はありましたが、それが集客につながっていませんでした。そこで「100万本のバラ」というキャッチコピーを打ち出し、見せ方を変えたんです。これは世界で3本の指に入る美しいバラ園だと自負していますし、もちろん国内では他にありません。つまりナンバーワン、オンリーワンをつくり上げたのです。

また、12月、1月、2月の冬季は来客数が少なかったので、東洋一のイルミネーションとプロジェクションマッピングを始めました。園内を明るくて暖かいイメージへと変えていくことで、12月の来場者数は夏季の月間を超えるまでになりました。

1000品種100万本のバラを世界中からコレクション。アジア最大級となる「バラの街」を実現

「観光ビジネス都市」を創造へ

―佐世保市からの再生支援交付金を5年前倒しで返上し、累積損失も一掃して今期から新4ヵ年計画がスタートしています。

ハウステンボスが目指しているのは、単なる観光目的のテーマパークではありません。4ヵ年計画の目標は、アジアでも有数の「観光ビジネス都市」になることです。そして、ここから新しいビジネスをどんどん生み出していきます。

宝塚歌劇団の元団員ら約30人で発足した「ハウステンボス歌劇団」。2015年には海外遠征もスタートする

ハウステンボスの施工済みの面積は152万㎡と、モナコ公国とほぼ同じ広さです。広大な敷地はコスト面では不利でしたが、裏を返せば、衣食住からエンターテイメントの機能までを備えた、巨大な実験場として大きな可能性を秘めています。

私有地なので公道の規制に縛られず、全自動カーなど新しい乗り物の実験がしやすい。ロボットが都市の中でどう機能するのか、使いながら実験もできる。実際、ソフトクリームづくりを行うアーム型ロボットは使いながら改良を重ね、サービス力を高めることに成功しました。今後も、さまざま場面で活用できるロボットを開発していきます。研究所や大学からハウステンボスを活用したいという問い合わせがあり、いずれ世界から引き合いがくると思います。

―いわば新しい「特区」を自前でつくったようなものですね。

技術だけでなく、イベントの知見もさまざまに活用できます。2013年にはハウステンボスで培ったノウハウを結集し、大阪城天守閣に立体映像を投影して、西の丸庭園一帯をイルミネーションで彩るイベントで60万人を集めました。

2014年に赤字に苦しむ愛知県の複合型リゾート施設「ラグーナ蒲郡」の再建に着手し、2015年には東京でも新たなプロジェクトを計画しています。また、ハウステンボス歌劇団の海外遠征もスタートします。長崎県、九州だけではマーケットは限られますから、より大きなマーケットを目指してビジネスを展開していきます。

ゲームの過去から未来までを体感できる「ゲームの王国」

元気になれる「健康の王国」

―園内では、今後、どのような「実験」を展開していくのですか。

2014年末には1.2mのトランスフォーマーが登場します。そして2015年7月には、最先端の環境技術を備えた低価格の「スマートホテル」が完成します。受付や掃除をロボットが担当し、カードキーは不要というこれまでにないコンセプトの世界初のホテルです。

新しいものをヒットさせると、どうしても真似されがちです。バラ園やイルミネーションは広大な敷地を活かした仕掛けですが、こうした他社が真似しづらい、新しい取り組みに挑戦し続けます。

今考えているのは「ジェットコースターを超えるジェットコースター」、つまりバーチャルリアリティを利用した子供やシニアでも安全に乗れるようなジェットコースターです。そうした構想を話すと、「それは無理です」と言う人もいます。でもイメージできるものは、たいてい実現できるんですよ。私の頭の中には完成イメージがありますが、そうすると、どのような技術を持つ企業とコラボすればいいのかなど、実現に向けた道筋が見えて、努力の方向性もわかるのです。

―他に、どのような構想がありますか。

2015年5月からは「健康の王国」を始める予定です。ハウステンボスに来れば健康になれるというプロジェクトです。「病は気から」というように、花や光のアトラクション、音楽やショーを楽しむことで、気持ちから健康になることができます。

「医食同源」の言葉どおり、健康のためには食事も大事です。園内に野菜工場をつくり、その近くに設立する健康レストランで新鮮な野菜を使った食事を提供します。

園内では、ソフトクリーム製造ロボット「やすかわくん」も活躍

さらには日本一のサプリメントコーナーを設置しようと思っています。免疫検査をしてカウンセリングも行い、厳選した良質なサプリメントをご案内する。温泉も建設中ですし、ハウステンボスに滞在することで元気になり、未病やアンチエイジングにもつながる。こうした試みによって、アジアからの来場者もたくさん呼び込めます。

道路渋滞などを考えると、ハウステンボスのキャパシティは、300万人~400万人程度だと思います。今後、さらに拡大するためには、交通アクセスや駐車場、宿泊施設などインフラの問題を解決する必要があります。将来的には、無人島などの不動産用地を購入し、拡張する計画もありますが、それも交通インフラなどと合わせて、バランスよく開発を進めていく必要があります。

次世代型ヘッドマウントディスプレイ「オキュラス・リフト」を使った仮想世界での乗馬レースなど、未来のゲームを楽しめる

次代のリーダー育成に力を注ぐ

―リーダー人材の育成のために、ハウステンボス内に全寮制の私塾を設立することを発表しています。

企業はやはり人が大切ですから、1年間をかけてプロの経営者を育てる塾をつくります。リーダーに必要な知識や素養を学ぶ場にし、私自身も直接指導に携わります。

2015年の1年間はカリキュラムなど運営のあり方を磨くテスト期間としてスタートし、2年目、3年目から本格的に始動していきます。まずはHISグループ内の社員から選抜して教育を行い、ゆくゆくは一般公募することを考えています。

今は、まだ私が経営をリードすることが必要ですが、私自身がいつまでも経営できるわけではありません。将来的には私がいなくなったほうが絶対に良く、若手が経営を担う体制にする必要があります。

―カジノを含めたIR(統合型リゾート)については、どのように考えていますか。

国の政策動向に左右される問題ではありますが、九州につくるのであれば、長崎県は最も有力な候補地でしょう。

カジノは、マカオ、シンガポール、フィリピンなど各国にあります。世界的な競争がある中で、中途半端なものをつくっても失敗します。カジノだけではファミリー層は呼べませんし、そこにIRとして、どのようなエンターテイメントを組み合わせるかが鍵になります。

―ハウステンボスを軸とした県全体の観光振興について、どう考えていますか。

長崎県には、すばらしい観光資源がたくさんありますが、それが全国に浸透しているとは言えません。個別にPRをがんばっている地域もありますが、予算に限度がある中で、大規模なことはできていません。自分のところですべてをやろうとすると、どうしても力が分散してしまいます。

ハウステンボスは、全国的な知名度があります。県内の観光地とハウステンボスがコラボすれば、全国やアジアに発信することができ、集客にも貢献できます。それが県全体の盛り上がりにもつながっていくと思います。

2015年には、再生可能エネルギーの活用によってランニングコストを抑えた「スマートホテル」が完成。ロボットによるサービスも積極的に導入する

澤田秀雄(さわだ ひでお)
ハウステンボス代表取締役社長
エイチ・アイ・エス代表取締役会長

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。


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