地方創生大臣補佐官・伊藤達也議員に聞く 政府の地方創生戦略

金融担当大臣や内閣府副大臣を歴任し、現在は内閣府大臣補佐官の職にある自民党の伊藤達也衆議院議員。地方創生の推進に対し、地方に活力を取り戻すための課題と、その具体策を語る。

最初に伊藤議員は、現今の取り組みと日本の状況をこう概括した。

「政府が推進している『地方創生』は、人口減少社会の克服、地方経済の再生を骨子とするものです。現在、地方は人口減少と経済衰退に見舞われ、東京を筆頭とした大都市圏もまた、人口集中と低出生率の問題に直面しています。これらは同じ根を持つ問題であり、同時に取り組むべき課題です。東京と地方のいずれもがWIN-WINとなる対策が求められています」

伊藤達也衆議院議員、内閣府大臣補佐官

「東京には産業と人が集中し、地方からはそれらが流出している。これが現在の状況です。政府では、まずは東京から地方へ人が還流できる道筋を用意しなければならないと考えています。人が地方で安心して働き、暮らし、子育てをする。そのことが地方を活気付けます。地方が元気であれば、東京からのUターンや移住、次世代の定着が促進され、さらに地方の活力が増します。そうした好循環の契機を創り出すことが喫緊の課題です。具体的には、まずは地方に仕事を、ということになります。ただし、従来のやり方からは大きく転換を図っています」

伊藤達也氏提供

5つの反省と打開策

差し迫った状況を前に、政府内ではこれまでの地方行政が厳しく見直されたという。

「大きく分けて、5つの反省点が洗い出されました。【縦・横・バラマキ・浅・短】と呼んでいます。縦割り構造のもと、地方が利用しづらい押し付け支援になっていたことを【縦】、地方の個別事情への配慮が充分でなく、一律に近い施策も多かったことを【横】、費用対効果の検討が不充分であったことを【バラマキ】、地方へのインパクトが小さく『刺さらない』施策が少なからず見られたことを【浅】、持続力のない一過性の施策に終わったことを【短】と、それぞれ自戒を込めて呼んでいます。これらの根には、補助金交付などの政策自体が目的化してしまった、いわば政府中心主義も多分にあっただろうと、反省の声が上がっています」

石破茂大臣は10月22日に記者会見で、5原則を査定基準としたいと考えを示した。「今後の施策は、過去を克服するものでなければなりません。(1)自立性(2)将来性(3)地域性(4)直接性(5)結果重視の5つです。地方が自らの思いと力で活性化し、希望を持って大きな目標に挑み、その土地の特色を守りながら発展するために、政府が地方と直接・緊密に連携して、確実な成果が望める支援をしよう、ということです」

地方との呼応で活性化を果たす

政府の支援に地方が応えてこそ、真に活気ある未来が展望できる。政府では現在、地方の課題を吸い上げるべく、積極的に働きかけている。

「各地方自治体には、来年度の総合戦略を提出して頂くようお願いしています。その取り組みの中で課題や要望を聞き取り、必要に応じて専門家からの助言、さらに直接の人財派遣なども行います。停滞の原因を具体的に洗い出し、解決のために実効性のある支援を行います。政府では人口減少と地方衰退を最重要課題としていますので、問題を緻密に把握した上で、解決の確かな道筋となる施策を提供する考えです」

「課題を客観的な形で明らかにする手段としては、ビッグデータ分析を採用しました(“7つのマップ”開発メニュー)。これは我々にも新しい試みです。例えば、ある地方の中核産業だと考えられていたものが、経済規模としては意外に小さなものであったというようなことが見えてくるかも知れません。あるいは、観光名所を持つ土地での旅行者の行動を分析することで、より質の高いサービスや周遊ルート構築のヒントが掴める可能性もあります。ビッグデータ分析の目的は、地方の課題と活性化のカギを、誰にも明らかな形で『見える化』することです。中央からのトップダウン式施策だけでなく、自治体担当者の意見に基づく、いわば主観的施策からの脱却も意図した取り組みですが、客観的なデータが様々な思いがけない事実を浮き彫りにしてくれるのではないかと、大いに期待を掛けています」

新しい発想に基づく施策の青写真を、伊藤議員はさらに語る。

「政府としては、データ分析や課題抽出の手法提供だけでなく、新たな雇用や価値創出のための支援も用意する必要があります。それも個別の提供ではなく、地方がワンストップで利用できるものでなければならない。政府側の根深い縦割り構造も大きく改め、これまでのように、各省庁が同じような支援をばらばらに実施しているという事態は避けなければなりません。地方から見て政府の窓口が明確であり、支援はいちど申請すれば済む。課題の抽出から解決策の提案、実施のバックアップまでがパッケージとして受けられる。そのような、これまで決して充分とは言えなかった、自治体側の利便性を追求したサービスの構築に取り組んでいます」

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