2014年12月号

地方創生 2つの輪

観光地の個性を伸ばす 「趣味の街」でリピーターを形成

月刊事業構想 編集部

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観光地としての「個性」をいかに打ち出すかは、多くの地域にとって悩みの種。そこで大きな可能性を持っているのが、「趣味の街」という切り口だ。文化や芸術、スポーツなどを資源に、多くのファンを呼びこむ地域が存在する。

松山市では「俳句甲子園」が毎年開かれ、全国からファンが訪れる

観光地は時として「共食い」を起こす。例えば、ゆるキャラやB級グルメ。そもそものスタートは確かにイノベーティブだったが、やがて全国で類似品が乱立し、観光客の誘致で競い合うようになった。このような観光では、地域が持続的に成長することは難しい。

その地域にしかない特色を出し、共食いを起こさない手段として、「趣味の街」は有効だろう。作家やスポーツなどをコンセプトにしたまちづくりは、ファンを呼び込み、リピーターを増やすことができる。

松山市:俳句の街

気候風土に恵まれ古くから多くの文人墨客が訪れ、正岡子規や高浜虚子などの俳人を輩出してきた愛媛県松山市。1980年代から「俳都」として観光地化に取り組み、市内の文学遺跡や句碑を巡るツアーなどを企画してきた。毎年8月には「俳句甲子園」が開催され、全国から50以上の参加校と、俳句愛好者たちが訪れている。

主要観光地やホテル、路面電車など市内90カ所以上には「俳句ポスト」を設置。地元住民や観光客から投句を募って、優秀な作品を表彰する仕組みだ。最近ではインターネットの俳句投稿サイトもオープンしたほか、2012年には海外第一号のポストがブリュッセルに設置され、俳句による文化交流や海外観光客誘致につなげる考えだ。

松山市の各地に設置されている「俳句ポスト」 Photo by Tzuhsun Hsu

深谷市:ガーデニングの街

ガーデニングの街として発展した深谷市。(深谷オープンガーデン花仲間HPより)

埼玉県深谷市は、個人住宅の庭が観光地化した、全国でも珍しい事例だ。

もともとは、地域のガーデニング愛好家たちが始めた「オープンガーデン」という取り組みが発端。これは個人庭園を開放してガーデナー同士が交流するイギリス発祥の取り組みで、深谷市では2004年に愛好家組織「花仲間」が結成された。現在では会員宅の庭、約80軒が年に一度公開される。

花で街が溢れる「ガーデンシティ構想」を推進する深谷市も、オープンガーデンとあわせて「ふかや花フェスタ」を開催し、観光マップを制作するなど市民の活動を支援。大手旅行会社がバスツアーを組んだこともあり、全国から愛好家が集まってくる。公共施設や学校への庭園づくりも推進し、さらに市の地場産業であるレンガ、瓦、土管などをガーデニングに活用している。

個人住宅の庭さえも観光資源になり得る(深谷オープンガーデン花仲間HPより)

さいたま市:自転車の街

さいたま市はツール・ド・フランスイベントの誘致で、自転車のまちづくりを加速

同じく埼玉県のさいたま市は、1人当たりの自転車保有台数が都道府県別で全国1位という隠れた特徴を活かし、自転車の街おこしを推進する。ツール・ド・フランスの名を冠にした世界初のサイクルイベントを誘致し、昨年は20万人の観客を集めた。

「単なるイベント誘致ではなく、イベントをシンボルに総合的な街づくりを進めることが大切」(清水勇人市長)と、200kmの自転車レーン整備、自転車産業の誘致などにも取り組む。市の取り組みは、ベッドタウンでもアイデアと工夫次第で交流人口を呼び込めることを示した、好例と言える。

このほかにも、全国には数々の趣味の街が存在する。

東大阪市は地元出身の作家、司馬遼太郎氏を核にした観光誘客を推進。2001年に司馬遼太郎記念館がオープンし、全国からファンが来訪するようになったことがきっかけだ。司馬氏の愛した菜の花で、駅から記念館に向かう道を彩ったり、記念館と教育講座を共催したりしている。司馬氏の行きつけの喫茶店が大繁盛するなど、地域経済の活性化にも寄与している。

三重県伊賀市の「忍者の街」のように、国内のみならず、海外からのファン獲得にも大きな成果を出す地域もある。

このように「趣味の街」は地域の個性を高める手段として、非常に有効と言える。

東大阪市の司馬遼太郎記念館。さまざまな年齢層のファンが訪れている Photo by Forgemind ArchiMedia

 

趣味の街がつなぐ「観光」と「仕事」

文芸、嗜好品、スポーツ、芸術などの「趣味」には無限の選択肢がある。観光地同士で共食いを起こす心配は少なく、むしろ、各地の趣味の街が連携し、お互いを高めあうことが可能だ。

題材となる趣味は、地域資源から掘り起こすこともできるし、外部から人材を集めて新しく創造することもできる。この取り組みは観光創造だけでなく、仕事創造にもつながる。その地域で暮らしたいというファンも出てくるはずだ。

例えば「武道家の街」を想像してみてほしい。彼らは半日を武道の鍛錬に費やし、半日は農業や介護など地域に求められる仕事で働く。優れた身体能力を活かし、警備会社や引越会社で働く、あるいは起業することもできるかもしれない。当然、武道イベントの開催や大会誘致などで、観光地化も進められる。

特に2020年の東京五輪は大チャンスだ。国内だけでなく、海外のファンも「行きたい」「住みたい」と思う趣味の街を企画できれば、今までにないグローバルな地方都市が誕生し、必ず日本は活性化する。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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