農村観光で伸びる地域 共通点は「女性イノベーター」

農村観光で成功を収める地域には、ある共通点がある。それは女性の活躍だ。女性農家が立ち上げたコミュニティビジネスが、地域の新しい魅力となり、都市生活者を呼び込んでいる。

注目集める「農都共生」

これまでの日本の政策では、農村と都市は異なるものとして捉えられ、別々に活性化策がとられてきた。しかし今、農村と都市を一体として捉え、その交流と共生に取り組む「農都共生」というアイデアが注目されている。

「農村はこれまで、食糧生産を担う拠点として位置づけられてきましたが、そこには自然や癒やし、教育、文化、伝統、人との交流といった多面的な機能が存在します。一方で、都市生活者の生活満足度はこの30年間低下し続けています。農村と都市の交流・連携を促し、人材・情報・経済を循環させ、新しいライフスタイルをつくる。これが農村と都市の共生、農都共生の考え方です(図1)」と、慶應義塾大学大学院 SDM研究科 特任教授の林美香子氏は説明する。

林美香子 慶應義塾大学大学院 SDM研究科 特任教授・北海道大学大学院農学院客員教授

この実現には、農村の多面的機能を活かしたコミュニティビジネスが重要なファクターになる。そのビジネス領域は、農作物の直販や加工はもちろん、農家レストラン、農家宿泊、食農教育など多岐にわたる。

現在、農村を舞台にしたコミュニティビジネスが、日本各地で立ち上がっている。注目すべきは、その担い手の多くが、農家の女性であることだ。

農家の女性がビジネスを牽引

例えば、北海道石狩エリアの農業女性が始めたケータリング「美利香(ぴりか)」。旬の農産物を活かした料理や、北海道の伝統的な家庭料理を、農家のお母さんたちのグループで調理してホテルやイベント会場へ出前配達するサービスを展開している。

全国初の農協版コンビニであるJA秋田やまもとの「JAンビニ(ジャンビニ)ann・an」は、店舗運営スタッフの全員が組合の女性部員だ。おにぎりや弁当、惣菜はすべて、地元食材を使って店内で調理したもので、高齢者への宅配事業も行っている。

女性の起業事例も多い。「いただきますカンパニー」(北海道帯広市)は「畑ガイド」というビジネスを展開。地元シニアや移住者がガイドとなり、通常は立入禁止の畑に観光客を案内して、食や農業の魅力を伝える。代表の井口芙美子氏は、野菜嫌いだった子どもが農業体験で劇的に変わったことから、畑のチカラに気づき、事業を考案したという。

農村から多くの女性イノベーターが生まれる理由は何だろうか。

「コミュニティビジネスは身の丈に合わせて小さく始めることが多いので、農家の男性の興味は薄いようです。でも、農家のお母さんたちにとっては月数万円の現金収入でも貴重で、『できることをやってみよう』とビジネスを始めます。それが少しずつ成長し、年収が100万円を超えると旦那さんも目の色を変え、事業を応援し始める。そんな例が非常に多いですね」と林氏。

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