2014年12月号

地方創生 2つの輪

地域を変える「魅力の伝え方」 着地型観光の課題を解決

山野智久(カタリズム代表取締役)

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「着地型観光」が注目を集めているものの、成果をあげている地域は一部にとどまる。日本最大のレジャー・体験の予約サイトを運営するカタリズムは、自治体とも連携し、着地型観光の課題を解決し、地域の魅力を伝えるインターネット上の「窓口」を提供する。

山野智久(やまの ともひさ)カタリズム代表取締役

各地が観光振興に力を入れる中で、近年、注目を集めているのが「着地型観光」だ。旅行者を受け入れる地域(着地)側が、自分たちで地域資源を活かした旅行商品や体験プログラム、イベントを企画・運営する観光の形である。

しかし、それを実践できるノウハウが、地域の側に乏しいのが現状だ。全国で興味深い企画が行われているにもかかわらず、その魅力が伝わっていない。

「着地型観光」は認知度が不足

日本最大のアクティビティ予約サイト「ASOViEW!(あそびゅー!)」を運営するカタリズム、山野智久代表は、観光産業の現状をこう語る。

「着地型観光の課題は、ユーザーの認知度が低いことです。その理由の一つは、インターネットの活用が進んでいないこと。まずは知ってもらうために、インターネット上に魅力的な窓口をつくることが重要です」

山野代表は、旅行の行程を5つの要素に分解して考えている。「移動」、「宿泊」、「レジャー」、「食事」、「土産」だ。すでに移動や宿泊は、インターネットで予約することが簡単で、たくさんの人に利用されている。しかしレジャーの部分、たとえば体験教室やオプショナルツアーは、現地の小規模な事業者が運営していることも多く、インターネットでの予約や事前の決済には対応していないことが多い。

「あそびゅー!」は、このレジャーの部分に焦点を当て、利便性を提供するサービスなのだ。

地域資源を再編集して発信

インターネットへの対応が必要といっても、地方には、「SEO(検索エンジンの最適化)って何?」、「スマートフォン対応って?」、「人出不足で対応が行き届かない...」といった課題を抱える事業者が、たくさん存在する。

カタリズムは自治体との協業を進めており、地域資源の発掘や情報発信を支援している。バラバラに動いていた地域の事業者に対して、統一感のあるコンセプトで情報提供を行うウェブサイトを提供し、インターネットの予約対応やサイト運営のコンサルを行う。現時点で1000社以上の事業者をコンサルティングしており、自治体に関しては、すでに静岡県下田市や徳島県三好市などで実績をあげている。

カタリズムの強みは、ユーザー目線であること。地元に住む人にとっては当たり前の自然や文化が、外の人から見れば新鮮であることは多い。地域の側は、あれもこれも盛り込みたいと考えがちだが、コンセプトにそぐわないと判断すれば、ときにカタリズムから載せないことを提案することもある。

カタリズムが提供している地域支援のパッケージは、地元事業者への説明会や講習会の開催、ウェブサイトの整備、事業者のフォローを含めても、大きな投資が必要になるわけではない。すでに存在する地域資源を再編集し、見せ方・届け方を変えていくことが中心だからだ。

「地域には、もともと観光振興のための予算があります。その予算の一部を置き換えるだけでも、新しいことに挑戦できます」

地方に広がる新たな商機

現在、外国人観光客への情報発信が急務になっており、各地で英語サイトの整備などが進められている。しかし、そのスピードは遅く、自治体が危機意識を持っていても、サービスを提供している事業者側は目の前のことに一生懸命で、将来的な展望を持っていなかったりする。

「地域として総合的にプロモーションを進めていくには、各プレーヤーの意識のかい離を埋め、モチベーションを高く保つことが大切です」

日本人、外国人を問わず、今、人々が観光に求めているのは、つくられた施設や決まりきったイベントではなく、その土地自体が持つ風土や環境、ありのままの素材の良さだ。

「地方創生の施策が、新しい観光施設などのハード面ではなく、ソフト面、コンテンツを生み出していくところにつながれば、日本全体のビジネスは変わってくると思います」

若者を中心に余暇の過ごし方は大きく変わっている。ショッピングに魅力を感じる人は減り、自分だけの体験や交流を求めるニーズが高まっている。そうした変化を鋭くキャッチし、ニーズに合わせた観光を企画していくことが、今後の成長へのカギとなる。

従来、地域の活性化に取り組んできたのは、まちづくり団体など企業とは別の組織が中心だった。山野代表はリクルート出身で、新規事業の立ち上げなどを経験してきた。そうしたビジネスの第一線でキャリアを積んできた人材が地域に入り、活性化を牽引する。それは、地域のビジネスリテラシーの底上げにもつながっていく。

「観光振興のアイデアをいかにビジネスとして実行していくか。我々がハブとなって、その手助けをしていきたいと考えています」

コンサルや外資系金融などトップクラスのキャリアを持つ人材が、昨今、社会起業やNPOに携わり、新たな領域を開拓している。今、地方には、ビジネスとも社会貢献とも、どちらとも言えないような未踏の領域があり、そこには活躍の機会が広がっている。

 

カタリズムは自治体とも協業しており、静岡県下田市や徳島県三好市の観光情報を発信するウェブサイトを構築。下田市は「どこよりも近い南国リゾート」、三好市は「秘境を探検!」などの言葉で地域の魅力を伝えている

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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