2014年9月号

地域未来構想 秋田県

秋田県・小坂町に学ぶ地域再生 「そこにある資源」に光を当てる

細越満(小坂町長)

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人口減や高齢化が進む地方都市で、いかに特色あるまちづくりを進めるか。秋田県小坂町は、産業遺産を活用した観光地づくりや、エコタウン形成に成果を出し、地域づくりの好事例として注目を集めている。

菜種で農業振興、特産品育成などを図る「菜の花プロジェクト」

秋田県の北東、十和田湖に接する人口5,700人の小坂町は、明治時代から鉱山の町として発展。最盛期の大正時代には2万人以上が出入りし、県下第2位の都市として栄えた。しかし、鉱山の閉鎖に伴い人口は減少、高齢化も進む。

そこで小坂町は、鉱山の町ならではの産業遺産群と、地域資源を活かしたエコな街づくりに活路を見出し、地域再生に成果を出している。

町全体を博物館に
エコ・ミュージアム構想

細越 満 小坂町長

小坂町内には鉱山で栄えた時代に建てられた施設が点在している。いずれも実際に使われていたもので、保存状態も良好だ。「町はそれらの産業遺産を小坂鉱山の現法人であるDOWAホールディングスから譲り受け、市街地に集合させるよう整備を進めてきました。

国の重要文化財に指定されている日本最古と言われる芝居小屋『康楽館』の隣に、明治時代に建てられた小坂鉱山事務所を移築し、『明治百年通り』と名付けたこの通りを中心に観光客に足を運んで頂こうという計画です」と、小坂町の細越満町長は説明する。

産業遺産が並ぶレトロな街並みが人気の「明治百年通り」

1905年に建てられたルネッサンス様式建築「小坂鉱山事務所」

今年の6月には、新たに「小坂鉄道レールパーク」をオープンした。これも鉱山の物資輸送のために敷設され、2009年に廃線になるまで実際に使われていた路線だ。使用していた車両などを無償で譲り受け、本物のディーゼル車両の運転、線路の上を走るレールバイクなどを体験できる施設にした。

「これまで行ってきた、町全体を博物館のようにするエコ・ミュージアム構想のひとつで、2012年から16年までの計画を県からの支援を受けながら進めています」

こうした取り組みの成果で、明治百年通りは国の「美しいまちなみ大賞」を東北で初めて受賞した。

「一方で、宿泊、食事、土産品など、観光客を迎え入れる体制がまだ足りないというのが実感です。観光は、地域の人を巻き込んでいかないと成功は難しいものです。町民の観光産業への関心を高め、事業参入を支援しつつ、町としても明治百年通りをより本物志向の観光地として整備していきます」

(左)日本最古の芝居小屋「康楽館」(右)小坂鉄道レールパークPhoto by Hairworm

資源循環と農業振興を両輪で菜の花プロジェクト

もう一つの小坂町の特徴がエコタウンの形成。小坂町では立地する小坂製錬が、都市鉱山資源から希少金属を取り出すリサイクル事業で成長、周辺地域にリサイクル産業が集積しつつある。これに足並みを合わせつつ、町は2005年に資源循環型社会の構築を目指した「小坂町バイオマスタウン構想」を公表した。

国内には数多くのバイオマスタウン計画があるが、小坂町の特徴は、資源リサイクルと農業振興を組み合わせた取り組みであることだろう。

代表例が「菜の花プロジェクト」だ。「これは、減反など作付けしていない農地に菜の花の作付けを推奨するものです。農家が育てた菜種は町で購入し、菜種油の精製、そして町ブランド品として販売します。また、絞ったあとの菜種は肥料にし、さらに使用済みの油を回収・精製してバイオディーゼル燃料とし、耕耘機などに使用します」。農家の所得向上、菜の花による美しい景観づくり、町特産品の育成、資源循環の“一石四鳥”を目指す意欲的な取組みだ。

町産菜種から作られた食用油「菜々の油」

「作付け面積は年々拡大しています。一方で菜種油は、品質は良いですが、市販の食用油と比べるとどうしても割高になります。いかにブランドを高め、販売を増やすかが今後の課題です。また、菜の花は連作障害を起こしやすく、3年連続で植えられません。そこで、代わりにソバやヒマワリの作付けも農家に推奨しています。隣の鹿角市でソバを作っている事業者が多いため、買い取ってもらう仕組みです」

また、市街地の町民の家庭から出る生ゴミを回収して、町内で養豚を行うポークランドで肥料にしてもらっている。これは町の方から処理をお願いしているが、ポークランドも無料で町民に肥料を分けているという。このように、バイオマスタウン構想でも産業遺産の活用でも、小坂町は大手事業者と良好な関係を築き、協力して地域活性化に取り組んでいる。

現在の生ゴミリサイクル率は55%で、70-80%の回収率を目標にしている。「リサイクルは、ひとつの町だけで完結するものではありません。小坂町は隣の鹿角市で広域行政を行っていますので、今後協同していけるよう働きかけていきたいです」と細越町長は力を込める。

目指すは世界遺産

小坂町では高齢化のスピードは想像以上に早く進む。観光についても、以前は北海道の学生が修学旅行で来ていたものが、東日本大震災の影響などもあり、東京方面へと旅行先が変わってしまったという。まちづくりでのさらなる創意工夫と挑戦が、小坂町には求められている。

「町内には小坂製錬のリサイクル事業に加え、首都圏から出たゴミの焼却灰を埋め立てる最終処分場もありますので、例えばゴミを出した自治体の方が、出したゴミがどういうルートで処理されていくのか、さらにエコタウンの取り組みも含め、見学できるような体制づくりを考えています」と細越町長は言う。

「今年、産業遺産であるレールパークがオープンしましたが、最終的には世界遺産に指定された富岡製糸場のようにしたいという思いがあります。働く場も含め、暮らす人も観光に来る人も幸せになれるまちづくりを目指し進めていきます」

細越 満(ほそごえ・みつる)
小坂町長

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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