2014年7月号

地域未来構想 青森県

地域密着型商社の存在感

吉田悦子(ファーストインターナショナル 取締役ゼネラルマネージャー)

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青森県・八戸市には全国でも珍しい、地域密着型の商社がある。地元有志が集まり立ち上げた商社は、県産品の海外展開に不可欠な存在になっている。企業がこぞって海外へと目を向け始めた今、地域貿易商社の役割、そして可能性とは。

リンゴは年間2万トンが海外へ輸出され、贈答品として重宝される

リンゴは輸出果物の代表であり、年間約2万トンが海外14カ国・地域へと輸出されている。特に台湾での需要が大きく、赤く美しいリンゴは贈答品として重宝されているという。輸出が好調な理由は、農家の努力や行政の支援も大きいが、見逃せないのは地域密着型商社の存在だ。

青森県内最大規模の八戸港を持つ八戸市を拠点に事業を展開するファーストインターナショナル。1994年9月に八戸商工会議所の有志が中心となり、35社の出資によって設立された。輸出・輸入・国内取引を主な業務として、輸出は県の特産品であるリンゴ、長芋、水産物など、輸入は主に北米からの木材や建材のほか青果物などを取り扱っている。

インドネシアのスーパーに陳列されている青森産リンゴ

八戸市は1993年にアメリカワシントン州フェデラルウェイ市と姉妹都市提携書を交わしており、同市と物流面での交流も行おうと、貿易に対する意欲が市全体に高まっていったことが設立の背景としてあげられる。また同じタイミングで八戸港から東南アジアへの定期航路が開通されたこと、円高基調で輸入市場が活気づいていたことなども後押しとなった。

初取引は設立1年後

とはいえ、ゼロから始まったファーストインターナショナルの船出は順風満帆ではなかった。吉田悦子取締役ゼネラルマネージャーは、設立当時を次のように振り返る。

地元客に商品のアピールをする吉田悦子取締役

「貿易はノウハウがないと行えませんから、商工会議所が声掛けをして三菱商事の方に専務として入ってもらいました。しかしノウハウを手に入れたとしても、当社を使ってみようと手を挙げてくれる企業はしばらくはありませんでした。輸出入を行っている地元企業はすでに東京などの大きな商社とつながっていましたので、そこに我々が分け入って貿易会社として認知されるようになるには時間がかかりましたね」

地道な営業が実り、最初の取引が成立したのは会社設立約1年後だった。商談相手は地元の青果物卸会社。加工用の玉ねぎを大量に扱っており、輸入物を探しているところだという。地元の貿易会社で安心感があると、同社との取引を申し入れてくれたのだ。

円高基調にも乗り、そこから輸入取引の話が増えはじめる。なかでも、狙ったのはリンゴだ。青森の特産品であるリンゴの輸出をしたい、その思いは設立当初からの全社員の願いだった。しかし、青森の中でリンゴの産地といえばブランドイメージのある津軽なので、南部八戸にある同社は生産者と接点がなく、やはりなかなか入り込むのが難しかったという。

「津軽はリンゴ生産の歴史が長くある分、付き合いのある大きな商社がすでにたくさんありました。入り込むために市や県が行う商談会には必ず顔を出し、生産者の方々とお話させていただくうち徐々に関係性ができていきました」

輸出の足がかりを掴むきっかけとなったのは2002年、台湾のWTO加盟だ。台湾の青森リンゴ輸入枠2000トンという制限が撤廃され、県の輸出高が飛躍的に増加した。ここにチャンスがあるのではと、八戸市が企画する台湾での商談会などに伴って現地へ行き、リンゴの取り扱いをスタート。台湾の膨れ上がるリンゴ輸入量に伴い、輸出数量も年々増加することとなった。

「この勢いに乗り長芋も、といきたいところでしたが台湾では北海道産がすでに定着しており、色や形が異なる青森産は受け入れてもらえませんでした。そこに台湾のある青果組合のトップが、自分の息子がアメリカで青果を扱っているから紹介する、と言ってくださったのです。この企業との取引はピーク時、月にコンテナ2本にも成長しました」

ハワイ・北米にも展開
地域に寄り添う商社に

20年間で実績を積み上げてきた同社。現在は海外でのイベント開催などを積極的に仕掛け、攻めの販路開拓を進めている。

昨年10月にはホノルルのスーパーで青森フェアが開催された

昨年はハワイで青森フェアを主催した。その前年にホノルルのスーパーマーケットを訪れた同社の社員が、沖縄や北海道のフェアが盛況との情報を聞き、青森フェアもぜひホノルルでやってみたいと県や市、地元生産者たち10社以上へ声を掛け実現への道筋を作ったのだ。

「現地バイヤーを青森へ招聘し、青森の特産物で作られた加工品を吟味してもらったところ非常に気に入ってもらえ、去年の10月にフェアを開催することができました。初めてのことで心配もありましたが、蓋を開ければ大盛況。フェアは売れ残りを持ち帰るのが通例なのですが、ホノルルでは残ったものは買い取ってくれて、売れ行きのよかった商材についてはレギュラー品として棚に置かせてもらえることになりました。これには私たちはもちろん、出展してくれた生産者の人たちもとても喜んでくれました」

盛況ぶりが功を奏し、今年も10月7日からフェアが開催されることになった。ハワイのスーパーの本拠地はロスにあるため、ここを突破口として北米の日系スーパーへフェアを展開していきたい考えだ。

「青森はもちろんですが、岩手や秋田といった近県のものも扱って東北全体を盛り上げていければと思っています。地元に貿易商社があるからこそ、輸出入について気軽に相談できて心強い、そんな声をいただくことが多いです。これからも地域のために貢献できる商社になりたい、それが設立からの大きな思いです」

これからの時代、地域が海外と直接つながる機会が増えていくはず。地域の宝を掘り起こし、海外へと発信する地域密着型商社の役割はますます大きくなるだろう。

フェアでは青森ご当地グルメのメンバーや八戸市役所職員も応援に駆けつけた

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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