八戸を復活させた「B-1グランプリ創始者」
郷土料理でまちおこしを図る例は多いが、現実にはなかなか難しい。しかし、同じ志を有する日本各地の団体を糾合し、全国レベルの発信をし続けることでそれに成功した人物がいる。
想像していたのは、寂れた岸壁の上を哀しげに舞うウミネコたちの姿。そして、シャッターの下りた閑散とした灰色の街並み。
しかし、八戸の街は、そうした予想を見事に裏切ってくれた。カラフルな家並み、人や車が盛んに行き交う活気あふれる商店街。人々の何とも明るい表情と温かい人情。“疲弊し切った地方都市”というお決まりの図式は、ここには当てはまらない。
「最近、よくそう言われるようになったのですよ」と意気軒昂に語るのは、八戸せんべい汁研究所・事務局長の木村聡さん(50)だ。
彼こそは、200年以上続く郷土料理だった「せんべい汁」を、「八戸せんべい汁」として地域ブランド化することで、長期停滞する街を見事に復活させ、その過程で、「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」を企画し、日本全国に知れ渡る人気のまちおこしイベントへと発展させた立役者である。
だが、ここに至るまでの道のりは決してたやすいものではなかった。
反対の声にも負けず
地元グルメでまちおこし
1964年、八戸で生まれた木村さんは東京農業大学で学び、卒業後は水産会社に勤務。しかし、「地元のために働きたい」という想いから、1992年、八戸地域地場産業振興センターに転職する。
「東北新幹線が、2002年頃に盛岡から八戸まで延伸することが決まっていたのですが、八戸には、“それを目的に来てもらえるような土産物”が当時なかったので、『何とかしなければ!』という思いでした」
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