「啐啄同時 (そったくどうじ)」で起業を促進

古来、進取の気性に富み、農業・水産業・工業など各分野において、数々のイノベーションを実現してきた和歌山県。長年、同県の産業界のリーダーの一人として産業振興に尽力してきた中野幸生氏(74)に、県の現状と課題、展望を聞いた。

日本経団連・和歌山県経営者協会顧問(前会長)、関西ニュービジネス協議会副会長 中野幸生氏

和歌山県に迫られる
産業構造転換と意識変革

戦前・戦中の軍需産業の名残もあって、戦後、長期間にわたって、石油・鉄鋼・化学などの重厚長大産業が、和歌山県経済の主要部分を支えてきたと言われる。

1914年に合成染料の主材料「アニリン」の国産化に成功し、“日本有機化学発祥の地”と呼ばれるなど、イノベーティブな気風が漲っていたことも、そうした主要産業が集積した要因にあげられるだろう。

しかし、社会経済環境の変化は急速に進み、重厚長大産業は産業界における主役の座を明け渡し、徐々にその相対的位置を下げていった。

それと共に、和歌山県自体の日本の産業界におけるプレゼンスもじりじりと低下していったことは否めない。

また、一部観光産業にとっては“秘境感”という点でプラスに作用する交通アクセスの悪さも、県全体の産業振興という面から見れば、明らかにマイナスであり、紀伊半島を一周する高速道路すら存在しないことなどは発展の大きな足枷となっている。

さらには、かつてのイノベーティブな気風がやや後退し、志向性も「全体最適」から「部分最適」へとシフト。県内の地域ごとに異なる価値観・方向性を有すると共に、それら各地域内においては「つれもていこら」というキーワードに象徴されるように、仲間内で相互に牽制し合い、個人の突出を好まない気風すら存在しているという。産業構造・交通アクセス・意識という各側面において、和歌山県は早急な変革を迫られていると言えるだろう。

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