地域が育む「世界企業」の強み

「世界のトヨタ」を生み出すなど、数多くの成長企業が愛知から誕生している。それらの企業は、地元に目ぼしいライバルが存在しない分野で、早期に地域独占企業となり、その収益を活かして、中央でも優位を占めるという成功パターンも見られる。

愛知県の産業は製造業の比重が依然として大きく、これは70年代の日本に相当します。なお東海地域に関しては、旧国の区分による把握が有効で、「県」で十把一絡げにして統計を見ても何もわかりません。

大きく分けると尾張は一般機械、西三河を主体とする三河は輸送機械の製造が盛んな地で、全県で統計を取ると日本有数の工業地帯である三河に引きずられるかたちで、類型としては輸送機械となります。

この点では、静岡県西部(遠州)も三河と同一類型です。

ちなみに浜松に本社を置くスズキは今もオーナー経営です。発祥も戦前の織機メーカーで、この点はトヨタに酷似しています。ホンダも同じ浜松発祥で、いずれも社名は創業一族の苗字。日本の四大自動車メーカーのうち日産を除く3社がこの地域から出ていることは大変興味深いことです。

輸送機械が集積、トヨタとは何か愛知では航空宇宙産業も盛んですが、現状で米ボーイングの下請けであり、JALが国際線の中型機でボーイング切りをしてエアバスへの発注(A350)に切り替えたことから、今後はボーイングからの受注も減少が見込まれます。

近年、JR東海傘下となった鉄道車両最大手の日本車両製造も、本社は熱田区、主力工場は豊川で、輸送機械全般に関してクリティカルといえる集積が愛知県に存在します。

地域、ひいては日本、世界の自動車関連企業の生態系のトップに位置するトヨタは、本来が「BtoB」企業です。2代目の代に自動織機から自動車に進出して第2の創業で「BtoC」に差し掛かりましたが、戦時下も復興期もトラック製造の「BtoB」です。

傘下の世界的に巨大な一次サプライヤー群も、主に親会社と他の完成車メーカー相手のビジネスであり、親会社が60年代の日本のモータリゼーション以降、半身を「BtoC」に置いている状態だと理解すべきでしょう。基本が「BtoC」の大阪の家電産業や米アップルなどとは根本的に異なります。

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