富士山の世界文化遺産登録

6月にユネスコから世界文化遺産に登録された富士山。貴重な環境や文化を守りつつ、国内外からの来訪者を増やすために、県はさまざまな事業に取り組んでいる。

富士山本宮浅間大社から望む富士山。大社の近隣に世界遺産センターが整備される
(写真提供:静岡県観光協会)

富士山保全を全国運動へ

富士山の世界文化遺産登録で、県内外で観光誘致への期待が高まっている。

しかし、多すぎる観光客の流入や急速な観光開発は、かえって富士山の価値を損ねかねない。実際に海外では、登録遺産の周辺で無秩序な開発を進めて景観悪化や資産価値低下を引き起こし、世界遺産登録を抹消されるという例もある。

静岡県の担当者も、「世界遺産登録はあくまでも富士山を守り、次世代に継承するためです。集客がすべての目標ではありません」(学際担当補佐官付プロジェクトリーダーの大野剛氏)と強調する。県や富士山周辺の自治体は、環境と文化の保全に最優先で取り組みながら、交流促進や観光振興で地域の魅力を高めていく。

これまで静岡県と山梨県はそれぞれ2月23日を「富士山の日」と定める条例をつくり、富士山を守り後世に継承する県民運動に取り組んできた。この発展型として、来年2月をめどに『ふじのくにづくり国民の会』を立ち上げる。「富士山は日本全体の宝。全国の自治体や企業などに参加を呼びかけ、富士山の保全機運を高めたい」(大野氏)という。

富士山の包括的保存管理拠点としては、富士山世界遺産センター(仮称)を2016年度内に富士宮市の富士山本宮浅間大社近くに設置する。富士山の自然や歴史、文化を中心に、周辺観光などの情報提供。楽しみながら富士山の価値を理解してもらうよう、展示内容や手法を工夫するという。

今年度の県予算では、世界文化遺産登録誘客関連事業として2620万円を計上。富士山世界遺産登録記念ポイントラリー、人気アニメ「サザエさん」のオープニングでの県内観光地紹介、JR東海との連携イベントなど、幅広い活動を展開している。

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